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第四の魔術師 〜魔術を拒む異端者〜  作者: 第四
第一章 学院編
6/8

第五話 観測者

前話の第四話において、技名だけ叫ぶのを「無詠唱」としていたのですが、正しくは「詠唱破棄」のようでした。誤記があり、申し訳ありません。


※この作品には残酷な描写やシリアスな展開があります。

魔術、異世界、戦闘などの要素を含むため、苦手な方はご注意ください。

本作はプロローグから主人公の成長と、三つの世界を揺るがす事件を描いていきます。

どうぞ最後までお付き合いください。


「いや、でもさっき明らかに変――」


「不具合だと言っただろ。これ以上言わせるな。」

担任は冷たくあしらう。


その態度に、みんな押し黙ってしまう。

「魔力測定も終わったことだし、そろそろ帰ろうか。」


僕たちは誰も目を合わせなかった。


あれは何だったんだ…


「起立、礼――」


「さようなら。」


僕はきっと、これから奇異の目に晒されることだろう。

はぁ、憂鬱だ。




「……ゼイル君。」


一人の少女は電話をかける。


「…なんだ?」

相変わらずの怒気をはらんだかのような声に少女は張りつめる。


「あ、お父様?お久しぶりです。

…いえ、ご忠告を授かるようなことは何も。

今回は報告です。私のクラスメート…

ゼイル=レグナードについて。

魔力測定機での判定…

放っておくと、何かが起こる気がします。」


「そうか。

なら、頭の念頭に置いておくとする。

話は終わりか?」


「はい、お父様。」


電話を切ろうとするその手は僅かに震える。

その目に映るのは畏怖か渇望か…

父に認められたいという欲が、

胸の奥底で響く。





今日も今日とて、僕は西に向かって歩き出す。


ここには僕の心を和らげる何かがある。

それはきっとこの領土に結界魔法が施されているからだけではない。


「レオニール=アルシェイド…」


彼女は僕を見て、“あのとき”と同じ笑みを浮かべていた。

それは懐かしさを思わせる顔だった。


僕に何か感じ取ったか?


それに、彼女にはどんな力があるのだろう?


彼女だけではない。他の公爵だってそうだ。

あれだけの魔力…

きっと世界を揺るがす力だ。


いつか交えることはあるのだろうか…


ん?


この匂い…

今日は生姜焼きか。

なぜだろう…胸のざわめきが収まらない。

昨日の余韻がまだ…


母に今日のこと、なんと話そうか…




「……はい。

今回の“実験”では、恐らく彼が主な標的(ターゲット)となります。

情報が集まり次第、随時報告いたします。失礼します。」



IV(フォース)…か。」


昔見た資料にそんなのがあった気がする。


確か、それに該当する者は世界を震撼させ変革をもたらすだとか…


馬鹿馬鹿しい。

そんなのあってたまるか。

あるわけがない。


…あったとして、もう遅すぎる。

だったら、なんで“あのとき”…


……

…クソッ

なんで、僕だけ…



駄目だ、落ち着け…

ありもしないことを考えても仕方ない。


常に冷静にいないと、この仕事は務まらないんだから…


そうだ。

あの学校にいるのはただ、仕事のため。

私情を挟んでは――




「――徐々に慣れていけば良いんだから。」


「…!そうだね。ありがとう。」


「…って、――」



……クソッ



「おかえりなさいませ、アサーシ坊っちゃま。」


ミハイル=エーレンシュタイン侯爵。

僕は今、家に居候…というか住まわせてもらっている。

随分と広々とした屋敷だ。


本来であれば“この世界”に落ちてきた時点でただでは済まされなかった。

リヒト先生とゼルフィア先生の説得、エーデル校長の恩情、そしてミハイル侯爵の提案がなければきっと今頃…


「本日はもうご夕飯の準備ができておりますので、早急の手洗いをお願いいたしますね。」


「はい。」


(ミハイル侯爵は僕をどう思ってるんだ?)


