表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら劉禅だったので、諸葛亮に有給休暇を取らせます~MBA持ちの阿斗、関羽の孤立・張飛のパワハラ・孔明の過労死を組織改革で止める~  作者: 東雲 諒杏
第四部 関羽を死なせるな

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/72

第66話 烽火は消えなかった


呉の船団は、商船を装っていた。


船員は白い商人服。


武器は荷物の下。


一見すれば、塩や布を運ぶ普通の船である。


過去の登録証も持っている。


共同監査で認められた商人の名が並ぶ。


完璧に見えた。


だが、登録所の若い書記が気付いた。


「この者は、二年前に死んでおります」


名簿の中に、死者の名があった。


別の書記が、基本台帳を確認する。


死亡。


疫病。


家族へ補償済み。


その人物が、今、呉の船へ乗っていることになっている。


偽造である。


船を止める。


「積荷を確認します」


白衣の船員が笑った。


「共同登録を受けている」


「名簿に疑義があります」


「急ぎの荷だ」


「確認します」


呉の船員が周囲を見る。


烽火台。


守備兵。


川岸。


もう奇襲はできない。


先頭の男が手を上げた。


白衣の下から、短剣が現れた。


「警報!」


鐘が鳴る。


烽火台に火が入る。


呉兵が船から飛び出す。


登録所の守備兵と衝突する。


呉軍は、最初の烽火台を制圧した。


火を消す。


だが、山の上にある予備烽火台が信号を確認していた。


主烽火台から、定時信号が来ない。


予備烽火台が火を上げる。


次の烽火台。


その次。


長江沿いに、赤い火が連なる。


歴史では消されたはずの烽火が。


消えなかった。


【白衣渡江】


奇襲状態

解除


呉軍の偽装

露見


荊州全域への警報

成功


烽火台同時無力化

失敗


白衣渡江成功率

19% → 6%


最初の防衛線は機能した。


公安。


南郡。


江陵。


各城へ警報が届く。


守備兵が門を閉じる。


兵糧庫を封鎖。


商船を岸へ寄せる。


士仁から緊急報告。


《呉軍より降伏勧告が届いた》


《拒否した》


その文字を見た瞬間、俺は机へ手をついた。


士仁が。


歴史では呉へ降る男が。


拒否した。


続き。


《ただし、守備兵だけで長期間耐えることは困難》


《援軍または撤退命令を求める》


正しい報告である。


英雄的な言葉ではない。


現実的だ。


糜芳からも報告。


既に兵站職を引き継ぎ、成都へ移る途中だった。


《南郡へ戻る》


《私が残した倉庫と商人経路を説明できるのは、私です》


逃げてもよかった。


歴史どおりなら、呉へ降っていた。


それでも戻るという。


「危険です」


馬良が言った。


「ですが、本人の意思です」


俺は糜芳の能力画面を確認した。


糜芳


劉備への忠誠 89 → 94

関羽への信頼 12

荊州への責任感 62 → 88


離反危険度

9% → 2%


新規状態

【逃げる前に戻る】


人は変わる。


配置を変えただけではない。


辞めたいと言えた。


失敗を報告した。


関羽と争った。


それでも蜀を捨てなくて済んだ。


白衣渡江は失敗した。


少なくとも、完全な奇襲としては。


しかし呂蒙は、そこで止まる男ではなかった。


呉軍は白い衣を脱いだ。


軍旗を掲げる。


奇襲から、正式な軍事行動へ切り替えた。


長江から複数の部隊が進む。


登録所を制圧。


小さな砦を攻める。


周辺の民へ布告する。


《略奪を禁ず》


《蜀軍へ協力しない限り、民の財産を守る》


《関羽軍へ徴発された食料は、呉が補償する》


呂蒙の固有特性。


【民心を先に取る】


発動している。


呉軍は、敵地の民を苦しめなかった。


関羽の家族や、蜀軍兵士の家族も保護すると宣言した。


そのため、住民は徹底抗戦を選ばない。


城を守る兵の家族が呉側に保護されれば、兵士は戦意を失う。


白衣渡江を止めても、呂蒙の戦略全てを止めたわけではない。


【荊州南部】


奇襲占領

失敗


通常攻撃

開始


住民の呉への警戒


住民の関羽軍への忠誠

地域差あり


城郭防衛

継続可能


