第二十話 受け継がれる苦悩
寂しさがこみ上げてきた。
リュネア=クロノス。どこかで聞いた名前だ。
ここ最近の記憶じゃない。
そう、確かあれは――
セレニアたちに目が行った。
「このチキンぷるぷるで美味しい!」
「も〜レイブン。そんなに口元にソースつけて…はい。これで拭うといいのよ」
セレニアの懐からティッシュが現れた。
…きっちりしてるな。
僕も普段から持ち歩いてはいる。
が、初等生の頃から出来ていたかと言うとそうでもない。
むしろ毎度の如く忘れて、しょっちゅう先生から『愛の制裁』と言う名のお叱りを受けていたぐらいだ。
「ふふ」
エルフィナは、まるで仲睦まじい親子の会話を見守る保護者だった。
これだとますますセレニアが母親に見えてくる。
彼女と籍を入れた男性は、きっと尻に敷かれることだろう。
…考えたくもないな。
僕は束縛が嫌いなんだ。
いやまぁ尻に敷かれること=束縛ではないか。
何と言うか…主導権を握られるっていうの?
おぉ!それだ。
僕はパートナーに主導権を握られるのが趣味じゃない。
かといって、僕が主導権を握るような亭主関白なクソ野郎になるつもりもない。
目指すのはあくまで『対等』
同じ立場に立って、互いを思いやれる関係が望ましい。
だが、現実は非情だ。
神のいたずらか、今まで出会ってきた女の子は軒並み高圧的、もしくは陰湿的だった。
まともな女の子と出会った覚えがない。
その点、高等生になってから出会った人たちはおおよそ好印象だ。
冷静になって考えてみた。
過去――僕を哀れむ視線が脳裏に焼き付いた。
…こうやって人を下げる考えをしてる時点で、あの人たちと同類なのかもな。
カラン――
スプーンがパフェグラスで踊った。
みぞおち辺りにチャコールローブ越しに左手が添えられた。
「ふぅ〜美味しかった〜」
満足げな仕草の反動で、彼の背中が仰け反った。
ローブの陰に隠れていた目元が露わになった。
この目…
弓なりに細まった目は入学式の鋭い眼光とは異なり、三日月のように柔和に解けていた。
元々のイメージと少し…いやかなり違ったが、間違いない。
アルディウス公爵だ。
紙袋から浮き彫りの三つのメロンパンで確信していた。
そして、この顔立ちで確証に変わった。
さて、問題はここからどう切り出すか。変に勘繰られては面倒だ。
かといって、何も仕掛けないと会話の発展性が皆無なのも事実。
どうしたものか…
「ご注文はいかが致しましょうか?」
リュネアさんがメモ帳とボールペンで構えた。
準備はバッチリのようだ。
「え〜っと、じゃあ僕は
・ルクスブレッド
・魔導ジャム
・ネモフィラティー
でお願いします」
この三つで合計4ルクス。この店の中でもかなり安めの商品を頼んだ。
個人的な推しポイントはルクスブレッド。パンは腹持ちが悪いが、即効性がある。それに美味しい。
それが1ルクスときたものだ。頼まない選択肢なんて僕の辞書にはない。
…米よりも体に悪いという側面は否めないが。
「かしこまりました」
ペンが忙しなく働く。
僕の注文をオウム返しに繰り返された。
「次は――どうする?セリアさん行く?」
「(――と、まぁこんな感じだ。出来そうか?)」
「(…マジで言ってんの?しかもこれが最後って――)」
「…?あ、ああ…えっと、リオンがいいなら私が注文するね」
隣に座るセリアさんの視線が右奥のテーブル席に釘付けになっていた。
僕の視線もセリアさんの延長線上に伸びた。
彼女も彼らの会話に興味があるのだろうか?
しかし雑踏の中聞いている限りだと、何を言ってるのかさっぱりだ。
僕は次第に傾ける耳を畳んだ。
いくら推測しようとも彼らの思惑が読み取れるわけがない。エスパーじゃないんだから。
カタッ――
髪が僅かに舞った。
ん?今の誰の音だ?
