↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら劉禅だったので、諸葛亮に有給休暇を取らせます~MBAホルダーの阿斗、関羽の孤立・張飛のパワハラ・孔明の過労死を組織改革で止める~  作者: 東雲 諒杏
第九部 英雄がいなくても、明日は来る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
166/174

第150話 三国の、三つの後継


【景耀八年|成都】


三つの国が、三つの方法で、後を継いだ。


——魏は、四人に分けた。


呉は、二人にした。


そして、俺は、三人にした。


景耀(けいよう)八年。西暦二六五年である。


俺は、五十八になった。


二年前、魏が攻めてきた。


そして、退けた。


綿竹(めんちく)で、諸葛瞻(しょかつせん)鄧艾(とうがい)を止めた。


——三年の休戦は、まだ二年残っている。


そして、その二年目に、洛陽(らくよう)から報が来た。


「陛下」


郤正(げきせい)が言った。


——六十である。


そして、記録を扱って、三十年になる。


「魏が、禅譲いたしました」


「……誰へ」


——この人は、答えた。


司馬炎(しばえん)


「誰の子ですか」


「司馬昭の子」


「そして」


司馬懿(しばい)の孫でございます」


    ◆


俺は、そこで、木簡(もくかん)を出した。


——三十九年前のものである。


そして、表題は、こうだった。


《四人のうち、誰が残るか》


建興(けんこう)四年


曹真 曹休 陳羣 司馬懿


《士元どのの見立て——若い者。宗室でない者》


——そして、その下に、四行書き足してある。


《一人目。曹休。建興六年》


《二人目。曹真。建興九年》


《三人目。陳羣。建興十五年》


《四人目。司馬懿。延熙十四年》


——四人とも、死んだ。


そして、残ったのは——司馬懿の家である。


    ◆


俺は、龐統(ほうとう)の見立てを、指でなぞった。


——二十四年前に死んだ。


六十三である。


そして、この人は、即答した。


「若い者でございます」


「そして、宗室ではない者」


——三十九年である。


そして、そのとおりになった。


「令先どの」


「はい」


「士元どのは、なぜ分かったのでしょう」


——郤正は、少し考えた。


そして、こう答えた。


「ご自分が、そうでございましたゆえ」


——俺は、そこで、顔を上げた。


荊州(けいしゅう)の出である。


宗室では、ない。


そして、関羽(かんう)より二十以上、若かった。


——そして、四十五年前、名簿の三行目にいた。


「令先どの」


「はい」


「書いておいてください」


——郤正は、筆を取った。


そして、聞いた。


「何を、でございましょう」


——俺は、答えた。


「三つの国が、どうやって後を継いだかです」


——三日かかった。


郤正が、書いた。


そして、俺は、口を出さなかった。


    ◆


【三国 後継の方式】


 方式 輔政四名(宗室二・外臣二)

