↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/59

44話 陰口3


 アルブライトン公爵家の次男ジョゼフは、自分からクレマンたちにケンカを売っておいて、都合が悪くなると臆面もなくその場から逃げ出した。

 ジョゼフの友人たちも卑怯者らしく慌てて後を追い、いなくなった。


「もう! あの人は何がしたかったのかしら」


 急いで食堂から逃げて行くジョゼフの後ろ姿を睨みながら、ネリーが嫌そうにつぶやいた。


「他人に論文を書かせて、不正をしたと言っていたけれど。本当なの?」

(もう、信じられない! あのジョゼフという人は、そんな恥ずかしいことをしておいて、クレマンや私を侮辱するなんて!)


「うん、そうらしいよ。……な、ドミニク?」


 私とネリーの前に立ち、ジョゼフを睨みつけていたクレマンにたずねると。

 クレマンは自分の席に戻って腰を下ろしながら、隣に座るドミニクに視線をうつす。


 ドミニクは軽蔑の眼差しを、ジョセフが消えた食堂の入り口に向けながら、私たちに説明した。


「ジョゼフも僕と同じ時期に、論文を出す勉強を始めたんだけど。他の二人と一緒に、学園長の指導を受けてすぐに、不正が発覚したんだ」


 ──ドミニクが言う、学園長の指導とは。

 休日や講義の終った午後を利用して、少人数の学園生に教師や学園長が付いて、議論を交えながら参加型の講義を受けることだ。


 そのため普段、学園生たちが集団で受けている講義よりも、もう一歩踏み込んだ高いレベルの内容となる。


 ちなみに『領地運営の基礎』を学び始めたばかりの私とネリーは、年下の男子学園生と一緒に指導を受けている。


「でも……課題を読んで自分で論文を書かないと。他の学園生たちと議論なんて、出来ないのではないの?」

(……だって、時には学園生だけではなく。学園長とも議論することになるから。課題の内容が頭にしっかり入っていなければ、自分の意見なんて、何も言えないわ) 


「さすがだね、ミレイユ!」


 私が首を傾げているとクレマンがニヤリと笑い。ドミニクが私の疑問に答えてくれた。

 

「ミレイユの言う通りジョゼフは僕たちと議論が出来なかった。それを変に思った学園長が論文の内容を聞いても。アイツは何も答えられなかったよ」


「やっぱり!」

「うん。……ジョゼフはそれ以来、論文を教師たちに拒絶され指導されなくなった。学園長もそのことについては触れなかったから、僕らもあえて無視したんだ」


 残念なのは。

 ジョゼフが不正をしたとしても、希望者にのみ指導し成績には反映されない勉強だから。学園で公式に処罰されることも無かった。


 逆に言えば、学園長や教師たちの善意で行われる指導のため。教師たちは指導を行う義務も無い。


「あっ、そうだわ!」

(お父様にクレマンが勉強を始めたことを報告した時に、言っていたお話はこういうことなの?)


 私はふと思い出した。


『学園の成績が良いだけの、応用がきかない無能な者がよくいるんだ』 

『そんな愚か者が、間違って文官試験に受からないように』


「ねぇクレマン? もしかして……あのジョゼフという人も、下級文官の試験を受けるつもりなのかしら?」

(だとしたら……ジョゼフはお父様が、一番嫌いなタイプだわ!) 


「確かに以前はジョゼフも、受けると言っていたけどね。僕が文官の試験を受けると話したとたん。……あんなふうに、ガラリと態度が悪くなったんだよ」


 クレマンは人当たりの良さから、それまでジョゼフと良好な友人関係を築いていたが。今ではジョゼフを敵認定している。


 恐らくジョゼフ側も、クレマンを敵認定しているのだろう。



「裕福なアルブライトン公爵家の出身でも、ジョゼフは僕と同じで次男だから。いずれ家を出るか、長男の補佐をするかだし。それでたぶん、文官になろうと思ったようだね」


 しみじみとドミニクが言うと。 

 気分を落ち付けるために、お茶を飲みながらネリーが口を開く。


「話だけを聞いていると。あの感じの悪いジョゼフは、クレマンにライバル心を燃やしているように聞こえるけれど?」


「クレマンだけではないよ。僕もだけど……ミレイユやネリーまで勉強を始めたから。不正して挫折したジョゼフのプライドは。今頃、粉々に砕け散っているだろうね」


 少しだけお行儀悪く、ズズッと音を立てて食後のお茶を飲みながら。私たちの賢者ドミニクは結論を綺麗にまとめた。


「……なるほどね」

(あんなふうに私たちを侮辱するから、よけいに自分の傷口を悪化させているように見えるわ。あのジョゼフという人は、なんて愚かなの⁉) 



 ハァ―――ッ……と私が大きなため息をつくと。

 向かい側の席でクレマンも、私に続いてハァ―――ッ……とため息をつく。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。