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Frange ruinam   作者: S
記憶編
55/84

第五十五話 再生の月

次回新章です。

「……遅い。すぐに連れて帰ると言ったはずだが」


ネブラは淡々と言い放った。


「いいじゃん。ちゃんと連れて帰ってきたんだし」


モラはそう言って、隣のレナを見る。


「……どこにルイーナがいる?」


ネブラの問いに、モラが口を開きかけた――その時。


「私に話させて、モラ」


レナが静かに言った。

モラは一瞬だけ驚いたあと、小さく笑って頷く。


レナは語り始めた。自分が何者なのか。ルイーナはもういないこと。そして、自分がルイーナとして生きていたことを。


「……そうか」


話を聞き終えたネブラは、それだけを言い、玉座へと腰を下ろした。


「それだけ……何も聞かないの?」


レナは戸惑いを隠せず、問いかける。


「別に、お前の名が何であろうと関係ない。……これまで共にいたのは、お前だからな」


ネブラは視線も動かさず、淡々と答えた。


「いいこと言うじゃん!」


モラがぱっと笑う。

けれど、レナの表情は晴れなかった。


「……でも、破壊神とは戦えない」


レナはそう呟いた。


「殺せないから?」


モラが短く問う。


「……それもあるけど――最悪の場合、皆に手をかけることになる」


レナは目を伏せたまま続けた。


「……ごめん。私、役に立てそうにないや。皆の……」


その言葉を、モラが遮る。


「何言ってんの。私は、レナに助けられてきたんだよ。だから――今度は、私がレナを助ける番」


まっすぐな言葉だった。レナは少しだけ目を見開き、それから小さく息を吐く。


「……ありがと」


ほんのわずかに、笑みが戻る。


「そういえば……スパティアの様子ってどうなってるの?」


レナはネブラへと視線を向けた。


「しばらく見ていないな」


「じゃあ、今から見に行く?」


モラが軽く言う。


「……今日は休め」


ネブラはそう言い残し、静かに奥へと消えていった。


その日は――やけに月が綺麗だった。

レナはそっと窓辺に寄り、夜空を見上げた。


「レナ、寝よ」


「……うん」


レナは小さく頷き、モラの手を取った。

二人は静かに奥の部屋へと消えていった。

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