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従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。  作者: みみぢあん


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45話 再燃


 昼食の時、私たちを逆恨みしたアルブライトン公爵家の令息、ジョゼフに意地悪をされ、不愉快な気分でイライラとしていたけど。 


 午後からの講義が終わり、書きあげた論文を学園長に提出しに行くと……


『前回の論文は上手くまとめられていて、とても良く書けていました。この調子で頑張ってください。ミレイユ嬢、次の論文も期待していますよ』

 ……と学園長に論文の出来が良かったと褒められ。


 私の気分はファーロウ邸に帰宅する頃には、すっかり上機嫌となっていた。


 お母様と二人だけの晩餐を終え、食後のお茶も早めに切りあげて自室へ戻り。私は早速、気合いを入れて次の課題図書を読み始める。





 夢中で読み耽っているうちに、いつの間にか時間が過ぎ。急激な眠気に襲われて次のページを捲る手を止めた。


「ふぅ──……もう、ダメ! 眠くて本の内容に集中出来ないわ。目もショボショボするし。そろそろ終わりにしましょう」

 

 続けて何度も出そうになる大きなあくびを噛み殺し。しかたなく本にしおりを挟んで、パタンッ…! と閉じた。


 コンッ、コンッ、コンッ、と私の部屋の扉を廊下側から叩く音が室内に響く。


「あら、こんな時間に誰かしら?」

(使用人ではないわよね?)


 最近は夜遅くまで勉強をしていることが多くなった私は、使用人の手を借りなくても、自分一人で着替えられる服を着るようにしているから。

 使用人たちも私の勉強の邪魔をしないようにと。気を使って寝衣の用意だけしてくれて、私自身の寝支度の世話をしに来なくなった。


 私は訪問者のために扉を開くと。明かりが落とされた暗い廊下に、王宮から帰って来たばかりのお父様が立っていた。


「まぁ、お父様でしたの⁉ お帰りなさい!」


「ミレイユ、こんなに遅くまで勉強をしていたのか。……外からこの部屋の明かりが見えたから、お前と話をしたくて来たのだが。少しだけ良いかな?」


 勉強を始める以前の私なら、とっくに眠っている時間だ。


 王宮で激務を終えて帰宅したお父様は、疲労感を漂わせていたけど。私にニコリと笑った。


「はい、お父様。ちょうど集中出来なくなって来たので。そろそろ切り上げようと思っていたところです」

(とても疲れたお顔をしているわ。お父様は今日もこんなに夜遅くまで、王宮で働いていたのね?)

 

 扉を大きく開けて、お父様を自分の部屋へ招き入れる。


 課題図書を読むのに使っていた、テーブルセットのピンクの布が張られた華奢な椅子に、お父様と向かい合って座った。


 テーブルの上に置かれたままの、課題図書を手に取って見るお父様は心配そうにたずねる。


「ミレイユ、無理はしていないかな?」

 私が遅くまで起きていたから、お父様は心配しているのだ。


「いいえ、お父様。昼間、学園長に私が出した論文を褒められて、つい嬉しくなって。……今夜は遅くまで本を読んでしまったの。ふふふっ…」

 普段はもう少し早く切り上げている。


(私は単純だから、学園長に褒められたらもっと頑張りたくなってしまったのよね。これからはお父様に心配されないよう、気を付けないと……)


「そうか、学園長に褒められたか。だったら今度は、私にもミレイユの論文を見せてくれるかい?」

「ええ! お父様がよろしければ……私も見て欲しいです」

「もちろん、見たいよミレイユ」


「ふふふっ……下手でも、文句は言わないで下さいね? 助言はいくらでも大歓迎ですけど」

(嬉しい! お父様を独占している気分だわ。こんなお話をお父様と出来るなんて! 本当に勉強を初めて、大正解だった!)


「娘の成長をこの目で見られるのだから、文句なんて言わないさ」


 お父様も楽し気に笑うから、私は余計嬉しくなる。


「お話とは、私の勉強のことでしたか?」

「ああ、いや……そっちはまた別の話だよ」


 機嫌良く笑っていたお父様が、とたんに表情を曇らせた。


「お父様……あまり、良いお話ではないのですか?」

「うん。ミレイユには少し面倒な話だが、まぁ大丈夫だろう」

「……面倒なお話?」


「来週、王宮で開かれる王家主催の夜会に、クレマンと一緒にミレイユも出席して欲しいのだが……」


「クレマンと一緒に王家主催の夜会? 社交関係の集まりに出席する時は……婚約者のクレマンはいつもエスコートしてくれるから、問題はないです」

(それにしても……お父様はなぜ、こんなに言いにくそうにしているのかしら?)


 最近は勉強で時間が無くなり、私が夜会を欠席していたから。……それが原因だろうか。でもお母様が出席しているから、大丈夫だと思っていたけれど。

 

 思わず私は首を傾げる。


「実は……クレマンが従妹と浮気をしているという噂が、今度は社交界でも流れているらしい」


「えええっ……⁉ でも従妹のパトリシア嬢は、結婚しましたよね?」


 学園内でもクレマンとドミニクが、浮気の噂はギョームが流した嘘だと証明したから。今は綺麗に消えているのに。


 ギョームが流した嘘の噂が、次は社交界で広がっているとは。何がどうして、こうなったのか。


 学園で悪意を持って虚偽の噂を流したギョーム自身は、クレマンの名誉を傷つけた罪で、学園側から三ヵ月間の謹慎が言い渡された。


「ああ。誰かがまた、意図的に流し始めたんだよ」


「誰ですか⁉」

(意図的に⁉ 何か目的があって、わざと噂を流しているの?)


「恐らくだが……アルブライトン公爵家の嫌がらせだろう」




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