悪魔
自身で書いてAIに修正してもらっています。残酷表現が少しあるので注意です。
その悪魔は、限りなく人間に近い姿をしていた。赤い瞳に、大きな翼。
悪魔はちらりとこちらを冷ややかな目で一瞥すると、すぐに興味を失ったように視線を逸らした。
――あいつだ。
私の人生を壊した、元凶。
あの悪魔は、1000年以上生きていると伝えられている存在。母が死んだことも、私が‥皆んなが普通の生活を送れなかったことも、すべてはあいつのせいだ。
そう思った瞬間、胸の奥から抑えきれない殺意が湧き上がった。
私の能力は破壊。
人間離れした握力を持ち、触れたものを力ずくで壊すことができる。
だが攻撃方法は打撃のみ。
それが致命的な欠点だった。
地面を強く蹴り、私は悪魔へ飛びかかる。
全力で拳を振り下ろした――が、
悪魔は体をわずかに横へずらしただけで、私の攻撃を受け流した。
次の瞬間、悪魔はすでに私の背後にいた。
「キロプテラ」
低く呟かれたその言葉と同時に、視界が暗闇に閉ざされる。途端チチチチチと耳障りな音が、四方八方から迫ってきた。
音が止み、視界が戻った瞬間、激痛が全身を貫いた。
体の至る所が抉れ、血が溢れている。
周囲の床には、無数のコウモリの死骸が転がっていた。
――これが、あの悪魔の能力。
理解した途端、体温が急激に奪われていく。
力が抜け、私は床に倒れ込んだ。
悪魔は、こちらを振り返ることすらなく、静かにその場を去っていった。
「……まだ、死ねない」
時は戻り、私は城の外でフラフラと歩いていた。辺りは薄暗く、空気は冷たい。
左腕を見ると、出血は止まらず、傷は完全に貫通していた。足に力が入らず、そのまま地面に崩れ落ちた。
薄れゆく意識の中で能力について考えた。
もし、氷を操る能力だったら。
固めることも、壊すこともできただろう。
私の能力だって、本当に殴ることしかできないのか?
破壊する対象を――物ではなく、もっと別のものにできないのか。
概念そのものを、壊すことは……。
迷っている時間はない。
このままでは、考える前に死ぬ。
私は、自身の時間を壊した。
――そこで意識は遠のいていった。
目を覚ますと、そこは知らない天井だった。
天井板の隙間から、かすかに光が差し込んでいる。
「……ここは……」
体を起こそうとした瞬間、全身に鋭い痛みが走った。
「大丈夫?」
思わず息を詰めた私に、すぐ声がかかる。
「無理しないで。しばらくは安静にしたほうがいいわ」
視線を向けると、そこには一人の老婆が立っていた。白髪はきちんとまとめられ、背は曲がっているが、その目だけは不思議なほど澄んでいる。
「……えっと、誰ですか?」
そう尋ねると、老婆は一瞬驚いたように目を見開き、すぐに柔らかく笑った。
「あなたが森で倒れているのを見つけたのよ。かなりの致命傷だったからね。普通なら……助からなかったわ」
「……普通なら?」
「ええ。私が治したの」
「……治した?」
思わず聞き返すと、老婆は私の左腕に視線を落とした。
「あなた、悪魔に挑んだでしょう」
「――っ」
なぜ、この人がそれを知っている。
言葉を失った私を見て、老婆は静かに続けた。
「私も能力者なの。あなたと同じ。昔ね……若い頃、私もあの悪魔に挑んだのよ」
能力者。
その言葉に、胸の奥がざわつく。この人もまた……私と同じ血を引いているのだ。
「でも、私の能力は戦闘向きじゃない。回復能力だけ。致命傷を受けて必死に逃げて……生き延びたのよ。」
回復能力。
私は体中を見ると傷はほとんど塞がっていた。
「……能力者は、私一人だと思ってました。」
「そうね。実際どうなのかしら。」
老婆はどこか遠くを見る目で言った。
「どうして、こんなところに住んでるんですか?」
悪魔の城に近く、赤い霧が流れ込むこの森。
人が寄りつく場所じゃない。
「もし見つかったら、また連れ戻されて戦えって言われるでしょう?残りの人生くらい、静かに過ごしたいのよ」
それから、少しだけ笑って付け加えた。
「それに、ここまで悪魔は来ないと思うし、安全よ」
そう言って、老婆は部屋を出ていった。
⸻
数日間、私はその家で世話になった。