 時期 皇帝の死の床にて、数日で決定

 結果 三十九年で、外臣一名の家が残る


 方式 太子と魯王を、同格に扱う

 時期 八年、決定せず

 結果 朝廷が二分。重臣多数を失う


 方式 丞相の職掌を三分し、順に継がせる

 時期 二十八年をかけて分割

 結果 ——


——結果の欄が、空白だった。


「令先どの」


「はい」


「なぜ、空けておられますか」


——この人は、答えた。


「まだ、終わっておりませぬゆえ」


「……」


「陛下が、ご存命でございます」


——俺は、そこで、少し笑った。


正しい。


そして、俺は、自分の方式の結果を、見られない。


    ◆


俺は、そこで、一つ聞いた。


「令先どの」


「はい」


「魏の欄に、一つ抜けています」


——郤正は、竹簡を見た。


そして、こう聞いた。


「何でございましょう」


——俺は、答えた。


「なぜ、四人にしたかです」


「……」


「そして、なぜ、数日で決めたかです」


——郤正は、しばらく黙っていた。


そして、こう言った。


「陛下」


「はい」


「死の床でございます」


「はい」


「——」


「時が、ございませなんだ」


——俺は、そこで、頷いた。


そして、こう言った。


「そのとおりです」


「——」


「そして、こちらは、二十八年ありました」


「——」


「その差だけです」


    ◆


俺は、続けた。


「令先どの」


「はい」


曹丕(そうひ)は、四十で死にました」


「はい」


曹叡(そうえい)は、三十五です」


「——」


「そして、父は六十三」


「——」


「私は、五十八で生きています」


——郤正は、筆を止めた。


そして、こう聞いた。


「陛下」


「はい」


「では、方式の差ではないと」


——俺は、答えた。


「半分は、そうです」


「……」


「残りの半分は、方式です」


「——」


「そして、どちらが半分かは、分かりません」


——郤正は、そこで、一行書き足した。


《備考——魏の帝は、二代とも四十に満たず崩ず》


《時をもって比べることは、できない》


    ◆


俺は、数えた。


——三人である。


蔣琬(しょうえん)。十九年前に死んだ。六十一。


費禕(ひい)。十二年前。五十八。


董允(とういん)。十九年前。五十六。


——そして、三人とも、俺より先に死んだ。


俺は、木簡に書いた。


《魏は、四人に分けた。そして、一人になった》


《呉は、二人にした。そして、二つに割れた》


《俺は、三人にした》


——そして、その下に。


《そして、三人とも、俺より先に死んだ》


俺は、そこで、筆を止めた。


——三人とも、順に継いだ。


蔣琬から、費禕へ。


そして、費禕から、次へ。


争わなかった。割れなかった。一人に集まらなかった。


——成功である。


そして——三人とも、死んでいる。


六十一。五十八。五十六。


そして、俺は五十八で、生きている。


「令先どの」


「はい」


俺は、聞いた。


「三人の歳を、数えましたか」


——この人は、答えた。


「数えております」


「……」


「平均、五十八でございます」


——俺は、そこで、息を呑んだ。


五十八。


今の俺と、同じである。


「令先どの」


「はい」


「なぜ、数えられましたか」


——郤正は、少し黙った。


そして、こう言った。


「三人とも、働きすぎでございました」


    ◆


俺は、そこで、動けなくなった。


「蔣琬どのは、十二年」


「はい」


「費禕どのは、七年」


「はい」


「董允どのは、二十三年」


——そして、この人は、こう続けた。


「三人とも、休んでおられませぬ」


——俺は、そこで、一つ聞いた。


「令先どの」


「はい」


「三人の休んだ日を、数えた人はいますか」


——郤正は、答えた。


「おりませぬ」


「……」


「丞相の分は、ございます」


「——」


「四十五年分」


「——」


「そして、三人の分は、ございませぬ」


    ◆


俺は、そこで、自分の失敗に気付いた。


——四十二年前である。


