表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら劉禅だったので、諸葛亮に有給休暇を取らせます~MBA持ちの阿斗、関羽の孤立・張飛のパワハラ・孔明の過労死を組織改革で止める~  作者: 東雲 諒杏
第四部 関羽を死なせるな

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/72

第62話 軍神、大勝して危険度が上がる


樊城作戦が始まって三か月。


関羽から届く報告書は、以前とは比べものにならないほど詳しくなっていた。


魏軍の配置。


兵糧の残量。


船の数。


雨量。


病人。


呉軍の動き。


部下から出た反対意見。


そして表紙には、必ず同じ文字がある。


《荊州、異常あり》


関羽が異常を認め続けている。


成長である。


ただし、中身を読むたびに胃が痛くなる。


異常が多すぎる。


父の漢中攻略は成功へ近づいていた。


定軍山で、黄忠が夏侯淵を討った。


曹操自身が漢中へ入ったものの、劉備軍は山岳地形と兵站を活用し、優位を保っている。


漢中戦線で魏軍を圧迫するため、関羽も樊城と襄陽へ攻撃を強めた。


戦略全体としては正しい。


だが、関羽は勝っていた。


勝ちすぎていた。


魏の曹仁は樊城へ籠城。


周辺の反曹操勢力が、次々に関羽へ連絡してくる。


魏軍内部にも動揺が広がった。


河南の南部では、関羽の名を聞いただけで役人が逃げ出すという報告まで届いた。


【樊城作戦】


初期目的

魏軍を樊城方面へ拘束する


現在の達成率

143%


作戦拡大意思

関羽 91


撤退意思

関羽 12


目的を超えている。


企業なら、目標達成率百四十三パーセントと聞けば喜ぶかもしれない。


戦争では違う。


目標を超えて進めば、補給線が伸びる。


敵の増援が増える。


同盟国の警戒も高まる。


成功が大きいほど、撤退が難しくなる。


さらに、長雨が続いた。


漢水が増水する。


河川の水位は日に日に上がった。


関羽の水軍は、川の変化を正確に捉えていた。


魏から援軍として来た于禁と龐徳の軍は、低地へ陣を置いた。


関羽は高地へ陣を移し、船を集めた。


洪水は、関羽が起こしたものではない。


しかし、起きた洪水を最大限に利用した。


堤防が切れた。


水が魏軍の陣へ流れ込む。


馬。


武器。


食料。


兵士。


全てが濁流に呑まれた。


魏軍の七軍は分断された。


逃げ場を失う。


関羽は船で攻めた。


矢を放つ。


包囲する。


食料を断つ。


于禁は降伏した。


多数の兵も武器を置いた。


龐徳だけは抵抗を続けた。


木片や小舟を利用し、最後まで戦った。


最終的に捕らえられ、関羽の前へ連れてこられた。


後に関羽と関平の報告を読み、俺はその場面を知った。


関羽は龐徳の縄を解かせた。


「龐令明」


龐徳は膝をつかなかった。


「関羽」


「我がもとへ来ぬか」


龐徳の兄は、蜀側にいた。


過去の縁もある。


能力だけを見れば、登用したい人物だった。


俺が遠隔で確認できた情報にも、それが表れていた。


【龐徳 字・令明】


統率 87

武力 94

知略 72

忠義 100

降伏意思 0


固有特性


【棺を背負う】

出陣前に死を決め、撤退と降伏を選ばない。


【新たな主への忠義】

仕えた期間にかかわらず、自ら選んだ主へ命を捧げる。


登用可能性

0%


能力が見えても、採用できない。


説得しても、動かない。


それが龐徳だった。


「曹操は、漢の帝を利用する賊だ」


関羽が言った。


「兄者こそ、漢室を支える者。お前が忠義を尽くす相手は、曹操ではない」


龐徳は笑った。


「劉備は流浪の将にすぎぬ」


関平が怒る。


関羽は手で止めた。


龐徳は続ける。


「魏王には国がある。兵がある。法がある。お前たちに何がある」


「志がある」


「志で腹は満たせぬ」


「それでも、人は志のために死ぬ」


龐徳は関羽を見た。


「ならば、なぜ私の忠義だけを否定する」


関羽は黙った。


敵の忠義を認めれば、降伏を勧められない。


否定すれば、自分の忠義まで安くなる。


龐徳が言った。


「お前が劉備を捨てぬように、私は魏王を捨てぬ」


