表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第六部 潮騒の岬編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/117

第94話「海上決戦」


 塔の中から海上に出た。


 魚人族が再び泡を作ってくれて、俺とガルドとガウルが海面まで浮上した。レグナ、リーリア、チョンは塔の中に残した。リーリアは魔力切れだし、チョンは海上戦闘に出すわけにはいかない。


 海面に出ると——


 二百メートル先に、船がいた。


 バルトの風切り号じゃない。もう一隻、別の船。黒い帆。


 黒い帆の船の甲板に、五人の人影。


 ガウルが匂いを嗅いだ。


「ガウ。カシスの匂い。それと——知らない匂いが四人。全員、魔法使い系の匂い」


 カシスと弟子四人。五人の魔導士部隊。


 カシスが船の舳先に立ってた。


 にこにこしてる。


 海風に白い服がなびいてる。二百メートル先でも、あのにこにこが見える。


「やあ! 蓋を開ける者(オープナー)殿! お久しぶりです!」


 声が海上に響いた。


「鎖、外してくれたんですね。ありがとうございます。おかげで、海の王に直接接触できるようになりました」


 ……おかげでって。


 俺が鎖を外した後に来やがった。外す苦労は全部こっち持ちで、利益だけ持っていこうとしてる。


〝何しに来た〟


「何って。海の王の歌の力を回収しに来ました。マリウス様のご命令で」


 歌の力を回収。知の王の断片を引き抜いたのと同じだ。


〝させない〟


「そう言うと思いました。だから——」


 カシスが手を上げた。


 黒い帆の船の甲板で、四人の弟子が同時に魔法陣を展開した。


「力ずくで来ることにしました」



 ◇



 四つの魔法陣から——海水が盛り上がった。


 水の柱。四本。それぞれ五メートルくらいの高さ。


 水の柱が形を変えていく。人型。水でできた巨人。


 水人形(みずにんぎょう)


 四体の水の巨人が、海面の上に立った。


「行きなさい」


 カシスが命じた。水人形がこっちに歩いてくる。海面の上を。水だから沈まない。


 俺は——海面に飛び降りた。


〝フロストエッジ——足場!〟


 氷の足場が広がる。海面に白い道ができる。


 ズズズで走り出した。


 水人形の一体目が拳を振り下ろしてきた。水の拳。でかい。


 俺は——〝武装擬態(アームドミミック)〟!


 外蓋を剣に。


 水人形の拳を斬った。


 ——斬れない。水だから。剣が通り抜ける。


 水の体を斬っても意味がない。


 水人形の拳が俺に当たった。


 ドゴッ!


