表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第六部 潮騒の岬編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/117

第98話「手紙が、増えていく」


 パカラ村に帰ってきた。


 丘の上。グラドルが枝を揺らして迎えてくれた。


「おかえり、宝箱。海は、どうだった」


〝塩辛かった〟


「おまえ、舌があるのか」


〝ない〟


「ないのに塩辛いとは」


〝雰囲気で〟


 グラドルが枝をゆさゆさ揺らした。笑ってるのか。


 グリンが見張り台から飛び降りてきた。


「タカラぁぁぁ! おかえりぃぃぃ!」


〝ただいま〟


「村、また変わったぞ!」


 門をくぐった。


 ……変わりすぎだろ。


 前回帰った時は七十軒くらいだった建物が、百軒近くに増えてる。


 そして——広場に噴水ができてた。


「噴水!?」


 ガルドが目を見開いた。


「おい、いつの間に噴水なんか作ったんだ」


 グリンが胸を張った。


「コボルト大工たちが、水路を引いてきて噴水を作ったんだ。スライムが水の浄化をしてくれるから、きれいな水が流れてる」


 スライムによる水の浄化。噴水。コボルトの建築。


 転スラのテンペスト、もう完全にこの方向だ。


「人口は?」


「五百八十二。前より七十増えた」


 五百八十二。もう六百に近い。


 サガが出てきた。


「おかえり。海の話、聞きたいの」


〝あとでまとめて報告する〟


「ドルトンからの速報は、もう聞いたかの。マリウスの復帰」


〝聞いた〟


「厄介じゃな」


〝厄介だけど、今は塔の解放に集中する〟


「そうか。おまえが決めるなら、それでいい」


 サガが杖をとんと突いた。



 ◇



 村の集会所で、各地からの手紙を確認した。


 スミが手紙を読み取って、蓋裏に転写してくれる。


 ナギからの手紙。



『タカラへ


 砂漠の集落、人口百五十になった。増えすぎて家が足りない。

 ドレイクが設計図を描いてくれてる。堅物のくせに几帳面で助かる。

 砂鬼将(さきしょう)がついに棒切れじゃなくて木の剣を自分で削り始めた。

 本人曰く「素振り用」。でかい木の剣で毎朝振ってる。

 蠍道士(さそりどうし)の研究が成果を出して、砂漠の水源を見つけた。

 井戸が掘れそう。でかいニュースだ。


 次の旅も気をつけろ。


 ナギ』



 ナギ、順調だな。砂漠に井戸が掘れるなら、集落が自立できる。


 メブキからの手紙。



『タカラさんへ


 芽吹(めぶき)の里、緑がどんどん広がってます。

 翠兎たちが毎日走り回って、

 焦土帯の北端まで草が届きました。

 新しい魔物も来ます。翠鹿と翠鷹。

 仲間が増えて嬉しいです。

 灰港の長老とも交易を始めました。

 長老、優しいです。


 メブキ』



 メブキ、手紙がどんどん上手になってる。翠鹿と翠鷹。新種が来てるのか。


 知の王からの伝言。博士経由。



『第八百年と二十七日目。六百五十八巻目読了。チョンが来るのを、変わらず待っている。なお、大賢者の遺産については、断片的な情報を追加で発見した。次にタカラが来訪した際に開示する。——知の王』



 大賢者の遺産の情報を追加で見つけた。知の王の塔にもう一度行く必要があるかもしれない。


 潮音(しおね)からの手紙——は、魚人族が海路で届けてくれた。貝殻の薄片に文字が刻まれてる。



『タカラへ


 海、自由です。歌が響きます。

 魚人族と一緒に暮らしています。

 サンゴ礁がきれいに育ってきました。

 潮見の街との交易も始まりました。

 ミナトさん、いい人です。

 チョンにも来てほしいです。

 一緒に歌いたい。


 潮音(しおね)