二人は似ていた。


仕える主は違う。


正義も違う。


それでも、自分が選んだ忠義を曲げない。


「もう一度だけ聞く」


関羽が言った。


「我がもとへ来ぬか」


「断る」


「生きよ」


「敵へ膝をついて生きることは、私の生ではない」


関羽は目を閉じた。


捕虜として生かしても、龐徳は逃亡や抵抗を続ける。


解放すれば再び敵となる。


魏との捕虜交換を待つ案もあった。


だが龐徳自身が拒んだ。


「斬れ」


関羽は、最後まで迷ったという。


それでも、命令を下した。


龐徳は処刑された。


俺が報告書を受け取ったのは、十日以上後である。


止めることはできなかった。


龐徳の名が、人材台帳へ追加された。


【龐徳 字・令明】


生命状態

死亡


関係

敵将


評価

忠義を違えなかった者


遺志継承対象

対象外


記録保存

実行


敵である。


仲間ではない。


それでも消さなかった。


忠義は、味方だけの価値ではない。


一方、于禁は生きることを選んだ。


「三万の兵を無駄に死なせられない」


于禁はそう言って降伏したという。


龐徳は死を選んだ。


于禁は生を選んだ。


どちらが正しいか。


簡単には決められない。


ただ、于禁の頭上には、別の表示が出ていた。


【于禁 字・文則】


統率 91

武力 77

軍律  100

危機時柔軟性 31


心理状態


敗北への羞恥 100

部下生存への安堵 83

自己否定   96


自死危険度


生きた者も苦しんでいる。


俺は関羽へ返書を送った。


《于禁殿と降伏兵を侮辱しないでください》


《武器を置いた者の生命を守ってください》


《龐徳殿の家族へ、死亡の事実と最期の言葉を伝えてください》


《そして叔父上》


《作戦目的は既に達成されています》


《拡大には追加承認が必要です》


返事は、すぐには来なかった。


代わりに、樊城大勝の知らせが各地へ広がった。


関羽、于禁七軍を水没させる。


龐徳を斬る。


曹仁を樊城へ包囲。


中華震動。


曹操は遷都まで考えたという。


兵士たちは軍神の名を叫んだ。


荊州の民も喜んだ。


成都では宴の準備が始まった。


視界に関羽の能力画面が現れる。


【関羽】


武名 100 → 測定上限超過

威圧 100 → 測定上限超過

味方士気 最大

敵軍恐怖 最大


作戦拡大意思 91 → 100

自己判断信頼 100

撤退意思   12 → 3


孤立危険度

25% → 47%


勝った。


だから危険度が上がった。


俺は歓声の中で、一人だけ笑えなかった。


数日後。


関羽から返書が届いた。


《殿下へ》


《作戦目的を達成したことは認める》


《しかし、今退けば、樊城を取る機会を失う》


《曹操の威は落ち、各地の義士が我らへ呼応している》


《この機会を逃すことは、国への損失となる》


正論である。


最後に。


《追加承認を求める》


以前の関羽なら、承認を待たず進んだかもしれない。


制度には従っている。


だが、時間はない。


承認を送る間にも戦況は変わる。


俺たちは緊急執行評議を開いた。


法正。


「続行すべきです」


龐統。


「樊城を取れるなら取る。ただし期限を設ける」


諸葛亮。


「後方の状況を確認するまで、作戦規模を広げるべきではありません」


黄権。


「魏は必ず大規模な増援を送ります」


蔣琬。


「捕虜が増えたことで、兵糧消費が計画を超えています」


費禕。


「十日間のみ継続し、その後、再評価してはいかがでしょう」


父は地図を見た。


「雲長に十日を与える」


最終決定。


「ただし、食料、呉軍、魏の増援。いずれかの条件が悪化すれば退く」


承認書を送る。


関羽の勝利へ、十日間の期限が付いた。


だが、同じ日に別の報告が届いた。


捕虜。


約三万人。


食料。


想定を大きく超えて消費。


前線備蓄。


残り二十四日分。


撤退条件は二十二日。


あと二日分減れば、条件へ到達する。


関羽の最大の敵は、曹仁ではなかった。


自らが勝利して得た、三万人の捕虜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