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Frange ruinam   作者: S
2/4

悪魔

自身で書いてAIに修正してもらっています。残酷表現が少しあるので注意です。


その悪魔は、限りなく人間に近い姿をしていた。赤い瞳に、大きな翼。


悪魔はちらりとこちらを冷ややかな目で一瞥すると、すぐに興味を失ったように視線を逸らした。


――あいつだ。

私の人生を壊した、元凶。


あの悪魔は、1000年以上生きていると伝えられている存在。母が死んだことも、私が‥皆んなが普通の生活を送れなかったことも、すべてはあいつのせいだ。


そう思った瞬間、胸の奥から抑えきれない殺意が湧き上がった。


私の能力は破壊。

人間離れした握力を持ち、触れたものを力ずくで壊すことができる。

だが攻撃方法は打撃のみ。

それが致命的な欠点だった。


地面を強く蹴り、私は悪魔へ飛びかかる。

全力で拳を振り下ろした――が、


悪魔は体をわずかに横へずらしただけで、私の攻撃を受け流した。


次の瞬間、悪魔はすでに私の背後にいた。


「キロプテラ」


低く呟かれたその言葉と同時に、視界が暗闇に閉ざされる。途端チチチチチと耳障りな音が、四方八方から迫ってきた。


音が止み、視界が戻った瞬間、激痛が全身を貫いた。


体の至る所が抉れ、血が溢れている。

周囲の床には、無数のコウモリの死骸が転がっていた。


――これが、あの悪魔の能力。


理解した途端、体温が急激に奪われていく。

力が抜け、私は床に倒れ込んだ。


悪魔は、こちらを振り返ることすらなく、静かにその場を去っていった。


「……まだ、死ねない」


時は戻り、私は城の外でフラフラと歩いていた。辺りは薄暗く、空気は冷たい。


左腕を見ると、出血は止まらず、傷は完全に貫通していた。足に力が入らず、そのまま地面に崩れ落ちた。


薄れゆく意識の中で能力について考えた。

もし、氷を操る能力だったら。

固めることも、壊すこともできただろう。


私の能力だって、本当に殴ることしかできないのか?