死角の奥で丸椅子の微振動が聞こえた。
「私は…そうだな。
・魔獣フィレの軽炙り
・魔導ラテ
でお願いします」
暫しの熟考の末、結論が弾き出された。
合計で7ルクスか。人の食事にまでとやかく言うつもりはない。
増してや、セリアさんはバイトをしている。れっきとした『自分で稼いだお金』だ。
それをどう使おうが、僕に咎める権利はない。
しかし…
一食でその値段はやりすぎじゃないか?
流石に限度ってものが――
「はい、はい!定員さん!俺は
・白金鶏のコンフィサンド
・魔導コンソメスープ
・青花蜜のレアチーズ
でお願いします!」
…合計9ルクス。後の買い物に備えて節約しよう的な発言をしてた張本人がこれかよ。
どないなっとんねん。
おっと、また方言が漏れてしまった。
どうやら、衝撃的なことが重なると方言が出やすくなるらしい。
気をつけねば…
「かしこまりました。繰り返します。魔獣フィレの――」
殴り書きするペンの音が穏やかになった。
セリアさんたちの注文が繰り返された後、僕を含めた三人の注文が通して繰り返された。
こんなに何回もやる必要があるのか?という疑問はあるが、これで注文通りの品が届くというのなら甘んじて受け入れよう。
僕は寛大なんだ(主観)
「それでは、ご注文の品が出来上がるまで少々お待ちください」
左手で青髪を耳にかけながら、厨房に姿を消そうとした。
鼓動が高鳴った。
恋愛的な高鳴りではない。
これは…そう。既視感だ。
この横顔には見覚えがある。
幼少期――
そして今、何度も目を奪われた睫毛の長さ。
只々感じる。
『綺麗だ』
「待って…」
温かみを感じる彼女を、無意識に求めてしまう。伸ばした指先が厨房の熱に当てられた。
「どうしたの?ゼイル」
名前…覚えててくれたのか。
そういや登校初日に名前言ってたっけ?
だがそれより――
「Zeil, what do you want to be proud of in the future?」
背中を撫でる、安堵の手つき。
白銀の髪から漏れる麗らかな声色は僕を優しくつつみ込んでくれた。
――彼女に抱いてしまった歪な感情に戦慄していた。
熱を帯びた皮膚が冷や汗を蒸発させた。
同級生に母親を重ねる…リゼリアさん以来の状況に当惑が隠せない。
しかも、今回は違う。
より鮮明な面影が、彼女に落ちている。
口調も、眼差しも――見覚えしかなかった。
青の色付きが視界を占め始めた。
リュネアさん…気になる人だ。
恋愛的な意味じゃなく、純粋な探究心に近いかも知れない。
『この人を知ってみたい』という、僕の抜け切らない童心――
この瞬間、彼女への興味に拍車がかかった。
「(店員がタメ口…)」
首裏の毛が一気に逆立った。
チャコールローブから怒気混じりの声調が鼓膜に流し込まれた。
確かにそこも気になる箇所ではある。が、正直それどころではなかった(自己中)
なんとか切り抜けられる策はないか…
――甘党
その言葉が過った。
今までのアルディウス公爵の行動から、間違いなくそれだ。
なら――
「あの…これなんか美味しそうですよ?試してみては?」
同じ姿勢のまま隣の丸椅子に重点移動し、『魔導クリームブリュレ』に指差した。
「ふむ。美味そうだな…(エルシアに『食べ過ぎないように』と言われているが…)」
意図せず僕の口角が綻びた。
黄色い瞳孔。畏怖の念すら浮かぶ彼の瞳は、今だけ『家族の大黒柱』だった。
「魔導クリームブリュレを一つ頂けるだろうか?」
彼の声にはもう、苛立ちは消え去っていた。むしろ新たなスイーツとの出会いに胸を躍らせている様子だ。
その証拠に鼻歌を歌っている。
曲調的に古めな匂いがする。
この喫茶店の雰囲気と絶妙にマッチしており、耳触りが良かった。
