第五十三話 足跡の先には
破壊神がルイーナの失踪に関わっているのなら――
その居場所に、ルイーナがいるかもしれない。
「えっと……確か、駝荊毀壊城跡だっけ」
モラは小さく呟いた。
「……どこなんだろ」
しばらく考え込む。
「図書館の本とかに、場所載ってるかな……。そういう本があるのは――あそこかな」
そう呟くと、モラは街外れの図書館へ向かった。
薄暗い館内を歩きながら、モラは神について書かれた本を探した。
「……これだ」
手に取ったのは、【神の伝承】と書かれた本だった。
そこには各地に伝わる神々の特徴や居場所、そして数々の逸話が記されている。
「あれ……二冊ある?」
同じ題名の本が、古い書架に並んでいた。違いは出版日だけだった。古い方には、より多くの神の記述が残されている。新しい方に載っていないのは――製造神、記憶神、創造神、時神などだ。
「……駝荊毀壊城跡、遠っ」
モラは思わず顔をしかめた。
「……行こう」
そう呟くと、モラは本を閉じ、駝荊毀壊城跡へ向かった。
「……迷った」
モラはぽつりと呟いた。
空は藍色に染まり、辺りは静寂に包まれている。
そのとき――遠くに、かすかな光が見えた。近づいてみると、それは淡く光る川だった。
「……綺麗」
思わず、声が漏れる。
「うわっ……!」
不意に足元がもつれ、何かに躓いた。視線を落とす。
地面に、何かが埋まっている。
「……何だろう」
恐る恐る土を掻き分けると――そこにあったのは、白骨化した手だった。
「……ひっ」
もしかして――この下に、死体が……?
「怖い……もう帰ろ……」
モラはそう呟くと、足早にその場を後にした。
モラが立ち去った後――川の淡い光が、ふっと消えた。水面が静かに揺れる。次の瞬間、水中から一人の女の精霊が姿を現した。
「女神様……貴方のことは、私が覚えていますよ」
精霊は、どこか寂しげに呟く。
「……待っていてください。私も、すぐに後を追います」
静かに目を閉じる。そして、自らの頭にそっと手を当てた。――その瞬間、水が鋭く形を変え、頭部を貫いた。
精霊の体が崩れ落ちる。赤い血が、ゆっくりと川に広がっていく。地に倒れたその顔は――どこか穏やかだった。