 吹き飛ばされた。氷の足場が砕けた。海に落ちかける——


〝フロストエッジ!〟


 足元を凍らせて復帰。


 水の敵に物理攻撃が効かない。斬っても突いても意味がない。


〝博士、水人形の倒し方は〟


『水の魔法で動いてる。操者を倒すか、水の核を壊すか——あるいは、水を凍らせれば動きが止まる』


 凍らせる。


〝フロストエッジ——全力!〟


 俺は外蓋を剣から元に戻して、五枚の蓋全部からフロストエッジを放った。


 冷気が爆発的に広がった。


 水人形の一体に——冷気が当たった。


 水が——凍り始めた。


 ゴゴゴッ、と音を立てて、水人形が氷に変わっていく。足元から上へ。


 三秒で——完全に凍った。動かなくなった。氷の彫像。


「一体!」


 残り三体。


 でも魔力消費が重い。海水を凍らせるのは塩分のせいで魔力が多く要る。


 三体同時に凍らせるのは——きつい。


 二体目と三体目が左右から挟み込んできた。


〝ガルド!〟


「おう!」


 ガルドが泡の中から飛び出した。泡が割れて——ガルドが海面に落ちた。


 ……沈んだ。


「うぼっ!」


 ガルド、泳げないんだった。


 魚人族がすかさずガルドの下に潜り込んで、持ち上げてくれた。


「あ、ありがてえ!」


 魚人族の背中に乗ったガルドが、二体目の水人形に向かって拳を構えた。


「〝覇拳(はけん)〟!」


 拳が水人形を叩いた。


 ——すり抜けた。


「意味ねえ! 水だ! 拳が通り抜ける!」


覇拳はけん〟も水には効かない。物理攻撃が全部無効か。


「タカラ、凍らせてくれ!」


〝魔力が足りない! 一体が限界だ!〟


「マジか!」


 三体目が俺の背後に回り込んだ。


 ——そのとき。


 海中から、銀色の光が走った。


「〝銀牙疾走(シルバーファング)〟——水中全力!」


 ガウルが海中から、銀の牙の衝撃波を発射した。


 衝撃波が——水人形の体を貫通した。


 水の体が震えた。


 衝撃波は水の中を伝播する。水人形の体は——水。衝撃波が内部で共鳴して、水人形の体がビリビリ振動した。


 核が——露出した。


 水人形の胸の辺りに、小さな青い石。魔力の核。水の体の中に隠れてたのが、衝撃波の振動で表面に浮かんできた。


「見えた! 核だ!」


 ガルドが、魚人族の背中から飛んだ。


「〝覇拳(はけん)〟!」


 今度は核だけを狙って。拳が青い石を砕いた。


 パリィンッ!


 核が割れた。水人形が——崩れた。水に戻って、海に落ちた。


「よし! 二体目!」


 ガウルの衝撃波で核を露出させて、ガルドが砕く。海と陸の連携。


 残り二体。


 同じ要領で——ガウルが水中から衝撃波、ガルドが核を砕く。


 ドゴン、パリィン。ドゴン、パリィン。


 四体全滅。


 海面に水人形の残骸(ただの海水)が散った。



 ◇



 カシスが——まだにこにこしてる。


「やりますね。水人形を全部倒すとは」


 にこにこのまま、カシスが両手を掲げた。


「では——私が直接やりましょう」


 カシスの体から——魔力が膨れ上がった。


〝査定〟。



 ──────────────────

〝査定〟


  対象:カシス


  総合戦力:A+

  種族:人間(魔導士)

  スキル:水属性魔法(上級)


  * マリウス直属の弟子

  * マリウスの魔法体系を受け継いでいる

 ──────────────────



 Aランク上位。銀環と同格。


 カシスが——海面に降り立った。水の上に立ってる。水の魔法で、自分の足元を固めてる。


蓋を開ける者(オープナー)殿。一対一で、やりませんか?」


〝提案してくるな、おっとうしい〟


「ふふ。だって、あなたの仲間たち——ホブゴブリンは泳げない、骸骨は塔の中、巫女は魔力切れ。実質、海の上で戦えるのはあなただけです」


 ……よく分析してるな。


 ガウルは水中にいるけど、カシスの足元の水は魔法で固まってる。衝撃波が効きにくい。


 ガルドは魚人族の背中で浮いてるけど、足場が不安定で全力が出せない。


 実質——俺一人。


〝受けて立つ〟


 パカッ。


 氷の足場を広げた。十メートル四方。


 カシスが水の上を滑るように近づいてきた。


「では——」


 カシスが手をかざした。


「〝水刃陣(すいじんじん)〟」


 海水が刃になった。十本の水の刃が、俺に向かって飛んできた。


武装擬態(アームドミミック)〟——盾!〟


 内蓋を盾に。水の刃を受けた。


 ガギギギッ!


 水の刃が盾にぶつかって砕けた。でも衝撃が重い。一本一本が重い。


 十本のうち、七本は防いだ。三本が盾の横を抜けた。


 俺の側面に水の刃が当たった。


 ガリッ!


 外殻に傷が入った。


 ……〝闘気纏(とうきてん)〟!


 戦の王から継承した闘気を、外殻に纏った。金色の闘気が、傷を覆った。


 防御力が上がった。次の水の刃なら——耐えられる。


「おや、闘気を纏うんですか。宝箱が闘気って、珍しいですね」


〝珍しいだろ〟


 反撃。


五連星(ファイブスター)〟!


 五枚の蓋から、五種類のスキルを同時発射。


 ファイアランス。フロストエッジ。光弾。蔦。尾撃砲(テイルキャノン)