「かしこまりました」
休暇に入ったペンが調子を戻すのに手間取ったらしく、何度も同じ手の動きを反復していた。
…純粋にインク切れな気もするが。
「それで?」
「え」
左肘を机に置きながら、頬机で僕の瞳を凝視された。
慧眼の瞳の前に隠し事は出来そうにない。
「俺に聞きたいことがあったんだろ?聞かせてみろ」
いかにも公爵らしい口調で催促される。その態度に不思議と嫌悪は抱かなかった。
『父親』としての一面を見たからだろうか…今も、これからもアルディウス公爵を憎みそうにないと感じてしまう。
「えぇーっと、じゃあまず聞きます。…甘党ですか?」
目線が迷子になりながらも、恐る恐る
ジャブ程度に質問を飛ばした。
ここから徐々にギアを上げて、最終的にはボディーブローをかます所存だ。
…この威勢が続く限りは。
セリアさんたちは空気を変に壊さないように二人で会話を続けてくれている。こちらとしてもそれは有難い。
…いや、押し付けられてるか?
「…ああ。見ての通り俺は甘いものには目が無くてな。
幼少期から甘味絡みになると、度々問題を起こしていたくらいだ。
保育士の先生曰く『気性が荒い点が目立ちますが、素直で良い子です』なんだと。今は妻も出来て、多少丸くなったがな」
赤裸々に語るアルディウス公爵の姿はまるで少年のようで、無意識にヴァルドの面影を重ねた。
…やはり親子だ。
髪色は然ることながら、目鼻口の一つひとつのパーツが遺伝を感じさせる。
僕は今日、初めて公爵に人間らしさを感じた。
「奥さんはどんな人なんですか?」
「俺の妻か?名はエルシアと言ってな、俺が領主となってすぐに籍を入れた相手なんだ」
「エルシアさん…」
“領主になってすぐ”…と言っていたが、何歳から領主になれるのだろうか?
まず結婚年齢から考えてみよう。
この世界では二十歳となり、成人を迎えてから結婚出来るという法律になっている。
仮にアルディウス公爵が成人を迎えてすぐに結婚していたとしたら、二十歳程で領主となったことになるだろう。
確かめるように、顔の皺を追ってみる。
…手入れの行き届いた綺麗な肌だ。
少なくとも、中年のオッサンには見えない。
実年齢はおおよそ三十代前半〜後半辺りだろうか?
なまじ、若作り(失礼)してる人は実際より若く見えたりするからなぁ…
適当に直感が当たるのを祈るしかない。
「お子さんとはどうなんですか?先程手を焼かれていましたが」
頬を膨らませてなんとか持ち堪える。
ヴァルドのまん丸と瞠目したアホ面を思い出し、吹き出しそうになる。
駄目だ。公爵の前だぞ、僕。
「あぁ…子供とは――次男とは割と上手くやれてるんだ」
次男…ヴァルドのことか?
ヴァルドが次男なら…長男が居るのか。
聞く限り、何かしら蟠りがあるらしい。
他の家庭事情を詮索するのは良くないが、公爵ともなれば興味が勝ってしまう。
アルディウス公爵が、ある意味でヴァルドより手を焼く存在か…
どんな人だろうか?
ヴァルドと同系統というのもあり得るし、正反対な人柄もあり得るな。
是非とも話をしてみたい。
直感だが、長男さんとは話が合いそうな気がする。
「男兄弟以外にもお子さんはいらっしゃるのですか?」
「ああ。娘が一人いる。
より良い学校が他になかったから、中等生の頃からセレスティア中央魔術学院に通わせている。所謂、中学受験組だな」
娘…
同級生に、明確に赤髪だという人は居なかったな。
光の反射具合で絶妙に赤髪に見える人も居たが――
一人の少女を思い浮かべた。
「娘とは、長男と同じで上手くやれていないんだ。…嫌われているかも知れない」
寂寞とした顔つきには侘しさがこびりついていた。
娘さんは何歳ぐらいだろうか?