 みんな——元気にやってる。


 俺が各地で蓋を開けて、仲間を増やして、集落を作って——その全部が、今も動いてる。


 パカッ。


 ……嬉しいな。


 宝箱の中身が、あちこちに広がってる。でも繋がってる。手紙で。



 ◇



 夜。


 丘の上。


 チョンが来た。


「タカラ。自分もさ、手紙書いてみたんだ」


 チョンが紙を差し出した。



 〝タカラへ

  うみにいった

  しおねさんにうたをきかせた

  いっしょにうたった

  ふねにものった

  バルトさんがやさしかった

  つぎのたびもいく

  ぜったいいく

  もっとうまくうたえるようになる

      チョンより〟



〝ありがとう〟


 収納に入れた。四枚目。大切に。


「えへへ」


 チョンが走っていった。


 パカッ。


 パカパカ。


 収納の中に、手紙が四枚。


 ……何通まで増えるかな。全部の塔を解放するまでに。


 パカパカパカパカ。



 ◇



 翌日。


 レイスが村に戻ってきた。王都から。


 顔色が悪い。目の下にくまがある。


「タカラ。緊急の報告がある」


〝座れ まず飯を食え〟


「飯より先に聞いてくれ」


 レイスの声が切迫してた。


 集会所に集まった。俺、ガルド、レグナ、ガウル、リーリア、サガ、グリン。チョンも端っこに座ってる。


「マリウスが動いた」


〝復帰のことはドルトンから聞いた〟


「復帰だけじゃない。マリウスが——第六の塔に、自分の部隊を送った」


 …………。


〝先に行ったのか〟


「三日前だ。マリウス直属の魔導士部隊、二十人。カシスが指揮を執ってる」


 カシス。海で追い払ったはずなのに、もう次に動いてる。


「目的は——大賢者の遺産の確保。マリウスが〝第六の塔の封印を解く前に、遺産を回収する〟と王に上奏して、許可を取った」


〝王が許可したのか〟


「した。マリウスの弁明が通ってる。〝大賢者の遺産は王国の財産であり、蓋を開ける者(オープナー)が無秩序に解放する前に、安全に確保する必要がある〟と」


 「無秩序に解放する」。


 俺が塔を解放することを——「無秩序」と呼んでる。


 ガルドが歯を食いしばった。


「あいつ、こっちが塔を解放するのを妨害する気か」


「妨害ではない。〝管理〟だ。マリウスの言い分は〝秩序ある解放〟。タカラが先に行くか、マリウスの部隊が先に遺産を確保するか。時間との勝負になってる」


 時間との勝負。


 またか。


 博士が言った。


『第六の塔に大賢者の遺産がある。それを先にマリウスに取られると——七つの塔の封印を操る中核装置がマリウスの手に渡る。そうなれば、タカラが第七の塔を解放しても、マリウスが封印をコントロールする立場になる』


〝つまり——先に行かないとまずい〟


『急いだ方がいい』


 パカッ。


〝第六の塔は、どこだ〟


 蓋裏を確認した。



 ──────────────────

  第6の塔:位置情報


  大陸中央部の山岳地帯

  天蓋(てんがい)渓谷(けいこく)


  * パカラ村から東に十日の距離

 ──────────────────



 東に十日。


 マリウスの部隊は三日前に出発してる。七日のリードがある。


 でも——マリウスの部隊は王都から出発してるはずだ。王都から天蓋(てんがい)渓谷(けいこく)まで何日かかるかによる。


〝レイス マリウスの部隊は王都からどのルートで行った〟


「王都から南東。馬で十二日と聞いてる」


 十二日。三日前に出発したなら、到着まであと九日。


 俺たちがパカラ村から東に十日。


 一日の差。


〝……ギリギリだな〟


「ギリギリだ。急がないと、間に合わない」


 パカッ。


〝明日、出発する〟


 全員が頷いた。



 ◇



 【次回】第六の塔に向けて出発。マリウスとの時間の勝負。大賢者の遺産を巡る争い。第六部、完。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