即位した年だ。


皇帝の第一号人事は——丞相(じょうしょう)の休暇だった。


六か月。


そして、諸葛亮(しょかつりょう)は、七十まで生きた。


——そして、三人には、休暇を命じなかった。


「令先どの」


「はい」


「なぜ、私は命じなかったのでしょう」


——郤正は、答えなかった。


そして、しばらくして、こう言った。


「三人、おられましたゆえ」


十六年前、俺は三人を走らせる仕組みを知った。あのとき、俺はこう思った。あれが作っているのは次の長ではなく、三人を見る側のほうだ、と。


半分は、合っていた。


もう半分を、今日、聞いた。


三人いると、一人が倒れても、止まらない。


止まらないというのは、良いことである。四十年、俺はそれだけを目指してきた。英雄がいなくなっても回る国。一人が死んでも決まる仕組み。


そして、止まらない仕組みは、倒れかけている一人を、止めない。


一人しかいなければ、周りが必死になる。倒れたら終わりだからだ。三人いれば、誰も必死にならない。まだ二人いる、と思う。


前世で、俺はこれを「冗長性」と呼んで、報告書に何度も書いた。良いことの欄に、書いた。


悪いことの欄が、あることを知らなかった。


制度は、国を守った。そして、その制度が、三人を守らなかった。


守らせるつもりで作ったものが、守らなくてよい理由になっていた。


    ◆


俺は、そこで、理解した。


——一人のときは、倒れると国が止まる。


だから、休ませた。


三人いれば、一人倒れても、止まらない。


だから、休ませなかった。


——制度が、人を守らなくなった。


分散したから、安心した。


そして、安心したから、見なくなった。


——四十二年前、俺は諸葛亮にこう言った。


「あなたが倒れると、国が止まります」


——理由が、それだった。


そして、その理由が消えたとき、休ませる理由も消えた。


——俺は、人を守っていたのではない。


国を、守っていた。


    ◆


「令先どの」


「はい」


「一つ、規定を作ります」


「何の、でございましょう」


——俺は、答えた。


「休暇です」


【休暇監察官】


一 三公・尚書令・侍中の休養日数を、記録する


二 年間三十日に満たぬ者へ、休暇を命ずる


三 命令は、皇帝の決裁を要しない


四 監察官は、当人の家族から選ぶことができる


備考

 四は、

 四十二年前の例によります。


——四番目である。


そして、備考を書いたのは、俺だ。


「陛下」


郤正が言った。


「四十二年前の例とは」


——俺は、答えた。


「数えていた人がいました」


「……」


「四十五年分」


「誰でございましょう」


——俺は、こう言った。


「丞相の妻です」


——郤正は、筆を取った。


そして、こう聞いた。


「お名前は」


——俺は、答えなかった。


そして、こう言った。


「黄氏、と書いてください」


——この人は、少し俺を見た。


そして、何も聞かずに、書いた。


    ◆


俺は、そこで、一つ足した。


「令先どの」


「はい」


「五番目を、書きます」


「何と、でございましょう」


——俺は、答えた。


「『皇帝も、対象とする』」


——郤正は、筆を止めた。


そして、こう聞いた。


「陛下」


「はい」


「陛下の休沐は、侍中(じちゅう)が見ております」


「はい」


「——」


「四十二年、そうでございます」


——俺は、答えた。


「見ています」


「……」


「そして、命じられません」


「——」


「侍中は、私の臣ですゆえ」


——郤正は、しばらく黙っていた。


そして、こう聞いた。


「では、誰が命じますので」


——俺は、答えた。


「監察官です」


「——」


「そして、監察官は、私の家族から選べます」


——郤正は、そこで、筆を置いた。


そして、こう言った。


「……皇后さまでございますか」


——俺は、答えた。


「はい」


「そして、二十七年、数えておられます」


    ◆


——三年後。


数字が出た。


【休暇 三年】


対象 十一名


一年目

 三十日に満たぬ者  十一名(全員)


