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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第五部 焦土の果て編

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第87話「村が、でかくなってる」


 ベイルの街。


 ドルトンに報告した。


 第四の塔の浄化。灰守(はいもり)の名付け。焦土帯の回復開始。芽吹(めぶき)の里の設立。メブキ。翠兎。マリウスの使者カシス。


 ドルトンが、書類をまとめながら頷いた。


「四基目か。おまえら、ペースが速すぎるぞ」


〝早く終わらせたいからな〟


「焦土帯が回復し始めてるのは、南方の交易路にとっても朗報だ。あの地域を通れるようになれば、南の国々との貿易が再開できる」


 経済的な効果もあるのか。


「セルディス団長にも報告書を上げておく。それと——」


 ドルトンが顔を引き締めた。


「マリウスの動き、気になるな」


〝使者が来た 全面支援を申し出てきた〟


「あの男が善意で動くわけがない。何か企んでる」


〝わかってる 条件をつけて泳がせてる〟


「泳がせるか。賢い判断だ。あの男は、切り捨てるより泳がせた方が動きが読める」


 ドルトンの商人的な判断。使えるものは使う。


「それと——パカラ村に、また新入りが増えてるぞ」


〝また?〟


「封印が解けた地域から、魔物が流れてきてる。おまえらが塔を解放するたびに、周辺の魔物が力を取り戻して、安全な場所を求めてパカラ村に来る」


 ……パカラ村が、魔物の避難所になってるのか。


「最後に聞いた数だと、村の人口が五百を超えたらしい」


〝五百!?〟


 出発したときは三百ちょっとだったのに。


「まあ、帰ったら驚くぞ」



 ◇



 パカラ村に向かう。ベイルの街から半日の道。


 丘が見えてきた。グラドルの巨体が——


 でかくなってる。


 グラドル、前より枝が広がってないか。


 丘の上の村を覆うように、緑が茂ってる。葉っぱが多い。


 門に近づくと——門が変わってた。


 前は丸太を組んだだけの簡素な門だった。今は——石で補強されてる。見張り台も二つに増えてる。


 グリンが見張り台から降りてきた。


「タカラぁ! おかえりぃ!」


〝ただいま 門、立派になったな〟


「ああ、コボルトの大工がいてさ。そいつが全部設計して作ってくれたんだ」


 コボルト。前回帰った時に新入りで来てた八匹のコボルトか。


「大工スキルを持ってるコボルトで、もう村の建築を全部任せてるんだ」


 転スラで言う、リグルドが村を作っていった感じか。各種族が得意分野で村の発展に貢献する。


 門をくぐった。


 ——村の中が、前と全然違う。


 建物が増えてる。前は五十軒くらいだったのが、七十軒以上ある。


 道が整備されてる。前は土を踏み固めただけだったのが、石畳になってる区画がある。


 畑が広がってる。前の倍くらい。ホブゴブリンが農作業してる。ウォーウルフが畑の周りを見回りしてる。


 井戸が増えてる。水場が三箇所に。


 そして——知らない魔物がいる。


 岩トカゲ。蟲型の魔物。小さな飛竜みたいなのが三匹、屋根の上に止まってる。


「タカラ、すごくない?」


 チョンが目を輝かせてる。


〝すごい〟


 本当にすごい。俺が旅に出てる間に、村がどんどん成長してる。


 サガが杖をついて出てきた。


「おかえり。驚いたかの」


〝驚いた 何があったんだ〟


「おまえが塔を解放するたびに、封印が解けた魔物が来る。来た魔物の中に、職人がいた。大工がいた。農夫がいた。それぞれが得意なことを持ち込んで、村を作り替えていった」


 各種族が得意分野で貢献する。転スラのテンペストと同じ発展の仕方だ。


「今、村の人口は五百十二。内訳は——ホブゴブリン三百二十、ウォーウルフ三十八、コボルト二十五、鏡鱗竜十二、鋼蟲十八、岩トカゲ十五、スライム二十四、飛竜三、その他五十七」