体の傷はすべて塞がっていた。だが、深部に残った痛みだけは消えていない。
やがて体が動くようになり、私は老婆に礼を言った。
「助けてくれて……ありがとうございました」
「いいのよ」
そう答えた後、老婆は少しだけ表情を曇らせた。
「あなた、これからどうするの?」
「……あの悪魔を殺します」
自然と、そう口にしていた。
「今より、強くなって……今度こそ」
老婆は何も言わなかった。
ただ、悲しそうに目を伏せる。
「……そうかい」
少しの沈黙の後、彼女は静かに言った。
「私はいつでもここにいるわ。困ったら、戻ってきなさい」
家を出ようとした、そのとき。
「待って」
背後から呼び止められ、振り返る。
「最後に、名前を聞いておきたいわ」
「……私の名前は、ルイーナです」
「そう……」
老婆は、優しく微笑んだ。
「私はマテルテラ。またね、ルイーナ」
別れを告げ、私は森へと歩き出した。
⸻
歩きながら、自分の体に違和感を覚える。
生きている。確かに、生きている。
だが――
あのとき、私は“時間を壊した”。
それなのに、死を壊した感覚はない。生と死の境界に、触れられた気もしない。
……まだだ。
私は、生死そのものを壊せてはいない。
それでも。胸の奥で、確かな感覚があった。老いが、私から遠ざかっている。理由はわからない。証明もできない。
だが、直感が告げている。
――私はもう、時間に殺されることはない。
「次は……」
握りしめた拳に、力がこもる。
「必ず、あいつを殺す」
森の奥へ、私は歩き出した。
森を抜ける風が、やけに冷たかった。
足を止め、振り返る。そこには、以前と変わらない木々が立ち並んでいる――はずだった。
「……?」
違和感に、眉をひそめる。幹が太い。枝が高い。以前見た森より、かなり違って見えた。
「……悪魔の、影響……?」
そう呟いた瞬間、頭の奥がずきりと痛んだ。一瞬、視界が揺れる。何かがずっと引っかかっている感覚。思い出せない。けれど、確実に何かを忘れている。
名前だったのか。場所だったのか。
それとも——
「……っ」
思考を進めようとした途端、痛みが強くなる。まるで、記憶そのものを縛りつけられているような……私は深く息を吸った。今は、考える必要はない。考えるべきことは、一つだけだ。
あの城。赤い霧の向こうにいる、あの悪魔。
「……今度こそ、殺す」
あの赤い霧のもとへ向かった。
悪魔の城は、以前と変わらず異質な空気を漂わせていた。赤い霧が城壁にまとわりついている。玉座の前に立つその存在が、こちらを見やる。
「……また来たのか」
冷え切った声だった。
「久しぶりね」
私がそう返すと、悪魔はわずかに眉をひそめた。
「ひさしぶり……?」
怪訝そうな表情。だが次の瞬間には、何事もなかったかのように真顔へ戻る。
「キロプテラ」
低く言い放たれたその言葉と同時に、視界が暗闇に閉ざされた。
——来る。
耳障りな羽音。四方八方から迫る気配。だが、この技はもう分かっている。コウモリだ。無数のコウモリが体当たりするように襲ってくる。私は、考えるより先に拳を振るった。
一撃。二撃。三撃と、次々コウモリを打ち下ろしていく。闇の中で、確かな手応えが連続する。
次の瞬間、視界が開けた。床には、原形を留めないほど潰れたコウモリの死骸が転がっている。
「……」
私は自分の拳を見た。——私に、こんな力があったか?疑問が浮かぶ。だが、考えている暇はない。
地面を蹴り、私は悪魔へ向かって飛び出した。全力で拳を叩き込む。
……当たらない。
距離は詰めているはずなのに、拳が空を切る。速さも、重さも、すべてが違う。
——これが、悪魔と人間の差……?
「ハルバード」
悪魔がそう呟くと、その手に禍々しい武器が現れた。斧のようで、槍のような、見たことのない形状。
次の瞬間。
——背後。
気づいたときには、悪魔はすでに私の後ろに立っていた。
「……死ぬ」
そう思った瞬間。悪魔は、武器を消した。そして、何かに気づいたように目を見開く。
「……?」
一瞬、戸惑ったような表情。
「……協力してくれないか」
唐突な言葉だった。
私は、拳を下ろさないまま、悪魔を睨みつける。
「……は?」
城の空気が、わずかに歪んだ。




