↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/59

39話 淑女をやめたミレイユ 


 自分も論文を出す勉強がしたいのだと、ミレイユから打ち明けられ。思わず僕は黙り、考え込んでしまった。

 

「……」

(勉強⁉ 僕と同じ勉強かぁ~……うう~んん?)


 何て答えようか考え込んでいるうちに、どうやら僕の気持ちがそのまま顔に出てしまい、渋い表情をしていたらしい。


 腕の中から僕を見上げていたミレイユは、顔を真っ赤にして怒りドンッ! と僕の胸を突き飛ばして華奢な身体を離した。


「クレマン! やっぱり、あなたも反対なのね⁉」

「ええええ⁉ ……いやっ! 違う、違うよ……ミレイユ! 落ち着いて」


(ミレイユ、何でそうなるんだ? 僕は少しも反対なんてする気はないのに)


 あわてて僕はミレイユの手を取ろうとするが。小さな手で容赦なくパシッ! と振り払われてしまう。 


「私には……あなたのように出来ないと思っているの⁉ それとも女の子は勉強なんて出来ない方が、可愛いと思っているの⁉」


 大きな瞳に涙を浮かべて、怒鳴るミレイユに。僕は大きく首を横に振った。


「違うよ、ミレイユ! 僕はミレイユが勉強するのは大賛成だよ!」


「……嘘よっ! だったらなぜ、そんな嫌そうな顔をするの⁉ 勇気を出して気持ちを伝えたのに……」


 僕に反対されたと怒鳴りながら。ミレイユの鮮やかな青い瞳から、大粒の涙がポロポロと零れ落ちる。

 

 僕の前で淑女をやめると宣言したミレイユは、さっそく淑女らしからぬ癇癪かんしゃくを起こした。


「ミレイユ……」

(うわわっ! こんなに短気なミレイユは初めて見たよ。うわあぁぁ──っ! コレがミレイユが言った、淑女をやめるということなのか⁉)


「違うッ! 誤解だ!」


 僕は動揺しパニックになりかけた。

 宥めようと僕がのばした手を、ミレイユは小さな拳を振りまわして拒絶する。


 怒り狂ったミレイユは、僕の胸を小さな拳で何度も殴る。

 殴られても僕の方は痛くないけど。……怒りに任せて何度も打ち付ける、ミレイユの柔らかい手の方が、痛めるのではないかと心配になった。


「いやいやいやいやっ! 待ってよ、ミレイユ。本当に誤解だから!」

「なっ……何が誤解よ!」

「……だ、だから、僕と君とでは学園で学ぶ講義の内容が違うよね?」


「……っえ⁉」


 癇癪を起して振り回していた拳を、ミレイユはピタリと止めて僕の顔を見上げた。

 僕はそのすきにミレイユが怪我をしないように、細い手首を緩く掴んだ。ギュッと握ったらきっと痣になってしまうから。


「ミレイユが論文を書く勉強をするにしても。僕やドミニクとは、まったく同じ内容の勉強ではないだろう? ……だから君の場合はどうなるのかと思って、考えていたんだ」


 同じ学園生でも。騎士課の学園生と。一般課の男子と、女子では。それぞれが普段から学舎で受けている講義の内容が違う。



「……あ」

 僕に言われて、ようやく自分の勘違いに気づき。ミレイユはピタリ怒鳴るのをやめた。

 

「僕には助言ができないから。君の望みをかなえるには……誰に頼めば良いのか、考えていただけだよ。」


「……ああ」

 ミレイユの涙も止まり。大きな青い瞳の縁で最後の一粒が光っていたから、僕は指先で拭ってやる。


「僕は男だから、同じ男のドミニクに教えてもらえたけど。ドミニクに女子のことを聞いても、わかるかなぁ?」


「本当にそう思ったの?」

 ミレイユは僕に疑いの目を向けた。


「ミレイユ、本当に誤解だよ。だってミレイユと一緒に、別館の図書室で勉強をするなんて最高じゃないか」

「あらっ」


 目を吊り上げて怒っていたミレイユの表情が、恥ずかしそうな表情へと変わる。


「少しでも長くミレイユと一緒にいられるのなら、僕としては大歓迎だけど」

「クレマン……」

「とりあえず。勉強のことは、ドミニクに聞いてみようよ」

「ええ、そうね……」


「良かった!」

 僕はまた振り払われないかと、ビクビクと怯えながらミレイユの小さな手を取りキスをした。


 ミレイユに拒絶されなかったのが嬉しくて、僕はホッと笑う。

 恥ずかしそうにしていたミレイユも、僕につられて笑った。



 リンッ…! リンッ…! 

 唐突に僕のポケットの中で休憩時間の終わりを告げる、懐中時計の時鐘ソヌリが鳴った。


「いけない! 早く学舎に戻らないと、講義に遅刻してしまうよ」

(ううっ、クソッ! ちょうど良いところだったのに)


「本当だわ、急ぎましょう!」

「少し走ろう!」


 僕たちは手をつないで、仲良く学舎に向かって走った。


 




 午後からの講義に間にあい。席に付いてしばらく経った後でも、僕のニヤニヤ笑いは止まらなかった。


「……」

(ああ~… 可愛かった! ミレイユが僕の前で癇癪をおこすなんて。すごく新鮮で本当に可愛かった。淑女をやめたミレイユが、あんなに可愛いなんて……さっきは僕の心臓が、爆発しなかたのが、不思議なぐらいだよ)

 


 パトリシアの騒動以前よりも。自分のミレイユへの気持ちが、日々強くなって行くのがわかり。僕は婚約破棄されなくて心底、良かったと改めて思う。


(あ~…… 早く図書室へ行きたいっ! ミレイユに会いたい!)


 「何がなんでも頑張るぞ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。