破壊する対象を――物ではなく、もっと別のものにできないのか。


概念そのものを、壊すことは……。


迷っている時間はない。

このままでは、考える前に死ぬ。


私は、自身の時間を壊した。


――そこで意識は遠のいていった。



目を覚ますと、そこは知らない天井だった。


天井板の隙間から、かすかに光が差し込んでいる。


「……ここは……」


体を起こそうとした瞬間、全身に鋭い痛みが走った。


「大丈夫?」


思わず息を詰めた私に、すぐ声がかかる。


「無理しないで。しばらくは安静にしたほうがいいわ」


視線を向けると、そこには一人の老婆が立っていた。白髪はきちんとまとめられ、背は曲がっているが、その目だけは不思議なほど澄んでいる。


「……えっと、誰ですか?」


そう尋ねると、老婆は一瞬驚いたように目を見開き、すぐに柔らかく笑った。


「あなたが森で倒れているのを見つけたのよ。かなりの致命傷だったからね。普通なら……助からなかったわ」


「……普通なら?」


「ええ。私が治したの」


「……治した?」


思わず聞き返すと、老婆は私の左腕に視線を落とした。


「あなた、悪魔に挑んだでしょう」


「――っ」


なぜ、この人がそれを知っている。


言葉を失った私を見て、老婆は静かに続けた。


「私も能力者なの。あなたと同じ。昔ね……若い頃、私もあの悪魔に挑んだのよ」


能力者。

その言葉に、胸の奥がざわつく。この人もまた……私と同じ血を引いているのだ。


「でも、私の能力は戦闘向きじゃない。回復能力だけ。致命傷を受けて必死に逃げて……生き延びたのよ。」


回復能力。

私は体中を見ると傷はほとんど塞がっていた。


「……能力者は、私一人だと思ってました。」


「そうね。実際どうなのかしら。」


老婆はどこか遠くを見る目で言った。


「どうして、こんなところに住んでるんですか?」


悪魔の城に近く、赤い霧が流れ込むこの森。

人が寄りつく場所じゃない。


「もし見つかったら、また連れ戻されて戦えって言われるでしょう?残りの人生くらい、静かに過ごしたいのよ」


それから、少しだけ笑って付け加えた。


「それに、ここまで悪魔は来ないと思うし、安全よ」


そう言って、老婆は部屋を出ていった。



数日間、私はその家で世話になった。


体の傷はすべて塞がっていた。だが、深部に残った痛みだけは消えていない。


やがて体が動くようになり、私は老婆に礼を言った。


「助けてくれて……ありがとうございました」


「いいのよ」


そう答えた後、老婆は少しだけ表情を曇らせた。


「あなた、これからどうするの?」


「……あの悪魔を殺します」


自然と、そう口にしていた。


「今より、強くなって……今度こそ」


老婆は何も言わなかった。

ただ、悲しそうに目を伏せる。


「……そうかい」


少しの沈黙の後、彼女は静かに言った。


「私はいつでもここにいるわ。困ったら、戻ってきなさい」


家を出ようとした、そのとき。


「待って」


背後から呼び止められ、振り返る。


「最後に、名前を聞いておきたいわ」


「……私の名前は、ルイーナです」


「そう……」


老婆は、優しく微笑んだ。


「私はマテルテラ。またね、ルイーナ」


別れを告げ、私は森へと歩き出した。



歩きながら、自分の体に違和感を覚える。


生きている。確かに、生きている。


だが――

あのとき、私は“時間を壊した”。


それなのに、死を壊した感覚はない。生と死の境界に、触れられた気もしない。


……まだだ。


私は、生死そのものを壊せてはいない。


それでも。胸の奥で、確かな感覚があった。老いが、私から遠ざかっている。理由はわからない。証明もできない。

だが、直感が告げている。


――私はもう、時間に殺されることはない。


「次は……」


握りしめた拳に、力がこもる。


「必ず、あいつを殺す」


森の奥へ、私は歩き出した。



森を抜ける風が、やけに冷たかった。

足を止め、振り返る。そこには、以前と変わらない木々が立ち並んでいる――はずだった。


「……?」


違和感に、眉をひそめる。幹が太い。枝が高い。以前見た森より、かなり違って見えた。


「……悪魔の、影響……?」


そう呟いた瞬間、頭の奥がずきりと痛んだ。一瞬、視界が揺れる。何かがずっと引っかかっている感覚。思い出せない。けれど、確実に何かを忘れている。


名前だったのか。場所だったのか。

それとも——


「……っ」


思考を進めようとした途端、痛みが強くなる。まるで、記憶そのものを縛りつけられているような……私は深く息を吸った。今は、考える必要はない。考えるべきことは、一つだけだ。


あの城。赤い霧の向こうにいる、あの悪魔。

「……今度こそ、殺す」


あの赤い霧のもとへ向かった。


悪魔の城は、以前と変わらず異質な空気を漂わせていた。赤い霧が城壁にまとわりついている。玉座の前に立つその存在が、こちらを見やる。


「……また来たのか」


冷え切った声だった。


「久しぶりね」


私がそう返すと、悪魔はわずかに眉をひそめた。

「ひさしぶり……?」


怪訝そうな表情。だが次の瞬間には、何事もなかったかのように真顔へ戻る。


「キロプテラ」


低く言い放たれたその言葉と同時に、視界が暗闇に閉ざされた。


——来る。


耳障りな羽音。四方八方から迫る気配。だが、この技はもう分かっている。コウモリだ。無数のコウモリが体当たりするように襲ってくる。私は、考えるより先に拳を振るった。


一撃。二撃。三撃と、次々コウモリを打ち下ろしていく。闇の中で、確かな手応えが連続する。


次の瞬間、視界が開けた。床には、原形を留めないほど潰れたコウモリの死骸が転がっている。


「……」

私は自分の拳を見た。——私に、こんな力があったか?疑問が浮かぶ。だが、考えている暇はない。


地面を蹴り、私は悪魔へ向かって飛び出した。全力で拳を叩き込む。


……当たらない。


距離は詰めているはずなのに、拳が空を切る。速さも、重さも、すべてが違う。


——これが、悪魔と人間の差……?


「ハルバード」


悪魔がそう呟くと、その手に禍々しい武器が現れた。斧のようで、槍のような、見たことのない形状。


次の瞬間。


——背後。


気づいたときには、悪魔はすでに私の後ろに立っていた。


「……死ぬ」


そう思った瞬間。悪魔は、武器を消した。そして、何かに気づいたように目を見開く。


「……?」


一瞬、戸惑ったような表情。


「……協力してくれないか」


唐突な言葉だった。


私は、拳を下ろさないまま、悪魔を睨みつける。


「……は?」


城の空気が、わずかに歪んだ。


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