23話 兄ルドヴィクの提案
迷いに迷い、答えを出せない私の代わりに一番端に座っていた、ルドヴィクお兄様が提案した。
「それはどういう意味だ、ルドヴィク?」
「つまりですね、父上。ミレイユのためにクレマンを変えれば良いのです! だからオレがクレマンの性根を叩き直してやる!」
するどい視線を向けるお父様に、ルドヴィクお兄様も瞳を不穏に光らせた。
お兄様はクレマンを見つめながら、バシッ! と猛々しい音を立てて、左手の手のひらと右手の拳を打ちつけて見せる。
そこで私は思い出した。
「……あっ! もしかして、ルドヴィクお兄様……まさか⁉」
(お兄様は先日、言っていた冗談を本気で実行すると言っているのかしら?)
『強制的に見習い騎士待遇で騎士団の鍛錬に放り込んで、オレが毎日、厳しくしごいて性根をたたき直してやろうか!』
あの時はいくら何でも無理があると、冗談だと受け流していたけど。ルドヴィクお兄様的にはかなり本気だったようだ。
「学園を卒業したら、王立騎士団の入団試験を受けろ! 何年かかっても必ず合格しろ、クレマン!」
王国でも選りすぐりのエリート騎士が集まる、王立騎士団の試験は難関中の難関である。
合格したければお兄様のように、子供の頃から騎士になるための教育を受けているか。……あるいは学園で騎士課を専攻した者でなければ、書類審査で確実に落とされる。
あまりにも非現実的すぎる。
「そんな……お兄様! いくら何でも、無茶だわ!」
(普段は驚くほど聡明で賢いお兄様は……時々、子供のような我がままを言うのよね……)
兄の乱暴な提案に、それまでの重々しい緊張感を忘れて、思わず私は笑ってしまった。
「それは……」
私の決断をすべて受け入れるつもりだったクレマンも、さすがに王立騎士団入りは、現実的ではないと口を開こうとするが。
……そこで少しでも反論すれば、妹を溺愛する兄ルドヴィクが烈火のごとく怒り狂うと予想でき。
クレマンは複雑な表情を浮かべて言いよどむ。
「お兄様、さすがにそれは無理でしょう? それに何年も待たされたら、私……嫁ぎ遅れてしまうわ」
私のために腹を立てているお兄様をなだめていると……次はお父様が提案した。
「それなら……下級文官の試験を受けてはどうだろう?」
これには、顔に?マークを浮かべたオルドリッジ子爵様が、お父様に聞き返した。
「下級……文官…? ですか??」
私のお父様以外、その場にいた全員の顔にも?マークが浮かんでいる。
お父様はルドヴィクお兄様とは性格や外見の特徴が真逆の、知的で物静かなイメージの人なのに。
……さすが親子と言うべきか。お兄様に続き、お父様まで突拍子もないことを言い出した。
「お父様、それはどういった考えで、おっしゃられているのですか?」
首を傾げて私がたずねると。隣に座るお父様は私の手をトンッ、トンッ、とたたき。するどい視線を和ませる。
「ふふふっ……それはだね、ミレイユ」
お父様は名案を思いついたらしく、ニコニコと笑った。




