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従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。  作者: みみぢあん


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2話 婚約者


 学園の正門前の道に、学園生たちの自宅から迎えに来た馬車が、ずらりと並んで待っている。その馬車に乗るために、学園生たちは最後の講義が終るといっせいに正門へと向かう。


 私も友人のネリーと一緒に、迎えに来た馬車へと向かう学園生たちの群れに加わる。正門まで歩きながら、ネリーと二人でぽつぽつと話をした。


「私たちの社交界デビューを飾った舞踏会で、叔母様にクレマンを紹介された時のことが、遠い昔のように感じるわ。あれからまだ、半年しか過ぎていないのが不思議なぐらい」

(久しぶりにクレマンから昼食に誘われたから。たくさん話ができると、楽しみにしていたのに。彼には裏切られたわ)


 昼食を一緒に取る約束を破られ。……結局、最後までクレマンは食堂へ来なかった。

 そのことを思い出したら落ち込み。私はハァ―――ッ…… と陰気な長いため息をついた。


「本当にね。婚約した時はすごくミレイユが、羨ましいと思っていたけれど。好きな人が出来ると、こんなに大変なのね?」


 これから婚約者を見つける予定のネリーも、ハァ―――ッ…… とため息をつく。


「うん。私も想像していたのと、ぜんぜん違って……本当に嫌になるわ」



 同じ学園に在籍していても男女で学ぶ内容が違い、講義を受ける学舎も違う。そんな事情から、私とクレマンは叔母様に紹介されるまで、話したことも会ったこともなかった。



『初……初めまして、ミレイユ嬢! オルドリッジ子爵家の長男クレマンです』


 茶色よりも赤みが強く温かみのある褐色の瞳に、色素の薄い柔らかそうな砂色の髪を、スッキリとうなじで切りそろえたクレマンの容姿は。派手さはないけど、地味と言う訳でもなく。

 優しい性格が顔に出ていて、柔らかな雰囲気を漂わせている。


 スラリと高い身長も考慮に入れて、私が感じたクレマンの第一印象は……”すごく女性に人気がありそうな容姿”をしていた。


『あ、初めましてファーロウ宮廷伯の長女ミレイユと申します』

『早速ですが……ミ、ミレイユ嬢、ダンスを踊って頂けますか……?』

『はい、私でよろしければ!』


 私は初対面の相手と踊るのが初めてだったから。ガチガチに緊張して何度もクレマンの足を踏んでしまった。


 クレマンも私と同じですごく緊張していたらしく。私にあれだけ足を踏まれたのに、クレマンは気分を害すこともなく。

 苦笑いを浮かべながら……『正しいステップで踊ることに夢中で、僕はそれどころではなかったよ』と言った。


 クレマンのそんな正直で飾らない態度に、私は好感を持った。ダンスが終わった後もクレマンのことを知りたくて、舞踏会の間じゅう二人で一緒に過した。 

 

 舞踏会が終わっても、私はクレマンと学園で待ち合わせて話すようになり。私が恋に落ちるまで、そんなに時間はかからなかった。


 ──そしてオルドリッジ子爵家から求婚状が届き。ファーロウ家の庭でクレマンに求婚された。



『ミレイユ嬢、僕と結婚して下さい』


 ファーロウ家は領地を所有していない。そのかわり国王陛下の側近を務める宮廷伯のお父様と、縁を紡ぎたがっている貴族は多い。クレマンのオルドリッジ子爵家もそんな貴族家の一つだけど。


 でもオルドリッジ子爵家は肥沃な領地を持ちとても裕福だから。探せば私よりもっと、子爵家に相応しい令嬢はたくさんいる。


『あの、クレマンは……私で良いの?』


『僕は君が良いんだ。君も同じ気持ちだと思っていたけど……違うの?』

『いいえ、違わないわ!』

『……結婚してくれる?』

『ええ、あなたと結婚するわ』


 二人の出会いから婚約まで。

 叔母様の紹介で知り合ったおかげで、何の問題も無くスムーズに縁談が進んだ。


「……」

(あまりにも何もかもが順調だったから、安心していたけれど。こんなことになるなんて……) 


 最近は特にクレマンが従妹のパトリシアと二人で、コソコソと学園の片すみで密会していると。そんな噂話を毎日のように、友人たちから聞かされている。


 友人たちや、学園に在籍する全然知らない人たちまでも、クレマンの浮気を疑い始めていた。


「あ~あ……これで私は婚約者を奪われた、魅力が無い惨めな娘だと言われてしまうわね」


「ミレイユ……」

 友人のネリーが、慰めるように私の背中を撫でた。


「……困ったわね」

(なぜ私との約束を破ったのかを、クレマンに問いただしたいけれど。会う約束をしても、またその約束を破られたらと思うと。……気軽に彼と会うのが怖くなって来たわ)


 食堂で私が婚約者のクレマンに約束を破られ、待ちぼうけを喰らった姿を、たくさんの学園生たちに見られてしまっている。


 これ以上、学園で惨めな姿はさらしたくないけど。クレマンの行動が私を裏切り、他人の興味を引くようなことばかりするから。

 私自身に落ち度は無くても、不可抗力でどんどん貶められて行く。




「あっ! ねぇ、ミレイユ」

「……んん?」


 うつむきながらトボトボと歩いていると、ネリーに腕をつかまれ顔を上げた。


 私を迎えに来たファーロウ家の馬車の前で、スラリと背の高い後ろ姿が視界に飛び込んで来た。


「クレマン……」








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