第五十二話 居場所を追って
「ルイーナ!」
モラは城の外で周囲を見渡した。
「……いない」
そのまま踵を返し、モラは急いで城の中へ戻った。
「ネブラ!……ルイーナがいないの」
「何だと?」
二人はすぐに城の外へ出た。
「どこに行ったか分かるか?」
ネブラがそう問うと、モラは首を振る。
「……分からない。でも、ルイーナは……何かを背負っている気がして」
そう言うと、モラは歩き出した。
「おい、どこへ行く?」
「探しに行く。……まだ、そんなに遠くには行っていないはずだから」
「……見つけたら城へ戻ってこい」
ネブラはそう低く言った。
「分かった。すぐ連れて帰るから」
そう言い残し、モラは走り出した。
空が赤く染まっていた。
「はぁ、はぁ……いない……」
息を切らしながら、モラは呟く。どこを探しても、ルイーナの姿は見つからない。
「どこにいるんだろ……ルイーナ、大丈夫かな……」
このままでは見つからない。誰かに聞いた方が早い――そう判断し、モラは話しかけやすい神がいる霽月池へと向かった。
霽月池に辿り着くと、モラはルイーナの失踪について、そして居場所を知らないかをモイラに問いかけた。
「そう。ルイーナがね……」
「どこにいるか、知りませんか?」
「知らないわ。でも、失踪した理由は、破壊神にあると思うわ」
「どうしてですか?」
モイラはゆっくりと口を開いた。
「私は以前、ルイーナの未来を見たことがあるの。でも見えなかった」
「……見えなかった?」
「ええ。そんなこと、今まで一度もなかったのよ。……人間に限った話だけれど」
モラは息を呑んだ。
「……人間以外で、見えなかった人がいるんですか?」
「いるわ。それも複数人ね。その全員に共通しているのは――破壊神によって、未来を大きく歪められた可能性が高いということよ」
「どうして、そう思うんですか?」
「そもそも、私は破壊神の未来を見ることが出来ないのよ」
モイラは淡々と続ける。
「世界を再構築するなんていう、あまりにも逸脱した力……未来が固定されない存在。だから、見えないのよね」
「……つまり、ルイーナも……?」
「ええ。破壊神が深く関わる未来にいる可能性が高いわ。それに前、貴方達が加勢を頼みに来た時……言っていたでしょう?破壊神に宣戦布告されたって」
「……はい」
「それを踏まえれば、今回のことも説明がつくわ」
「……そうですか」
「ごめんなさいね。力になれなくて」
「いえ、ありがとうございました」
モラは軽く頭を下げると、再び駆け出した。
「……ルイーナ。もしかしたらと思っていたけれど……あの子は、もう“ルイーナではない”のかもしれないわね」
モイラは小さく呟いた。
「だとしたら――あんな芸当が出来て、あの感じの存在は……」
モイラはそこまで言って、言葉を切った。
「……いいえ。私には関係のないことだわ。考える必要はないわね」
静かに首を振る。
「貴方達の無事を……祈っているわ」
そう言うと、モイラは祠の奥へと静かに姿を消した。




