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転生したら劉禅だったので、諸葛亮に有給休暇を取らせます~MBA持ちの阿斗、関羽の孤立・張飛のパワハラ・孔明の過労死を組織改革で止める~  作者: 東雲 諒杏
第四部 関羽を死なせるな

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第63話 捕虜三万人は、売上に入りません


樊城の大勝について、成都の人々は喜んでいた。


関羽が魏軍を破った。


于禁が降伏した。


三万人の兵を捕らえた。


数字だけ聞けば、大勝利である。


しかし蔣琬は、報告書を見ながら言った。


「三万人は、兵力ではありません」


劉備が眉を寄せる。


「降伏したのだから、いずれ我らの兵へ」


「まだなりません」


蔣琬は淡々と答えた。


「武器を取り上げ、監視し、食事を与え、病人を治療する必要があります」


捕虜を労働へ使うにも、管理者が必要だ。


一斉に解放すれば、再び魏軍へ戻る。


蜀軍へ編入すれば、忠誠と指揮系統の問題が起こる。


捕虜三万人。


味方兵士より、はるかに多い。


【樊城戦線・兵站状況】


味方兵

推定三万五千


捕虜

推定三万


前線一日食料消費

当初計画の181%


備蓄

二十四日分


撤退条件

二十二日分


二日で条件に達する。


法正が言った。


「捕虜を一部解放しては」


「魏軍へ戻ります」


黄権が答える。


「では、遠方へ移送する」


「移送用の食料と兵が必要です」


蔣琬が返す。


龐統は、捕虜を小集団へ分けて荊州南部の道路工事や堤防修理へ送る案を出した。


労働の対価として食事を与える。


一定期間後、帰郷か蜀軍加入かを選ばせる。


「捕虜を強制労働へ使うのですか」


董和が眉を寄せる。


「働かせずに食べさせ続ける方がよいと?」


龐統が返す。


「待遇と期間を明確にすべきです」


諸葛亮が調整する。


「家族へ生存を伝える方法も必要です」


費禕が提案をまとめる。


捕虜を五百人単位へ分ける。


将校と一般兵を分離。


名簿を作る。


病人を確認。


労働は一日当たりの時間を定める。


民間人への略奪や暴力は禁止。


働いた日数を記録し、帰郷時に証明書を渡す。


蜀軍への加入は強制しない。


「そこまで捕虜へ配慮する必要があるか」


一人の将が言った。


法正ではない。


益州攻略で功績を挙げた若い武将だった。


「昨日まで、我らを殺そうとしていた者です」


俺は尋ねた。


「降伏した後も敵ですか」


「心は敵でしょう」


「では、心が変わる機会を作ります」


飢えさせ、殴り、辱めれば。


捕虜は魏へ戻った後、必ず蜀を憎む。


食事を与え、家族へ帰す。


あるいは新しい仕事を選ばせる。


それだけで全員が味方になるとは思わない。


しかし、敵意を減らすことはできる。


「優しさではありません」


俺は言った。


「将来の戦争を減らす投資です」


張飛が尋ねた。


「捕虜へ酒も出すのか」


「出しません」


「投資が足りぬ」


黙っていてほしい。


問題は、制度を作っても今日の食料が増えるわけではないことだった。


関羽から緊急報告。


備蓄、二十三日分。


撤退条件まで、あと一日。


関羽本人の意見。


《樊城は落ちる寸前》


《ここで退けば、全てを失う》


《食料は現地調達する》


現地調達。


嫌な言葉である。


民から買うならよい。


軍が強制的に取れば略奪になる。


周辺の食料は、既に魏軍と荊州軍が集めている。


残っている大きな備蓄は、呉側の湘関にあった。


歴史では、関羽が呉の米を奪ったことが、孫権の怒りを強めたともいわれる。


視界に警告が現れる。


【重大外交危機】


関羽軍が呉側倉庫を無断使用した場合


呉の荊州攻略意思

59 → 91


湘水協定

事実上崩壊


呂蒙奇襲準備

即時開始


絶対に避けなければならない。


俺は関羽へ緊急書状を送った。


《呉の食料を無断で取らないでください》


《不足分は購入します》


《代金は成都が保証します》


《時間がなければ、共同管理者立会いのもとで借りてください》


同時に、呂蒙へ書状を送る。


《樊城戦線の捕虜増加により、食料が不足しています》


《湘関の米を、正式に購入させてください》


《戦後、米または塩・鉄で返済します》


《拒否される場合も、回答を記録してください》


呂蒙からの返答を待つ。


時間との戦いだった。


関羽の備蓄は、二十二日分へ達した。


自ら書いた撤退条件である。


関平が撤退を提案。


周倉も作戦縮小を提案。


主要将三名のうち、二名が同じ危険を報告した。


関羽自身の条件が、次々に成立する。


それでも樊城は目の前だった。


城壁は洪水で傷んでいる。


魏軍は疲弊。


援軍到着まで時間がある。


あと数日。


そう思うのは、理解できる。


関羽から報告が届いた。


《撤退条件に達したことを認める》


俺は息を止めた。


《ただし、呉より食料を購入できれば、条件は解消される》


条件を無視していない。


解除方法を探している。


成長である。


同時に、条件を都合よく解釈しようとしている部分もある。


人間らしい。


呂蒙から返事が届いた。


《食料の販売を認める》


意外だった。


続き。


《ただし、次の条件を求める》


一、代金は通常価格の二割増し。


二、食料は荊州側の船で運ばず、呉側が指定地点まで運ぶ。


三、捕虜を呉領へ入れない。


四、樊城作戦終了後、国境会合を開く。


五、関羽軍は、湘関の倉庫へ直接入らない。


合理的な条件である。


呂蒙は、関羽の食料不足を利用して利益と安全を得ようとしている。


だが、無断徴発を防げる。


「受けます」


俺が言うと、董和が顔を上げた。


「二割増しです」


「戦争になれば、二割では済みません」


糜竺も頷いた。


代金は成都が保証する。


荊州商人が輸送を補助。


呉側と蜀側の担当者が、積荷を共同で確認する。


食料は関羽軍へ届いた。


備蓄。


二十二日分から三十四日分へ回復。


【撤退条件】


兵糧二十二日未満

一時解除


湘水協定信頼度

46 → 51


呉の荊州攻略意思

59 → 54


代償


戦費増加

呉への債務

関羽の面子損傷


関羽の返書には、こう書かれていた。


《呉から米を買わねばならぬとは、屈辱である》


その下。


《しかし、無断で取らずに済んだ》


さらに。


《殿下の判断を認める》


関羽が自分以外の判断を認めた。


小さな一文だった。


俺にとっては、樊城大勝に近いほど大きな変化だった。


だが、食料問題が解決したことで、関羽の作戦継続が可能になった。


危機を解消した対策が、別の危機を延長する。


樊城作戦継続可能期間

十二日延長


魏軍増援到着予測

七日以内


呉の警戒

依然高水準


関羽孤立危険度

47% → 52%


食料を送ったことで、関羽はさらに前線へ残る。


正解を選んでも、安全になるとは限らない。


その夜。


孫権から関羽へ、一通の書状が届いた。


内容は軍事でも国境でもなかった。


孫権の息子と、関羽の娘を婚姻させたい。


縁談。


歴史上、関羽と孫権の関係を決定的に悪化させる可能性を持つ提案である。


そして関羽は、返書の草案を既に書いていた。


《虎の娘を、犬の子へ与えるものか》


馬良が、頭を抱えていた。


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