執事見習い×2
侍女たちが集まってきて、子どもたちの髪を整え着替えをさせた。
チェックのドレスにリボン、グレーのスーツにチェックのチョッキ。
アベル殿下とエレナ殿下はとても可愛らしい。
だが――素足だ。
「……アベル殿下とエレナ殿下は、また祈りに行くの?」
「兄上は戦っている。僕が頑張らなくちゃ」
「……アベル殿下」
「兄さま一人にすると泣いちゃうもん」
「泣いてたのはエレナでしょ!」
二人はとても仲が良いようだ。
私も一緒にいられればいいが……。
王族でなければ祈る資格がないというのなら、意味がない。
「ごめんね――」
「「なんで謝るの~?」」
「調べてくるわ。何か良い方法があると思うから」
王城の図書館であれば、禁書庫もあるだろう。
バロックに寄れば、祈りの間以外は私が入っていけない場所はないのだという。
「がんばってくるね!」
「今日は兄さまがもうお祈りしているから、すぐに終わると思うの!」
「――ライナス様も?」
「「うん! 魔法が上手だから、すぐに凍らせられるんだ!」」
「……そう、なの」
「あとね! レティシアさまは家族だから、殿下はいらないの」
「――え?」
「兄様も私たちの名前に殿下なんてつけないのよ?」
「わかったわ……アベル、エレナ」
二人は無邪気に笑った。
もう、二人の泣き顔なんて見たくない。
「「いってきま~す!」」
ライナス様と一緒だと嬉しいのだろう。二人は足取りも軽やかに祈りの間への階段を降りていく。
――でも、こんなに幼い子どもたちに大陸の命運がかかっているなんて……盟約ってなんなの?
ライナス様は、戦っていない間は竜を凍らせている氷の維持に努めているのだろう。
だが、魔獣の侵攻だって活性化していると聞いている。
たった一人ですべてをこなすのは無理があるだろう。
「……ライナス様のことを責めるだけ責めて、できることがないなんて」
前世の私は、誰かに頼りにされるのが好きだった。やりがいがあると思っていた。
けれど、徐々にそれらの重みは増えていって――最期には私を押しつぶしてしまった。
だから、のんびり暮らすのだ。
――見ない振りして?
私は走り出した。
図書館に行けば、何かがわかるかもしれない。
図書館の扉は重厚――竜と人間との戦いのレリーフ。
竜の前に、二羽のウサギの魔獣がいる。
彼らは力を貸しているのか。それとも敵対しているのか。
「これ――嘘ばっかりだ」
「そうだ――あいつはこんなに勇敢じゃない」
「あなたたち」
振り返ると、執事姿の美少年が二人。
お揃いなのだが、ボタンや蝶ネクタイなど、少しだけデザインが違っている。
「どうして執事の格好をしているの?」
「「執事見習い」」
「……執事……見習い?」
「一日にんじんケーキ一本」
「二日で二本、三日で三本」
二人は胸を張った。
強い魔獣のはずなのに、なんだか憎めない。
「……あなたたちのこと、なんて呼べば良いの?」
「人と違い我らに名はないが――あいつは、こう呼んでいた」
「ライゼ」
「リンネ」
黒い髪の魔獣はライゼ。
白銀の髪のリンネ。
呼ばれていたのなら、それが名なのだろう。
「ライゼ、リンネ――」
「呼ばれるの、千年ぶり」
「なぜ、胸が温かい?」
「それは……」
名前を呼ばれないのは寂しい。
母を亡くしてから、私のことを名で呼ぶ人はいなかった。
だから、この場所で名前で呼ばれると胸が温かくなる。
「上手く言えないけど、そういうものよ」
「レティシア、何をしにここに来た」
「レティシア、聞いた方が早いぞ」
「――盟約の内容を教えてもらう対価は?」
「「寿命三年でどうだ?」」
交渉は決裂。私は、自分で調べることにした。