 五百十二。


 俺がダンジョンで出会ったときは、ゴブリンが三百匹くらいだった。


〝でかくなったな〟


「でかくなった。もう〝村〟というより〝街〟に近いの」


 パカラ街。……語呂が悪いな。まだパカラ村でいいか。



 ◇



 グラドルが枝を揺らした。


「宝箱。おかえり」


〝ただいま。おまえ、でかくなったか?〟


「うむ。封印が解けた影響で、大地の魔力が増えた。我も少し成長した」


 グラドル、前は三十メートルだった。今は——三十五メートルくらいある。


「枝の範囲も広がった。村全体を覆えるようになった。雨よけにもなる」


 三十五メートルの大樹海(エルダーフォレスト)が村の屋根代わり。


 パカラ村の守護者がさらに強くなってる。


「それと——」


 グラドルが根を一本、俺の前に伸ばした。


「新入りのスライムの中に、変わった奴がいる。おまえに見せたかった」


 変わったスライム?


 アイがぷるんと反応した。同族の気配を感じたのか。


 根の先に——黒いスライムが乗ってた。


 黒い。普通のスライムは透明か水色だ。アイも水色。この黒いスライムは初めて見た。


蓋裏辞典(リッドライブラリ)〟で確認。



 ──────────────────

 〝蓋裏辞典(リッドライブラリ)


  対象:墨液種(ぼくえきしゅ)スライム


  特殊なスライム亜種。

  体液が墨のように黒い。

  文字や図形を正確に再現できる。

  〝生きたインク〟と呼ばれることがある。


  * 蓋文字との親和性:極めて高い

 ──────────────────



 蓋文字との親和性が極めて高い。


〝……こいつ、蓋文字に使えるのか〟


 黒いスライムがぷるんと跳ねた。


 跳ねた先の地面に——文字が残った。黒いインクで。


 綺麗な文字。


〝こいつ、文字を書けるのか〟


「ぷるん」(書けるよ)


 ……書けるらしい。


 アイがぷるんと近づいて、黒いスライムとぷるぷるしてる。仲良くなってる。


「タカラ、その黒いスライム、連れてけば?」


 チョンが言った。


「タカラの蓋文字、遠くからだと見えにくいじゃん。この子がインクを出してくれたら、紙に書けるよ」


〝……確かに〟


 俺の蓋文字は蓋裏に浮かぶ文字だ。近くにいないと読めない。


 この墨液種(ぼくえきしゅ)スライムがいれば、紙に文字を書ける。手紙も書ける。遠くの仲間にも伝言を送れる。


 今まで、俺が「声がない」ことで困る場面が何度もあった。それが解消される。


〝おまえ、名前は〟


「ぷるん」(ない)


〝じゃあ——スミ、でいいか〟


「ぷるん」(いいよ)


 スミ。墨液種(ぼくえきしゅ)スライム。


 アイがぷるん(友達ふえた)。


 パカラ村のスライム勢が増えた。



 ◇



 レイスに会った。


 聖騎士団本部から戻ってきてて、村にいた。


「タカラ。帰ってきたか」


〝ああ。王都の状況は〟


 レイスが書類を出した。


「まとめてある。座って聞いてくれ」


 俺たちは、村の集会所——前はなかった建物だ。コボルト大工が作った——に集まった。


 レイスが報告を始めた。


「一つ目。マリウスの現状。筆頭は一時停止のまま。だが——〝魔物共存政策推進室〟の室長に就任した。王の認可で」


〝カシスが言ってた通りか〟


「そうだ。マリウスは筆頭じゃなくなったが、新しいポストを手に入れた。共存政策推進室は、実質的にタカラたちの活動を監督する部署だ」


〝監督、ね〟


「ただし、俺がセルディス団長と相談して、〝監督権限はない。協力関係のみ〟という制約をつけた。マリウスの部署がタカラに命令することはできない」


〝それは助かる〟


「セルディス団長の尽力だ。あの人がいなかったら、マリウスは完全に監督権限を取ってた」


 セルディスに感謝だな。


「二つ目。マリウスの弟子——銀環は、まだ拘束中。フロストの街のギルドに預けられてる。自白内容は王都に報告済みだが、マリウス自身への追及材料としては弱い。〝弟子が独断で〟の一点張りで通してる」