 五方向から同時に。


 カシスが——水の壁を作った。


「〝水盾壁(すいじゅんへき)〟」


 水の壁が、五発のうち四発を防いだ。


 でも——フロストエッジだけが、水の壁を凍らせた。


 壁が凍って、カシスの視界を遮った。


 その瞬間——俺はズズズで突っ込んだ。


 氷の壁を突き破って、カシスの懐に。


 外蓋の剣を——カシスの胸に。


 カシスが——にこにこのまま、横に飛んだ。


 剣が空を切った。


「速いですね。でも——」


 カシスの手が、俺の蓋に触れた。


「〝水牢拘束(すいろうこうそく)〟」


 俺の体が水に包まれた。


 水の球体。俺を閉じ込めてる。


 息は——宝箱だから関係ない。でも、ズズズが使えない。水の中で推進力が出ない。


 閉じ込められた。


「これで動けませんね。あとは、海の王の歌の力を回収するだけ——」


 その瞬間、海面が爆発した。


 カシスの足元から、銀色の光が炸裂。


「〝銀牙疾走(シルバーファング)〟ーーー!」


 ガウルが——海中から真上に飛び出した。銀色の体が海面を突き破って、カシスの真下から突き上げた。


「なっ——!」


 カシスのにこにこが消えた。


 ガウルの銀牙がカシスの腹に直撃。


 ドゴォンッ!


 カシスが空中に吹き飛んだ。五メートルくらい。


 水牢の魔法が途切れた。術者がダメージを受けたから。


 俺が自由になった。


〝ガウル、ナイス〟


「ガウ! 水中からの奇襲、犬の得意技だ!」


 犬の得意技なのか。


 カシスが海面に落ちた。水の魔法で着水を和らげたけど、腹を押さえてる。ガウルの一撃は効いた。


「ぐっ……ウォーウルフめ……水中からとは……」


 そのとき——


 海が動いた。


 海流が変わった。カシスの船の周囲の海水が、渦を巻き始めた。


 魚人族だ。


 魚人族が——数十匹、海中から現れた。全員で海流を操ってる。カシスの船を囲むように。


「な、何だ!?」


 カシスの弟子たちが船の上で慌ててる。


 魚人族のリーダーが海面に頭を出した。


蓋を開ける者(オープナー)の味方。海の民は——海の王を傷つける者を、許さない」


 海流がカシスの船を押し流し始めた。岬から遠ざかる方向に。


「止めろ! 船を戻せ!」


 弟子たちが魔法で抵抗してるけど、数十匹の魚人族が操る海流には勝てない。


 カシスが海面の上で、こっちを見た。


 にこにこは、もう消えてる。


「……今回は、退きます」


 カシスが水の魔法で船に戻った。


「ですが——マリウス様の計画は、止まりませんよ。第六、第七の塔。あなたが全てを解放する前に——マリウス様が、先に手を打ちます」


 第六、第七の塔。


「マリウス様が何を目指しているか——あなたはまだ、知らない。七つの塔が全て解放されたとき、何が起きるか。それを知ったら——あなたは後悔するかもしれませんよ」


 カシスが——背を向けた。


 黒い帆の船が、海流に押されて遠ざかっていく。


「さようなら、蓋を開ける者(オープナー)殿。また会いましょう」


 にこにこが最後に、一瞬だけ戻った。


 そして、消えた。


 黒い船が、水平線に消えていく。



 ◇



 海面の上で、氷の足場にぽつんと立ってる宝箱。


 ガルドが魚人族の背中から叫んだ。


「タカラ! 終わったか!?」


〝終わった カシスは撤退した〟


「よし! ……俺、何もしてねえけど」


〝おまえは核を砕いただろ〟


「二個だけな」


〝二個で十分だ〟


 ガウルが海面にぷかぷか浮いてる。犬かきで。


「ガウ。カシス、蹴りたかったな。もう一発」


〝十分だ 腹にいいの入れただろ〟


「ガウ。気持ちよかった」


 ……犬が気持ちよかったって言ってるぞ。


 パカッ。


 マリウス派を撃退した。


 でも——カシスの最後の言葉が気になる。


「七つの塔が全て解放されたとき、何が起きるか」。


 マリウスが何を目指しているのか。


 博士に聞いた。


〝博士、七つの塔が全部解放されたら、何が起きる〟


『……正直、知の王の知識の中にも、確実な情報はない。だが——一つだけ、伝承がある』


〝伝承?〟


『七つの封印が全て解かれたとき、大陸の魔力が完全に元に戻る。そのとき——大賢者が残した「最後の封印」が解放される』


〝最後の封印?〟


『七人の魔王の上に立つ者——〝|魔王の王〟の封印だ。だが、これが実在するかどうかは、確かめられていない。伝承に過ぎない』


 |魔王の王。


 七人の魔王のさらに上。


 マリウスは——それを狙ってるのか。


 …………。


 その話は、後だ。今は——潮音(しおね)の封印を解くのが先。


 パカッ。


〝戻るぞ 塔の中へ〟



 ◇



 【次回】潮音(しおね)の封印を解く。海の王が選ぶ結末。歌が——海に響く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