歳によってアルディウス公爵への娘さんの対応の納得感が変わってくる。
「娘さんは何歳なんですか?」
机に彫刻された丸い紋様を指先でなぞった。
少しデリケートな質問だろうが、好奇心には勝てず聞いてしまった。
「娘は…すまん。少しプライベートなところだからな。公爵として、守秘義務がある。悪いが他の質問にしてくれるか?」
「フッ」
馴染みのある嘲笑に、必死に抑える苛立ちが身体から溢れ出しそうになった。
…あくまで子供の戯言だ。リオン君も言ってたじゃないか。
しかし――
やはり一筋縄ではいかないか。
会話にこぎつけたらある程度素性が引き出せると思ったのだが、そうもいかないか。
あと聞けることと言ったら…
「分かりました。では、質問させていただきます。足元のメロンパンは自分用ですか?それとも家族用ですか?」
脳裏に痺れを感じた。
メロンパン行列に並んでいた時から気になっていた。
単なる甘党か、家族思いな甘党か…
どちらに転んでも不思議ではない。
「家族用――もっと言うと子どもたち用だ。一家揃って甘い物好きでな、どんなに機嫌が悪くても甘味を出せばさながら従順な子犬と化す。
…我ながら滑稽だな」
言葉とは裏腹に目尻を下げている。
諦めも清々しさも混じる面持ちだ。
どうやら家族思いな甘党だったようだ。
視界の隅で左拳を掲げるリオン君の様子が目に入った。
予想通りだったようだ。
左手を口元に当て、上品に笑うセリアさんの姿も視界に収めた。
こんな笑い方もするんだ…
「卑下することはないです。自身の特性を理解して適切な行動を心掛けている時点で、十分殊勝なことだと思います。まぁ上から目線で何言ってんだって話ですけど笑」
「ハハッ…そうだな」
黒い胸中に一滴の赤が滴った。
彼は一層柔らかな顔つきになった。
公爵…と大層な名前が付いてるから接しにくかったが、そのレッテルを取っ払って等身大で接すれば他の人と何ら変わらない。
公爵も一人の人間なのだ。
ほんと…先入観で物事を判断すると、損ばかりだ。
世の中そう言うことが多い。
「ゼイル」
額に熱を帯び始めた。
呼び捨てされた…
同級生にされるのとはまた違う…なんとも形容し難い思いだ。
「新学期当初、俺はお前を『ヴォルグラムの天秤にかけ』ようとした。…だが、どうやら早とちりだったらしい。勘繰ってしまったこと、申し訳ない」
深々と頭を垂れられた。
ローブが顔を覆い被さってしまった。
『ヴォルグラムの天秤にかける』?
聞いたことのない言葉だな。
慣用句か?
東部領では割と有名なのか?
「いえいえそんな…頭をあげて下さい」
頭と両手を必死に振る。
世間の目があるこの場で公爵に頭を下げさせるのは、流石に気が重い。
…アルディウス公爵だと気づいていない人が殆どだと思うが。
ツンッ、ツンッ――
右肩を人さし指で軽く叩かれた。
彼女に耳を預ける。
「(ゼイル…アルディウス公爵陛下に何したの?あの言葉を使われるって、相当だよ?)」
僕を案じるセリアさんの声が優しく鼓膜に響いた。
そんなにヤバいのか、僕。
もしかして、今日アルディウス公爵と会ってなかったら近日中に暗殺されてたか?
