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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第四部 氷壁の頂編

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第77話「全部の蓋を、開けるまで」


 パカラ村が見えてきた。


 丘の上。グラドルの巨体。屋根が並んでる。


 グリンが見張り台から叫んだ。


「タカラぁぁぁ! 帰ってきたぁぁぁ!」


〝ただいま〟


 門をくぐった。


 村の住人が集まってきた。ホブゴブリンが手を振ってる。ウォーウルフが遠吠えしてる。コボルトがぱたぱた走ってきた。


 チョンの友達が駆け寄ってきた。


「チョン! おかえり!」


「チョン、王都に行ったって本当!?」


「王様に会ったって!?」


 チョンが胸を張った。


「会った! 俺、王様の前で喋ったんだぜ!」


「うそぉ!」


「本当だって! 悪い大人を告発したんだ!」


 チョンが仲間に囲まれて、興奮しながら話してる。


 ガルドが横で見ながら言った。


「チョン、人気者だな」


〝まあな〟


「おまえの功績も半分くらいはチョンのおかげだぞ」


〝半分は言い過ぎだろ〟


「三割くらい」


〝それくらいかもな〟



 ◇



 サガが出てきた。


「おかえり。話は聞いておる。王都での大立ち回り、ドルトン経由で聞こえてきたぞ」


〝もう伝わってるのか〟


「ドルトンの情報網をなめるなよ。あの男、商人よりも情報が速い」


 サガが笑った。


「それにしても、マリウスの筆頭を一時停止に追い込むとは。やるのう、タカラ」


〝チョンが頑張った〟


「チョンがなぁ。あの子の成長、目を見張るもんがあるな」


 サガが杖で地面をとんと叩いた。


「ワシからも一つ報告がある」


〝なんだ〟


「レイスが王都から帰ってきた。マリウスの動向を監視してくれていたが、式典の後、マリウスは自宅に引っ込んだ。しばらくは動けまい」


〝しばらく、か〟


「油断するな、という意味じゃ」


〝わかってる〟


 マリウスは折れてない。復帰する気でいる。だから——俺たちは、その前に次の塔を解放する。実績を積んで、手が届かない場所まで行く。



 ◇



 グラドルが枝を揺らした。


「おかえり、宝箱。今回は長かったな」


〝長かった 氷山に行って、王都にも行って〟


「おまえの旅は、どんどん遠くなるな」


〝でも帰ってくる〟


「ああ、帰ってこい。おまえが帰ってくる場所は、ここだ」


 三十メートルの大樹が言ってくれると、重みがある。


「それと——」


 グラドルが根を一本、俺の方に伸ばした。根の先に、何か光るものが乗ってる。


「留守の間、森の中に落ちていた。おまえのものか」


 光るもの——蒼い石。


〝何だこれ〟


『レグナの魂の欠片だ。この森のダンジョンに残っていた最後の一欠片だろう』


 博士が言った。


「ガウ。匂い、レグナと同じだな」


 レグナが手を伸ばした。蒼い石に触れた。


 石が——光って、レグナの胸に吸い込まれた。


「……これで」


 レグナの蒼い炎が——少しだけ、また強くなった。


「九割八分。ほぼ完全体だ」


〝残り二パーセント〟


「残りは——おそらく、どこかの塔に。いつか回収する」


 レグナの蒼い炎が、堂々と燃えてる。もう「魂が不完全な骸骨」じゃない。ほぼ完全な蒼烈将軍(そうれつしょうぐん)だ。



 ◇



 夜。


 丘の上で、星を見てる。


 帰ってくると、必ずここに来る。パカラ村の丘の上。星空の下。


 蓋裏を確認した。


 俺のスキル一覧。ちゃんと整理しておこう。


 

 ──────────────────

  タカラ(パンドラボックス)

  ランク:S+


  基本スキル:

   〝収納〟(コピー・強化して返す)

   〝擬態〟(蓋の非表示可能)

   〝蓋文字〟

   〝解封〟(接触→範囲)

   〝査定〟

   〝万蓋(ばんがい)〟(五枚同時展開)

   〝空間収納〟


  戦闘スキル:

   〝五連星(ファイブスター)

   〝武装擬態(アームドミミック)

   〝闘気纏(とうきてん)


  固有スキル:

   〝禁忌の宝箱(パンドラ)


  知識スキル:

   〝蓋裏辞典(リッドライブラリ)


  収納コピー済みスキル:

   ファイアランス

   フロストエッジ

   蔦操作

   白い光弾

   アローレイン

   暗殺者の刃(シャドウエッジ)

   ダークバインド

   尾撃砲(テイルキャノン)