〝証拠不十分か〟


「現時点では。だが、セルディス団長が独自に調査を続けてる。時間の問題だと思う」


 時間の問題。それまで、マリウスは泳いでる。


「三つ目。王国の世論。タカラたちの評判は——良い。四基の塔を解放した〝英雄〟として、庶民の間では人気がある。貴族の中にも、支持者が増えてる」


〝へえ〟


「特に——焦土帯の回復のニュースが大きい。南方の交易路が使えるようになるかもしれない、って商人たちが盛り上がってる。経済効果の話になると、政治家も動く」


 経済効果。俺がやったことが、金の話に繋がるのか。


「つまり——タカラの政治的な立場は、以前より強くなってる。マリウスが手を出しにくくなってる」


〝博士が言ってたな 〝実績を重ねるほど、マリウスの手は届かなくなる〟って〟


「その通りだ。あと三基の塔を解放すれば、タカラの立場は盤石になる」


 残り三基。


「四つ目。第五の塔の情報」


 レイスが新しい紙を出した。


「セルディス団長の情報網で、少しだけ掴めた。第五の塔は——」


〝どこだ〟


「大陸の西端。海の近く。潮騒の岬(しおさいのみさき)と呼ばれる場所だ」


 西の海。


 今度は海か。砂漠、雪山、焦土帯、海。毎回全然違う場所だな。


「第五の魔王は——〝|海の王〟と呼ばれているらしい」


 海の王。


「それ以上の情報は、まだない。セルディス団長が調査中だ」


〝了解 次は海か〟


 ガルドが横で唸った。


「海……。俺、泳げないぞ」


〝俺も泳げないよ 箱だから沈む〟


「沈むのかよ」


〝沈むに決まってるだろ 宝箱だぞ 海の底のやつだぞ元々〟


「あ、確かに。宝箱ってダンジョンの海底洞窟とかにいるもんな」


〝いるけど、自分で泳いでそこに行ったわけじゃないからな〟


 海の旅は——対策が必要だ。船が要るのか、それとも何か別の方法が。


「ガウ。海か。俺、犬かきならできるぞ」


「犬かきで海を渡る気か」


「ガウ。無理だな」


 全員が、海への対策をまだ何も持っていない。


 ……まあ、それは出発前に考えよう。


 パカッ。



 ◇



 夜。


 丘の上で星を見てる。


 いつもの場所。でも——星の見え方が少し変わった。グラドルの葉っぱが増えたから、木漏れの隙間から見える星になった。


 チョンが来た。


「タカラ、また手紙書いた」


〝三通目か〟


「うん」


 チョンが紙を差し出した。



 〝タカラへ

  はいもりさんにあった

  かなしいおうさまだった

  でもタカラがなまえをつけた

  わらってくれた

  つぎのたびもがんばる

  うみにいくんだって

  およげないけどがんばる

      チョンより〟



 三通目の手紙。


 一通目は「帰ってきてね」。二通目は「もっと強くなる」。三通目は「頑張る」。


 チョンの手紙が、旅のたびに変わっていく。


 収納に入れた。三枚目。


〝ありがとう〟


「えへへ」


 チョンが走っていった。レグナの稽古に。


 パカッ。


 蓋の上でシロ(仮)が耳をぴくっとさせた。


〝おまえも旅、続けるか〟


 シロ(仮)が耳を寝かせた。ここがいいらしい。


〝了解〟


 パタン。



 ◇



 【次回】第五部、完。旅の記録を振り返る。そして——次の蓋へ。

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