24話 父の提案
お父様は首を傾げる私に、ニコニコと笑いながら説明した。
「ルドヴィクの提案を実現するなら、下級文官になるのが、現実的で近道だからだよミレイユ」
「現実的な近道……? 下級文官がですか?? んんんん……???」
(増々わからないわ。ルドヴィクお兄様はクレマンに王立騎士団入りを要求して、騎士見習いになれといったのに。……それがなぜ、下級文官になるの? ルドヴィクお兄様の提案を実現する⁉)
公爵家出身の家柄や血筋などで、お父様は宮廷伯の地位を勝ち取ったと思われ勝ちだけど。……実際は純粋に能力を認められて、お父様は国王陛下の最側近になった。
そんな優秀な知性を持つお父様は……時々、別の世界が見えているような、お話をされるから。平凡な知性しか持たない私には、まったくお父様の考えが見えない。
増々意味がわからず、私の首は増々傾く。
「父上…?」
騎士団入りを提案したルドヴィクお兄様も、私と一緒に首を傾げる。
お父様は柔和な笑みを浮かべて、クレマンに説明を始める。
「学園を卒業するまで、まだ半年はある。その間に死ぬ気で学べば、クレマン君も下級文官の試験に合格するのも夢ではないだろう?」
※下級でも、王宮の文官(国家公務員)は学園生の場合。学園の成績上位10位以内にはいる程度の学力が無ければ合格は見込めない。
ちなみに、上級文官試験は先に下級文官となり、数年の実績を積み。上司の推薦をもらって試験資格を得なければならない。
「はい……?」
ルドヴィクお兄様の提案にどう繋がるのか。クレマンはあまり意味を理解できていないらしく。お父様への返事に戸惑っているように見える。
そんなクレマンにどことなく意地悪そうな笑みを浮かべるお父様。
「そして運良くクレマン君が下級文官になれたら。最初に必ず合格者がたずねられる『希望する配属先』を、王立騎士団付きの文官にするんだ」
「ああ、なるほど! 父上わかりましたよ。騎士団で文官をしながら、見習い騎士扱いで鍛錬に参加させようという訳ですね?」
「そうだ!」
すぐに内容を理解し話を引き継いだお兄様に、お父様は満足そうに笑った。
「さすがです、父上!」
「……それに王立騎士団付きの文官は、就任してもすぐに辞めてしまうと問題になっているから。最近は騎士の誰かが文官の代わりをしているし。……おそらく新人でも希望を出せば、すぐに騎士団付きの文官になれるはずだ」
王宮で働きたくて、文官の試験を受けるのに。王宮内ではなく騎士団本部に出向させられ、気の荒い騎士団長に酷使させられるのだ。
そのせいで文官たちは、やる気をなくしすぐに辞めてしまうのだ。
(騎士団勤務は出世コースから外れているのも、文官が居つかない理由の一つでもある)
「どうだろう。クレマン君?」
お父様はクレマンに向けてニコリと笑うが、猛禽類の鷹を連想させる鋭い目は少しも笑っていない。
お兄様は自分の分厚い胸をバンッ! と力強く叩き。クレマンの前で獲物を狙う肉食獣のように、ニヤリと笑う。
「クレマンが下級文官試験に受かったら、オレが騎士団長を説得して、クレマンも鍛錬に参加できるようにしましょう!」
軽く説明しているが。お父様とお兄様が提案した道は、言い出した二人が過去に歩んだ道であり。
クレマンが進めば、厳しい道のりになることは明白だった。
私のお父様とお兄様は、二人そろって『ミレイユが本当に欲しければ、お前の根性を見せてみろ!』…と、クレマンに言っているのだ。
二人が叩きつけた試練の意味を理解すると、クレマンは即答した。
「やります!」




