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従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。  作者: みみぢあん


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19話 真実


 私を傷つけようと血迷ったパトリシア嬢は、お腹の子の父親はクレマンだと大声で叫んだ。

 そんなパトリシア嬢に、クレマンはこれまで私が見たことのない冷ややかな態度で、軽蔑の眼差しを向ける。



「ねぇ、クレマン! 私の言うことなら、何でも聞くと言ってくれたでしょう⁉」


 誇りを傷つけられたクレマンの怒りを感じ取ったパトリシア嬢は、少し前までの強気な態度が一変し、不安そうに瞳を揺らしている。


「……もう、何も言うなパトリシア」

「嫌よ、クレマン! ミレイユなんかにあなたを渡さない!」

「僕はミレイユのモノだ。君のモノだったことは無い」

「ひどいわ、クレマン!」


 自分の上着の袖を掴んで懇願するパトリシア嬢を、クレマンが睨みつけた。


「君こそ僕を侮辱するような嘘しか言えないのなら、口を閉じていろ!」

「そんな……っ!」


「君の妊娠した身体を気づかい。僕はずっと君の我がままに耐えて来たけど。僕を侮辱するような嘘をつかれてまで、君を庇う気はない」


 クレマンはパトリシア嬢の嘘が許せず、ついに見切りをつけることにしたらしい。

 

「待って、クレマン! あなたを愛しているの。あなたも私を愛しているでしょう?」 

「その話はずっと前に終わらせたはずだ。……君はそうやって嘘を重ねて、僕をまた侮辱する気か⁉」


「私……そんなつもりは……」


 クレマンはパトリシア嬢から視線をそらした。

 パトリシア嬢は今までのように甘えようと、クレマンの腕に抱き付こうとするが。クレマンは身体を引きパトリシア嬢の手を振り払う。


 クレマンは愛情だけではなく。パトリシア嬢の存在自体を拒絶した。



 衝撃を受けて混乱し。私の頭はいっぱいになり身体をネリーに支えられたまま、呆然と二人のやり取りを見ていた。


「……どういうことなの?」

(パトリシア嬢が嘘をついていた。その嘘がクレマンを傷つけた? それはつまり……パトリシア嬢のお腹の子は、ク……クレマンの子ではないの⁉ それなら誰の子なの⁉ 浮気は……? クレマンは浮気をしていないの?)


 混乱する私と、不意に振り向いたクレマンと目が合った。


「ミレイユ……さっきの話だけど。パトリシアの妊娠をなぜ君が知っているんだ?」


「……ああ。それは……あの、ルドヴィクお兄様に聞いたの」

「ルドヴィク卿に⁉」


 この騒ぎにはまるで関係が無さそうな、思わぬ人物の名前を聞きクレマンは驚いた。

 私はおずおずと口を開いた。


 ルドヴィクお兄様が『淑女のミレイユの耳には、あまり入れたくない話なのだが』……と私には話しにくそうにしていたように。

 本来なら私も、こんな話題は絶対に口に出したくなかった。


「お兄様たち、王国騎士団の騎士たちが……王宮舞踏会で淫らな行為をしていたパトリシア嬢とシャルル卿を見つけて」

「王、王宮舞踏会で⁉」


「ええ。それでパトリシア嬢が妊娠していてもおかしくないと。ルドヴィクお兄様はそう言っていたわ」


 本当はパトリシア嬢が実際に妊娠しているかまでは、お兄様も知らなかったけれど。

 私はお兄様に聞いた話を盛りに盛ったから。悪戯が見つかった子供のように、恥かしくなった。


(私は腹をたてていたから。パトリシア嬢を困らせようと、話を大きくして言っただけで。……それが実際にパトリシア嬢が、妊娠していたなんて!)


 私の話を聞き、クレマンの顔色が真っ青になった。


「王国騎士団の騎士たちまで……知っているのか? ……なんてことだ」


 無理もない。

 ずっとパトリシア嬢とクレマンだけの秘密だと思っていたことが。すでに複数の他人が知っているのだと聞き、クレマンは事の重大さにようやく気付いたのだろう。


 秘密を知っているのが、職務に忠実で口の堅い騎士たちだからこそ、まだ醜聞にならずに済んでいるのだ。

  

「私も……昨日、お兄様に聞いたばかりなの。クレマンはそのことを知っていると思っていたわ」


「僕は知らなかったよ!」 


 私の言葉を強く否定したクレマンは、自分の従妹がそれほどふしだらな娘だとは、本当に知らなかったらしい。

 同類だと見られるのが嫌なのか、パトリシア嬢の手が届かない位置まで離れた。


「違うわ、クレマン! ミレイユは嘘をついているのよ! あんな話、違うわ!」


 再びパトリシアが騒ぎ出すが。クレマンはパトリシア嬢を無視して、私との話を続ける。


「ごめんよ、ミレイユ……こんなことに巻き込んだりして。僕が浅はかだったよ」

「……クレマン、あなた」


「今日はこれで失礼するよ。今からパトリシアのご両親に、このことを伝えなければいけないから。本当にごめんミレイユ……ごめん!」


 クレマンは悔しそうに、何度も私に謝り。パトリシア嬢を引きずるように食堂を去ってゆく。



 残された私に友人たちがいっせいに駆け寄り慰めてくれる。友人以外の女の子たちも、一緒に慰めてくれる。


 そんな私たちの姿を、男子学園生たちは興味津々で眺めていた。


「……ああ」

(ずっと我慢してきたから、少しも怒りをおさえられなかった! きっと、今日のことは大きな醜聞になるわ)


 私も早くこのことを、両親に報告しないといけない。お父様やお母様、ルドヴィクお兄様に。きっと……たくさん迷惑をかけてしまう!


 私は自分の衝動的な行動を恥じて、深く後悔する。





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