そう考えるようになったのは、

確かあの日――




「―――ますかー!」


「……?」


誰かが身体を揺らしている。この声…どこかで聞き覚えが…


「生きてましたか。」


「何の話だ?」


「…名前を」


名前…みんなから呼ばれていたのは――


「…アサーシ」


「…それは」


「やはり。」


この人は知っている…?


「ゼルフィア。君、本当は分かってたんじゃないですか?」


「...!」


「理論家の君が冷静さを欠く。」


「…違う。」


「…無意識に自分を否定して、そうじゃないと思い込みたかった。」



「違う!」



「まぁまぁ落ち着いてくださいよ。

焦ったってしょうがないでしょう。」



「....あなた」

気づけば身体が動いていた。



「ん?どうしたの?」



この人を知っている気がする。

「…似てる。」


「何のことだ?」


「...分からない。けど、そう思った。」

そう。はっきりとは分からないのだ。



「…とりあえずエーデル校長に報告しないと――」


「まて!そうしたら、アサーシはどうなる?」


「でも、いつかはバレるんですよ?

隠してたって、問題を先送りにするだけです。」


「だからって…」


処遇について揉めてるらしい。


「ごめん、アサーシ。

俺たちじゃ力不足かもしれん。」


死ぬのか…?


「けど、信じていてください!

きっとうまくいきます。」


ゼルフィアという人におんぶしてもらいながら連れて行かれる。

(どこに行くんだ?)


「着いたな。」


この感覚…なんだ?寒気がする。

身震いが止まらない。かつて、ここに――


「じゃあ校長室に行きましょうか。」


一つひとつ階段を登っていく。

まるで“あの世”へ迫り寄っているようだ。


ゼルフィアさんがノックをする。

「失礼します。」

「失礼します。」


「ん?また君たちか。意外に戻るのが早いの〜」


その人は声色とは裏腹にドスの効いた目つきを睨ませる。

その気迫に思わず尻もちをついてしまう。


「気をつけてな。

それで?話…というよりお願いがあるのじゃろ?」


「その通りです、エーデル校長。」


校長…


「単刀直入に言います。

この子、アサーシっていうんです。

処分は勘弁してもらえませんか?」


「私からもお願い致します。」

二人とも深々と頭を下げる。


「…そう来たか。

まぁそうじゃろうな。

…一旦、四大公爵に集まってもらおうか。

ミハイル侯爵もな。

その方が後で揉めなくて済むじゃろう。」


「分かりました。直ちに連絡して参ります。」


四大公爵…物々しい響きだ。


〜数分後〜


この場の空気は凍りついていた。


「失礼します。」


公爵とやらが来たようだ。


…!?

膝から崩れ落ちそうになる。

なんて魔力…


入った瞬間からこの場を制しているかのようだ。


「来たか。さっそく席に座ってくれたまえ。」


校長の催促に公爵たちは従う。

あともう一人来るはずだが…


「リヒト=アーウェルからの連絡でもう知っているかと思うが、

これから謎の落下少年アサーシの処遇を決する。

くれぐれも悔いのない選択を。」


いよいよ僕の生死が決まる…

視界の隅から緊迫が押し寄せる。

手の震えが止まらない。


「よろしいですか?」

黒髪の女性が手を挙げる。


「私は生かしておいて良いかと思います。この子だって私たちを襲撃しようと落ちてきたと決まったわけではないですし。」

その言葉に胸が痛む。


「まぁ確かにのぉ。他に意見はあるかね?」


「では、この私が。」

次はエルフに似た顔立ちの女性のようだ。


「私はすぐにでも処罰すべきと考えます。

感じるのです。神はこの子を赦すべきではないと――」


理ではなく、啓示を信じる類か…


「そうですか。では、アサーシを処刑すべきとのお考えですな。それではあとのお二人、何か意見はあるかね?」


「では俺が。」

鋭い眼光だ。赤黒い魔力を放っている。


「処刑すべきだ。

こういう輩は大概見逃すとろくなことがない。

迷う理由がわからんな。」


「うむ。もっともな意見だ。では最後にゼルフィア、君はどう考える?」


ゼルフィアさん…


「俺は…生かしておくべきだと考えます。襲撃者だと判断するにもまだ証拠が不十分すぎますし、何よりこいつはまだ15です。その年の少年が単身で乗り込んでくるとも思えない。もし何かあれば、俺が責任を――」


「…なるほどのぉ〜

確かにそれも一理ある。

だが、なぜ15歳だと断定できた?