…今の御時世でそれはないか。
セリアさんは『家から牧場まで近い』的なことを言っていた。
そこから推察するに、セリアさんは南部領に住んでいると考えるのが自然だ。
そんなセリアさんが知っているとなると、あの慣用句はこの世界全土に波及しているのだろう。
あ、別にセリアさんが田舎者だと言うつもりはないぞ。何なら僕が田舎者まであるしな。
世間知らずなところが出てしまったな。
これ以上恥晒しにはなりたくない…
「(そろそろいい頃合いだ)」
「(え、今から?…分かったよ)」
例の如く右奥のテーブル席から気になる音の響きが聞こえてきた。詳細は分からないが、意味深な会話であることは確かだ。
「ネモフィラティーでお待ちの方〜?」
リュネアさんがお盆に飲み物を乗せて戻って来た。
体が火照ってきた。
母を彷彿とさせるネモフィラの香りに安心感を覚える。
「はい、僕です」
「では、お飲み物の説明をさせていただき――」
トンッ
右肩を掴むごつごつとした手が僅かに肩を揺らした。
馴染み深いオーラを感じ取り、思わず振り返る。
灰色のベストに身を通し、黒のパンツはベルトで留められている。
その上には黒灰のコートを羽織り、生地の裏には重厚な赤の布地が鮮烈に靡いている。
薄く黒い手袋がはめられており、左手をコートのポケットに突っ込んでいる。
全てを見通すかのような琥珀色の瞳は焦点が合っていない。
彼は僕ではなく――“別の何か”を見ていた。
口元まで伸びた、く澄んだ橙色の髪。
前髪は目元で分けられて尚、少し目にかかっている。襟足は…首が隠れるくらいの長さだ。
「右手を貸してくれるか?触れるだけでいい」
隠されていた左手が露わになった。
…どうやら両手に手袋をはめているらしい。
左手で手袋の先を掴み、生の右手が解放された。
「ちょっと待って!」
セリアさんが空間を切り裂いた。間に入った手は、今にも事切れそうな程震えていた。
「貴方…誰ですか?」
僕を守る強い眼差しが、彼女の性格を表していた。
襲撃の時もそうだったが、セリアさんは見た目に似合わず男勝りなところがある。
そういうところが、友達として誇らしいと思う。
「(あの方…悲しんでるのかしら?)」
右奥後方から同情した少女の声が届いた。
「すまない。今は…話せない」
“今は”?いつかは話せるときが来るのか?
「心配してくれてありがとう、セリアさん。でも、この人を信じてみるよ」
「…!どうして?」
悲しみに暮れた表情をする彼女に、心がぶれそうになる。
眉間には微々たる皺が寄っていた。
「…彼を見てると安心するんだ。不思議とね」
「…そう」
彼女を納得させられる言葉は、はっきり言って見つからない。何を言っても墓穴を掘ってしまうような気がする。
「ありがとう」
彼の言葉を受け取り、恐る恐る右手を差し出した。
安心するとは言っても、やはり少し怖いようだ。
手と手が触れ合った。
互いの体温が共有された。
手の感触が生々しく感じ取れた。
「『一度限り、俺を信じろ』」
脳に響く感覚があった。
魔力が流し込まれるのと同時に、彼の感情が濁流のように流れ込んだ。
痛み、後悔、執念、そして決意――
少しの間だったが、彼の壮絶な人生が読み取れた。
あれ?母と属性判定をしたとき、母の魔力と僕の魔力は拒絶し合ったはずだ。
それなのに自然と流れ込んで来た…
目の前の男性の異質さに全身の毛がそば立った。
「それじゃあ俺はこれで」
用事を済ませた男性がレジに振り返り、手の甲を見せながら颯爽と去っていった。
周囲の音が、一瞬遅れた。
何だったんだ…
「…」
右隣で黄色の瞳を眩しく瞬かせながらこちらを凝視している。
…やっぱり今の行動は怪しいかったかな?
手には男性の温度が未だに焦げ付いていた。
「ゼイル――」
アルディウス公爵の声には想像と違った音が孕んでいた。
彼の声は怒気というより、好奇心に近かった。
彼が発した言葉に、意味を咀嚼するのも忘れてしまう――
「レオニールの従者と知り合いか?」