   砂獄牢(サンドプリズン)


  常駐:博士(知の王の断片)

 ──────────────────



 ……こうして見ると、めちゃくちゃ増えたな、スキル。


 冒険者の頃は剣と盾で戦ってた。ミミックになったときは噛みつきとズズズしかなかった。


 パンドラボックスに進化して、万蓋で五枚の蓋を同時に使えるようになった。


 砂漠で尾撃砲と砂獄牢をコピーした。


 戦の王から闘気纏を継承した。


 武装擬態で蓋が武器になった。


 知の王から蓋裏辞典をもらった。


 そして、博士が常駐してる。


 俺は——強くなった。


 でも、まだ足りない。


 あと四基の塔がある。四人の魔王がいる。マリウスもいる。


 蓋裏に表示されてる、第四の塔の情報を見る。



 ──────────────────

  解放済みの塔:3基

  残り:4基


  第4の塔:南の焦土帯

  ──詳細情報取得中──


  * 博士からの補足情報:

   「南の焦土帯は、八百年前の

    大戦で焼かれた不毛の大地。

    第四の魔王は——

    情報が少ない。

    知の王の知識にも、

    ほとんど記録がない」

 ──────────────────



 知の王の知識にもほとんどない。


 知の王が知らない魔王。


〝博士、知の王が知らないって、あり得るのか〟


『あり得る。七人の魔王は、全員が親しかったわけではない。特に南の焦土帯の魔王は——情報そのものを拒絶する存在だったと、わずかな記録にある』


〝情報を拒絶?〟


『それ以上は、私にもわからない。知の王の知識の三割の中に、南の魔王の情報はほぼ含まれていない』


 ……今までで一番、情報が少ない塔か。


 博士も役に立たない領域。査定で見るしかない——いや、南の塔も査定が効くかどうかわからない。


 まあ、それは行ってから考えよう。


 パカッ。



 ◇



 チョンが来た。


「タカラ、起きてる?」


〝起きてる〟


「あのね」


 チョンが、紙を差し出した。


 蓋文字で書かれてる。前の手紙と同じ、ぐにゃぐにゃの字。でも——前より少しだけ上手になってる。



 〝タカラへ

  おうさまのまえでしゃべった

  こわかったけどしゃべれた

  つぎのたびもいっしょにいく

  もっとつよくなる

  ぜったいなる

      チョンより〟



 …………。


 また手紙。


 前の手紙は「帰ってきてね」だった。


 今回は「もっと強くなる」。


 チョンが成長してる。手紙の中身が、変わってきてる。


〝ありがとう〟


 収納に入れた。前の手紙の隣に。大事に。


「えへへ」


 チョンが笑った。


〝チョン〟


「なに?」


〝おまえ、旅に出てよかったか?〟


「うん! 最高だった! 雪も見たし、王様にも会ったし、悪い人をやっつけたし!」


〝怖かったか?〟


「怖かった。でも——知ろうとしたら、怖くなくなった」


 知ろうとしたら、怖くなくなった。


 俺が教えた言葉を、チョンが自分のものにしてる。


〝次の旅も、行くか?〟


「行く! 絶対行く!」


〝じゃあ、もっと稽古しろ〟


「うん!」


 チョンが走っていった。レグナのところへ。稽古をしに。


 パカッ。


 あの子は、きっと——いつか俺たちの「戦力」になる。


 でも、今はまだ「仲間」だ。


 それでいい。



 ◇



 俺は、収納の中の物を確認した。


 チョンの手紙が二枚。


 博士がいる。


 食料と水の備蓄。


 武器と装備。


 魔石の備蓄。


 亡霊公の骨(まだ埋葬してないけど、いつか静かな場所を見つける)。


 それから——旅の記憶。


 ダンジョンでゴブリンに出会った記憶。パカラ村を作った記憶。塔を三つ解いた記憶。砂漠で仲間を増やした記憶。雪山で知恵を学んだ記憶。王都で政治の蓋を開けた記憶。


 全部、俺の中にある。


 宝箱だから。


 大事なものを、入れておくのが仕事だから。


 パカッ。


 次の旅は——南の焦土帯。


 知の王すら知らない魔王がいる場所。


 どんな蓋が待ってるのか——まだわからない。


 でも——開けに行く。


 全部の蓋を開けるまで、俺は止まらない。



 ◇



 第四部「氷壁(ひょうへき)(いただき)編」——完。



 ◇



 【次回・第五部】南の焦土帯。八百年前の大戦で焼かれた不毛の大地。知の王すら情報を持たない、第四の魔王。新たな旅が始まる。

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