色違いの双子
ベッドを譲ってしまったが、ソファーは寝るには少し狭い。
こわばった体を伸ばし、ベッドに視線を向ける。
「んんっ!?」
子どもが増えていた。
十歳くらいだろうか。
白銀の髪の少年はアベル殿下にくっついて眠っている。白銀の髪がお揃いで、まるで兄弟のようだ。
黒髪の少年はエレナ殿下にくっついて眠っていた。金色の髪と黒髪、まるで月と夜のようだ。
「この子たち、色違いね。双子……なのかしら」
だが、この少年たちは初日に紹介された使用人の中にはいなかった。
紹介されそびれたとしても、使用人が王妃になる予定の女性のベッドに潜り込んでいるなど大問題だ。
「つまり……」
少年たちの目が開いた、同時に。
彼らの瞳はルビーのように赤い――瞳孔が縦に開く。
「あなたたち……」
「もうバレたらしいぞ」
「なぜバレた。完璧だったはずだ」
「やっぱり、あなたたちだったのね」
高位の魔獣は人に化けられるという。
小さなウサギが、高位の存在だなんてまだ信じ切れないが、ライナス様も倒せないと言っていたのだから事実なのだろう。
二人は起き上がる。
パジャマ姿だ。
目を開けた直後、縦に開いていた瞳孔も今は丸くなっている。
白銀の髪に赤い瞳の美少年。
黒い髪に赤い瞳の美少年。
二人はそっくり同じ顔をしている。
「どういうつもりなの」
「レティシアと一緒じゃないと魔力がつきる」
「レティシアと一緒じゃないと消えてしまう」
「……それはどういうこと」
「レティシアと一緒なら外に出られる」
「レティシア、しかも我らに名前を教えた」
困ったことになった。
私はひとまずライナス様の部屋に行くことにした。
* * *
廊下に出ると、執事長バロックが立っていた。
「おはようございます、レティシア様」
「バロック……どうしてここに」
「見張りでございますよ。……城中に悍ましい魔力が満ちていると思いましたが、祈りの間の魔獣でございますか」
「「なぜわかる!?」」
「執事長でございますゆえ、わかるのですよ。不肖バロック、この命に替えましても足止めしてみせましょう」
「……待って、この子たちは」
「あいつの僕の子か――なかなか強い」
「だが我らの足下にも及ばぬ」
二人はニヤリと笑った。
このままでは、廊下で戦闘が起こってしまう。
「消し炭にしよう」
「いや灰にしよう」
「……そう簡単にいきますかな?」
バロックの周囲に風が吹き荒れた。
「「……わわ!?」」
風が二人の足を浮かせた。
二人は鈍い音を立て、尻餅をつく。
「さて……にんじんケーキなどいかがでしょうか」
「「え?」」
立ち上がろうとした二人が、ピタリと動きを止めた。
「千年の月日、この王国の料理長に伝えられし秘伝のレシピでございます」
「「まさか――あいつの……」」
「ええ、初代国王陛下が祈りの間の魔獣が外に出たときにお出しするようにと遺されたものでございます」
「……一本全部か?」
「……本当に同じ味が再現されているか食べてみてからだ」
「交渉成立でございますね」
執事長は飄々と、パジャマを着た魔獣二人を連れて去って行った。
「おはよぉ……レティシア様」
「おはようございます。レティシア様」
「ええ、おはよう。アベル殿下、エレナ殿下」
続いてアベル殿下とエレナ殿下が起きてきた。
パジャマ姿の二人はなんとも可愛らしい。
アベル殿下とエレナ殿下は、同じ髪質なのだろう。
寝癖がついてしまっていた。