長期防衛

困難


関羽へ緊急連絡を送る。


水路。


陸路。


異なる使者を三人。


暗号文は二文字。


《帰れ》


父と執行評議が、事前に定めた帰還命令だった。


一人目の使者。


魏軍の斥候に捕らえられた。


二人目。


洪水で道が塞がれた。


三人目。


関平の部隊へ到達した。


関羽のもとへ、竹簡が渡る。


後に関平が残した記録によれば。


関羽は二文字を見たまま、長い間動かなかった。


《帰れ》


樊城は目の前。


曹仁は弱っている。


各地の反乱勢力が関羽へ呼応。


徐晃の増援は迫る。


南では呉が動いた。


関羽自身が署名した撤退条件。


呉軍の敵対行動。


烽火台の異常。


帰還命令。


複数の条件が成立している。


関平が言った。


「父上」


関羽は答えない。


「帰りましょう」


周倉も頭を下げる。


「将軍」


以前なら。


ここまで勝ったのだから、あと一度攻める。


樊城を落としてから帰る。


呉軍など、部下が防ぐ。


そう考えたかもしれない。


関羽は、樊城の城壁を見た。


長い戦。


死んだ兵。


降った于禁。


斬った龐徳。


応援する民。


自分の名に呼応した人々。


ここで退けば、全てを捨てるように感じる。


それでも。


関羽は竹簡を握り締めた。


「全軍へ伝えよ」


関平が息を止める。


「包囲を解く」


周倉が顔を上げた。


「荊州へ帰る」


軍神が、撤退を決めた。


【重要歴史改変】


関羽


撤退条件

受諾


帰還命令

遵守


樊城攻略継続

中止


生還予測

64% → 78%


関羽は帰ることを選んだ。


最大の難関を越えた。


俺は報告を受け、初めて大きく息を吐いた。


「間に合いました」


馬良も目を閉じる。


趙雲は静かに頷いた。


だが。


次の報告が届いた。


北。


徐晃軍が関羽の陣へ攻撃。


魏軍は、撤退を始めた荊州軍の混乱を突く。


南。


呂蒙軍が長江沿いの拠点を押さえ、関羽の帰路を圧迫。


西。


山道は洪水と崩落で通行困難。


東。


呉水軍。


関羽が帰ろうとしていることを知った魏と呉が。


それぞれの利益のため、同時に退路へ向かっていた。


【関羽帰還経路】


主水路

呉水軍により危険


南郡経路

呉軍攻撃中


公安経路

士仁が防衛中


西方山道

洪水・崩落


北方

徐晃軍が追撃


生還予測

78% → 51%


関羽は変わった。


約束を守った。


助けを求めた。


撤退を決めた。


それでも、危機は消えなかった。


人間の欠点だけが、悲劇を作るのではない。


国家の利害。


敵の能力。


地形。


時間。


偶然。


全てが重なる。


俺は地図へ駆け寄った。


「子龍叔父上」


「はい」


「出られますか」


趙雲は既に鎧を着ていた。


「そのために、ここへおります」


関羽救出プロジェクト。


準備段階は終わった。


今度こそ、本当の救出作戦である。


視界に赤い表示が現れた。


【関羽救出プロジェクト・最終段階】


対象

関羽

関平

周倉

荊州軍

兵士家族

南郡・公安の守備隊


敵対勢力


魏・徐晃軍

呉・呂蒙軍


残された時間

推定七日


最大の問題


関羽は帰ると決めました。


しかし、帰る道がありません。


趙雲が白馬へ乗る。


俺も馬へ向かった。


馬良が腕を掴んだ。


「殿下」


「行きます」


「戦場へ出ないという、主公との約束です」


「関羽叔父上を救うためです」


「それでも」


「約束を破るつもりはありません」


俺は地図上の救援地点を指した。


最前線へは行かない。


後方の江陵で、情報と退路を統括する。


趙雲は関羽のもとへ向かう。


士仁は公安を守る。


糜芳は南郡へ戻る。


馬良は呂蒙との交渉を続ける。


俺は全ての情報をつなぐ。


一人の英雄が、単騎で関羽を救うのではない。


組織全体で、軍神を帰す。


「行きましょう」


俺は言った。


北の空には、関羽の軍旗が見えない。


南の川には、呉の船が増えている。


残り七日。


歴史上。


麦城で終わるはずだった関羽の道を。


俺たちは、今から作らなければならなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