知っている口ぶりだったが。」


校長の眉間が一層険しくなる。

室内に緊張が走る。


「そ、それは…その」


「ゼルフィア、まさか君――」


ゼルフィアさん!

思わず手が伸びそうになる。



――瞬間、突如として扉が開かれる。

「失礼します。」



「遅れてしまい、申し訳ない。

ミハイル=エーレンシュタイン、ただいま参りました。」


この人がミハイル侯爵…

助かった…のか?


いや、待て。なんで今焦ってるんだ?

ゼルフィアさんが何かを抱えているのは見て取れる。

だが、それが何かは分からないはず。


…さっきから感じる違和感。

どこか初めてじゃない感覚。

そしてこの焦燥感。


点と点が繋がりそうな予感がする。


あと何か一つ糸口があれば…


「お〜来なさったか。さぁ、座りたまえ。」


ミハイル侯爵が腰掛ける。

校長は少し苛立っている様子だ。


「それで、ミハイル侯爵はどう考える?

リヒト=アーウェルの連絡は見たじゃろう?」



「ええ。私は処刑すべきではないと考えます。理由は二点。

一点目は、今処刑するのは時期尚早であること。もう少し様子見してからでよろしいかと。

二点目は、アサーシをこちら側に引き入れられれば、

“どこから落ちてきたのか”

“落ちる前に何をしていたのか”など、

有益な情報を得られる可能性があること。これらの情報が得られれば真相に一歩近づくことでしょう。」



「…納得した。確かにその通りじゃのう。

では、アサーシの居住地はどうしようかのう?わしとしては、このまま学校で預けても構わないが。」


――瞬間、身体が“過去”を思い出したかのように拒絶する。


「それでは少々窮屈でしょう。

このくらいの歳の子には年相応の暮らしをして欲しい。だから、誰かの家に預けるのはどうですか?」


誰かの家?


「私の家で構いません。」

ミハイル侯爵が先導する。


「処刑しない方針へ促したのは私ですしね。」


なんと思慮深い…

――信じても、いいのか?


「うむ。結論が出たな。

それでは、アサーシの処遇は

“保留”そして、

“居住地はミハイル=エーレンシュタイン家”

…構わんかね?」


賛成多数でこの会議は終結した。

正直、ミハイル侯爵の独壇場という感じだった。

遺恨の残る者もいるようだが…




――そうだ。

ミハイル侯爵が救ってくれたんだ。

行く当てのない僕を。


せめて、恩義を示さないとな。


僕は侯爵の部屋まで伺うことにした。

…部屋の前まで来た時だった。

聞こえてくる。


「アサーシが駒として機能すれば、必ずや――」


……



僕は自室に戻り床につく。

今日は悪夢でも見そうだ。


……

………



「被験体 セ――

識別番号 A――

これより、第一次…を開始する。」


これは…


思わず吐き気を催す。

理性が押し勝ち、既のところで留まる。


また、僕は…


――瞬間、床が消える。


再び、あの地に――



「――キョ」


何か聞こえる…


「――ホケキョ」

聞いたことのある鳴き声だ。


「――ホーホケキョ」


うぐいすのさえずりに身を委ね、

上体を起こす。


「今日もまた、――」





「ゼイル〜いってらっしゃい!」


「うん。」


これからの学校生活を想像する。


「今日もまた、――」




「――あの学校に」

「――あの学校に」




「行ってきます。」


僕は朝陽に向かって歩き出す。

空に手をかざすと、木漏れ日のような陽光が心を見透かすように照らしていた。



――窓の外を眺める。

眩しさに目を細める。

それが、本物の朝かどうかも分からぬまま。


これから少し時間が取れそうなので、更新頻度を上げられたらと思っています。

物語が少しずつ動き出してきました。

まだ未熟ですが、もしよろしければ感想などいただけるととても励みになります。

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