第五十五話 再生の月
次回新章です。
「……遅い。すぐに連れて帰ると言ったはずだが」
ネブラは淡々と言い放った。
「いいじゃん。ちゃんと連れて帰ってきたんだし」
モラはそう言って、隣のレナを見る。
「……どこにルイーナがいる?」
ネブラの問いに、モラが口を開きかけた――その時。
「私に話させて、モラ」
レナが静かに言った。
モラは一瞬だけ驚いたあと、小さく笑って頷く。
レナは語り始めた。自分が何者なのか。ルイーナはもういないこと。そして、自分がルイーナとして生きていたことを。
「……そうか」
話を聞き終えたネブラは、それだけを言い、玉座へと腰を下ろした。
「それだけ……何も聞かないの?」
レナは戸惑いを隠せず、問いかける。
「別に、お前の名が何であろうと関係ない。……これまで共にいたのは、お前だからな」
ネブラは視線も動かさず、淡々と答えた。
「いいこと言うじゃん!」
モラがぱっと笑う。
けれど、レナの表情は晴れなかった。
「……でも、破壊神とは戦えない」
レナはそう呟いた。
「殺せないから?」
モラが短く問う。
「……それもあるけど――最悪の場合、皆に手をかけることになる」
レナは目を伏せたまま続けた。
「……ごめん。私、役に立てそうにないや。皆の……」
その言葉を、モラが遮る。
「何言ってんの。私は、レナに助けられてきたんだよ。だから――今度は、私がレナを助ける番」
まっすぐな言葉だった。レナは少しだけ目を見開き、それから小さく息を吐く。
「……ありがと」
ほんのわずかに、笑みが戻る。
「そういえば……スパティアの様子ってどうなってるの?」
レナはネブラへと視線を向けた。
「しばらく見ていないな」
「じゃあ、今から見に行く?」
モラが軽く言う。
「……今日は休め」
ネブラはそう言い残し、静かに奥へと消えていった。
その日は――やけに月が綺麗だった。
レナはそっと窓辺に寄り、夜空を見上げた。
「レナ、寝よ」
「……うん」
レナは小さく頷き、モラの手を取った。
二人は静かに奥の部屋へと消えていった。




