20話 オルドリッジ子爵家とファーロウ家
学園で大きな騒ぎをおこしてしまったことを、私はその日のうちに両親へ報告した。
クレマンも私と同じく学園で起きたことと、これまで隠してきたパトリシアの秘密を両親に打ち明けたらしく。その翌々日にオルドリッジ子爵家から、両家で話し合いをしたいと手紙が届く。
「クレマンが多大なご迷惑をおかけして、申し訳ない!」
ファーロウ家へ訪れた、オルドリッジ子爵夫妻とクレマンの三人は最初に丁寧な謝罪をした。
その場にいた両親と学園を休んだ私。……そして心配してかけつけたルドヴィクお兄様の四人で謝罪を受け入れる。
「私も娘から話を聞き、戸惑っています。それでパトリシア嬢は今後、どうされるか決まったのですかな?」
私のお父様は内心では激怒していたけど。国王陛下の有能な側近らしく少しも心情を表には出さず、淡々とオルドリッジ子爵にたずねた。
「ええ。クレマンの報告を聞き、義兄はすぐに医師の診察を受けさせて。パトリシアが妊娠していることがわかったので、一度は婚約破棄をしましたが。コッドソール伯爵家のシャルル卿と、なるべく早く結婚させるとのことです」
私のお父様とは反対に、オルドリッジ子爵は不快な心情を隠そうとせず、表情に出して顔をしかめた。
「では学園でパトリシア嬢とミレイユが、今後は顔を合わせることは無いということですか?」
「パトリシアの両親はすでに退学の手続きをしています」
「そうですか……」
お父様は『まぁ、当然そうなるだろう』と大きくうなずく。
「……」
(ああ、良かった! あのパトリシア嬢と二度と会わなくて済むのね)
ずっとうつむいたまま、私はお父様とオルドリッジ子爵の話を聞いていたが。ホッと胸をなでおろし、顔を上げると……クレマンと目が合った。
以前ならニコリと微笑み合っていたところだけど。今日の二人はお互い顔を強張らせた。
お互い気まずくて今日は会ってから、ほとんど話をしていない。それでもクレマンの頬が赤く腫れていることに気づき、驚いてたずねてみると。
……なんと、父親のオルドリッジ子爵に殴られたそうだ。
オルドリッジ子爵は以前から我がままなパトリシア嬢のことを、良く思ってはいなかったらしく。クレマンが彼女に不用意に近づき、騒ぎに巻き込まれたことを叱責したそうだ。
「それで……このような問題を引き起こしたクレマンと、ミレイユ嬢の婚約についてですが。意見をお聞かせ願いたいのです」
パトリシア嬢がいなくなると、ホッ… と胸をなでおろしていたけど。
いきなり本題に入ったオルドリッジ子爵の言葉で……私の心臓がドクンッ! と跳ねた。