二年目

 三十日に満たぬ者  七名


三年目

 三十日に満たぬ者  四名


備考

 四名のうち、三名は

 「休むと不安になる」と申しております。


——休むと、不安になる。


「令先どの」


「はい」


「この三名は」


——この人は、答えた。


「三人とも、若うございます」


「……」


「四十に満たぬ者でございます」


「そして、三人とも、選挙で上がった者でございます」


——俺は、そこで、息を呑んだ。


選挙である。


十一年前に作った。


そして、家ではなく、試験と実務で上がった者だ。


——後ろ盾が、ない。


    ◆


「令先どの」


「はい」


「なぜ、不安になるのでしょう」


——郤正は、答えた。


「休めば、自分が要らぬと分かりますゆえ」


——俺は、そこで、動けなくなった。


四十四年前である。


諸葛亮に、俺はこう聞いた。


「あなたが倒れたら、誰がやりますか」


そして、この人は答えなかった。


——そして、俺は、あのとき、こう漏らした。


「わたしも、そうでした」


「人に渡すのが、こわいです」


「渡したら、いらなくなる気がします」


——四十四年である。


そして、同じことを、三人が言っている。


——家柄ではなく、試験で上がった者が。


    ◆


俺は、そこで、三人に会うことにした。


——一人ずつである。


そして、一つだけ聞いた。


「休んだ日、何をされましたか」


——一人目は、こう答えた。


「文書を、持ち帰りました」


「読まれましたか」


「読みました」


「何件」


「——」


「六件でございます」


——二人目は、こう答えた。


「家におりました」


「何をされましたか」


「——」


「待っておりました」


「何をですか」


「——」


「呼ばれるのを」


——そして、三人目。


この人は、しばらく黙った。


そして、こう答えた。


「……眠りました」


「はい」


「そして、起きて、(こわ)うございました」


「なぜですか」


——この人は、答えた。


「一日、誰も来ませなんだゆえ」


    ◆


俺は、そこで、一つ命じた。


「令先どの」


「はい」


「六番目を、書きます」


「はい」


——俺は、こう言った。


「『休んだ者へ、翌日、その間に起きたことを報せる』」


「——」


「一件も起きなければ、『なし』と書いて出す」


——郤正は、筆を止めた。


そして、こう聞いた。


「陛下」


「はい」


「なしと書けば、要らぬと分かりますが」


——俺は、答えた。


「逆です」


「……」


「何も来ないのが、いちばん怖いのです」


「——」


「『なし』と書いた紙が来れば、それは来たことになります」


——郤正は、しばらく黙っていた。


そして、書いた。


そして、こう聞いた。


「陛下」


「はい」


「これは、四十六年前の様式でございますな」


——俺は、そこで、顔を上げた。


「令先どの」


「はい」


「何のことですか」


——この人は、答えた。


「《異常なし》でございます」


「——」


「陛下は、あれを禁じられました」


「はい」


「——」


「そして、今日、同じものを作られました」


    ◆


俺は、そこで、しばらく黙っていた。


——正しい。


四十六年前、俺は《荊州、異常なし》を禁じた。


そして、今日、《なし》と書いて出せと命じた。


「令先どの」


「はい」


「違います」


「どこが、でございましょう」


——俺は、答えた。


「あれは、上へ出すものでした」


「はい」


「——」


「これは、下へ出すものです」


「——」


「上へ出す『なし』は、隠します」


「——」


「下へ出す『なし』は、安心させます」


——郤正は、そこで、一行書き足した。


《備考——同じ言葉が、向きによって逆になる》


    ◆


その夜、俺は木簡を出した。


そして、書いた。


《制度を作ると、新しい不安が出る》


——そして、その下に。


《渡す仕組みを作ったら》


《渡したら要らなくなると、思う者が出た》


——俺は、そこで、筆を止めた。


五十八年、測ってきた。


そして、測るたびに、測っていないところが壊れた。


犍為(けんい)郡。新兵教練。監察。


そして、今日である。


俺は、もう一行書いた。


《四つ目も、壊れた》


そして、その下に。


《五つ目を、測る》


そして、その下に。


《終わらない》


——三十九年前、姜維(きょうい)に同じことを言った。


「終わりませぬな」


「終わりません」


「それが、仕事だ」


    ◆


最後に、俺は郤正の竹簡(ちくかん)を見た。


蜀の欄である。


そして、結果が空白だった。


「令先どの」


「はい」


「一行、足してください」


——この人は、筆を取った。


そして、俺は、こう言った。


「結果は、まだ出ていない」


《そして、出るのは、俺が死んだ後である》


——郤正は、書いた。


そして、こう聞いた。


「陛下」


「はい」


「では、誰が書き入れますので」


——俺は、答えた。


「あなたの、後の人です」


「——」


「そして、その人も、たぶん書けません」


「なぜでございましょう」


——俺は、答えた。


「その人も、この方式の中にいますゆえ」


    ◆


俺は、そこで、一つ思った。


——魏の欄は、書けた。


呉の欄も、書けた。


理由は、一つである。


——終わったからだ。


そして、終わっていないものは、書けない。


——十三年後、俺は羅憲(らけん)に同じことを書く。


《終わっていないものは、捨てないでください》


そして、そのときの俺は、まだそれを知らない。



〈あとがき〉


「士元どのは、なぜ分かったのでしょう」「ご自分が、そうでございましたゆえ」——荊州の出、宗室ではない、そして関羽より二十以上若い。四十五年前、名簿の三行目にいた人です。


「死の床でございます。時が、ございませなんだ」「そのとおりです。そして、こちらは、二十八年ありました。その差だけです」。《時をもって比べることは、できない》。


平均、五十八。今の主人公と同じです。「三人とも、休んでおられませぬ」。


「三人、おられましたゆえ」——一人なら倒れると国が止まる。三人なら止まらない。だから休ませなかった。制度が、人を守らなくなった。


「休んだ日、何をされましたか」「待っておりました」「何をですか」「呼ばれるのを」。そして三人目——「眠りました。そして、起きて、怖うございました。一日、誰も来ませなんだゆえ」。


「これは、四十六年前の様式でございますな」「《異常なし》でございます」——「上へ出す『なし』は、隠します。下へ出す『なし』は、安心させます」。


《劉禅文庫 再読『GE's Talent Machine』——三人いれば、一人倒れても止まらない。止まらない仕組みは、倒れかけている一人を、止めない》


次回、第151話「英雄がいなくても、明日は来る」。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
後継について記したものがこれとは、かなり恣意的ではないでしょうか。 「誰」の後継なのかの基準が曖昧です。 魏は曹操でも曹叡でもなく曹丕の後継なのはなぜか、蜀は劉備の後継なら諸葛亮1人だったのではないか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。