表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第四部 氷壁の頂編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/117

第68話「雪夜の倉庫」


 倉庫の影に身を潜める。


 雪が降ってる。足音が雪に吸われて消える。これは助かる。


 ガウルが匂いを嗅ぎ直した。


「ガウ。中の構成、分かってきた。大人の人間が三人、子供が四人。それと——魔物が一匹」


〝魔物?〟


「人間じゃないやつだ。種類は分からないけど、人間と一緒にいる。雇われてるか、操られてるか」


 使役獣的な魔物が一匹。


 俺はリーリアと、収納の中のガルドに話しかけた。


〝作戦だ 倉庫の入口に俺と擬態のリーリアが行く ガウルとレグナは裏口に〟


「ガウ。了解」


「うむ」


〝中の魔物の正体を確認しつつ、子供を救出する〟


『俺はどうする』


 ガルドが収納の中から尋ねた。


〝中に飛び込む時に出す 奇襲要員だ〟


『了解』


 チョンも収納にいる。


『俺は?』


〝中で待機 戦闘になったら危ないから〟


『はーい』


 チョン、素直だ。「俺も戦う!」って言わなかった。レグナの稽古で、自分の実力をちゃんと理解できるようになったらしい。


 偉いな、十歳のホブゴブリン。



 ◇



 倉庫の正面扉。


 俺は擬態を解いて、宝箱の姿に戻った。閉鎖空間で戦うなら、人間の姿より宝箱の方が便利だ。


 リーリアが扉に手を伸ばす。鍵がかかってる。


「タカラ、鍵が」


〝こうしよう〟


 俺は上面の蓋を、扉の取っ手に近づけた。


〝空間収納〟。


 扉の鍵の部分だけを、収納で抜き取った。


 ぱきっ、と扉が軽く開いた。


「すごい、鍵を抜けるんだ」


〝部分的に物を収納できる〟


 俺たちは静かに扉を開けた。


 中は——薄暗い。


 ろうそくの灯りが一つ、倉庫の中央にある。その周りに、三人の人影。フードをかぶった男たち。


 奥の壁際に、四人の子供。鎖で繋がれてる。


 子供たちが、こっちを見た。


 怖がってる顔。でも、声を上げない。声が出ないように——


 ガウルの匂い嗅ぎが当たってた。「魔物が一匹」。


 子供たちの後ろの暗がりに、それがいた。


 六本足の獣。背中の毛が灰色で、目が黒い。狼の体に、何かを混ぜたような獣。サイズは大型犬くらい。


〝査定〟を使った。



 ──────────────────

〝査定〟


  対象:静寂獣(サイレンス)


  総合戦力:B+

  種族:人工魔物


  * 周囲の音と声を吸収する魔物

  * 元は別種の魔物を改造したもの

  * 改造者:宮廷魔導士派

──────────────────



 静寂獣(サイレンス)


 周囲の音を吸収する。だから子供たちが声を上げられない。叫び声が外に届かない。


 そして——「改造者:宮廷魔導士派」。


 マリウスの派閥が、魔物を改造して使ってる。


 ……これは、もう確定だ。


 マリウスの周辺が、街で人さらいをしてる。



 ◇



 俺は蓋文字をリーリアに見せた。


〝あの獣を最初に潰す 音が戻れば、子供を解放できる〟


 リーリアが頷いた。


 俺は——ズズズで一気に倉庫の中に滑り込んだ。


 倉庫の中の三人のフード男が、こっちを向いた。


「!?」


 声は出てない。静寂獣(サイレンス)の効果で、男たちの叫び声も吸収されてる。皮肉な仕様だな。


 俺は静寂獣(サイレンス)に向かってズズズ。


 左の蓋——〝フロストエッジ〟!


 ……あ、雪山だから氷属性は効きにくいか? いや、今は屋内だ。普通に効くだろう。


 氷の刃が静寂獣(サイレンス)の前足に直撃。


 静寂獣(サイレンス)が体を捻って、避けた——けど、避けきれずに前足の毛が凍った。


 動きが鈍る。


 俺の右の蓋——蔦射出。静寂獣(サイレンス)の首に絡ませる。


 獣が首を振って蔦を弾こうとする。でも、絡んだ蔦は離れない。


 その隙に——上面の蓋から〝アローレイン〟!


 今は屋内、静寂獣(サイレンス)一匹を狙うだけだから、規模を絞った。光の矢が二十本くらい、静寂獣(サイレンス)の頭上から降る。


 静寂獣(サイレンス)が両前足で頭を守った。でも、二十本の矢が体の他の部分に着弾する。


 ドドドッ!


 獣がよろめいた。倒れた。


 戦闘不能。


 獣が消えた瞬間——倉庫の中に、音が戻った。


「!? 何が起きた!?」


「敵だ!」


「子供を捕まえてる現場を見られた——殺せ!」


 フード男たちが懐から短剣を抜いた。


 遅い。


 俺は背面の蓋から——ガルドを射出した。


 ばこんっ!


 収納からホブゴブリンが飛び出してきた。


「ヒャッハー! 久々の戦闘だぁ!」


 ガルドが拳に闘気を込めた。


「〝覇拳(はけん)〟!」


 一人目のフード男の腹に、ガルドの拳。


 ドゴッ!


 男が倉庫の壁まで飛んだ。気絶。


 残り二人。


 二人目が短剣を構えた。俺の方に走ってきた。


 俺は——〝武装擬態(アームドミミック)〟。


 外蓋を、剣の形に変える。


 二人目のフード男の短剣を、俺の剣(蓋)で受け止めた。


 ガキィッ!


 俺の剣に火花が散る。男が驚いた顔をした。


「箱が剣を……!?」


〝箱だけどな〟


 俺は剣の蓋を強く払った。男の短剣が宙を舞った。


 武器を失った男に、リーリアが小さい声で唱えた。


「〝巫女の祈り(プレイヤー)〟——浄化版」


 リーリアの手から、淡い光が出た。


 光が男に触れて——男が、ふらりと膝をついた。


「あ……あれ……? 俺、何を……?」


 男の目が、急に正気に戻った。


 ……今までの目つきと違う。混乱してる。


〝リーリア、どうした〟


「この人、何かに操られてた。微弱な精神魔法。私の浄化で解いたの」


 精神魔法で操られてた。マリウス派の手駒として。


 じゃあ、こいつら本人は——犯人じゃない。


 三人目のフード男も、ガルドが拳で気絶させた後、リーリアが浄化した。男たちが正気に戻って、頭を抱えてる。


「俺たち……何を……」


「子供を……攫ってた……?」


「なんでこんなこと……」



 ◇



 ガウルとレグナが裏口から入ってきた。


「ガウ。終わったか」


〝終わった 子供たちを助ける〟


 奥の子供たちのところに行った。鎖が四本。それぞれの子供の足首に。


 俺は——


 〝査定〟で鎖を見た。普通の鉄の鎖。封印魔法とかは付いてない。


 じゃあ、普通に外せる。


〝空間収納〟。


 鎖の繋ぎ目を、部分的に収納で抜き取った。


 鎖が外れた。


 四人の子供たち——男の子二人、女の子二人。年齢はチョンと同じくらい。


 全員、怯えてる。声が出ない。静寂獣(サイレンス)の効果が抜けきってないのか、それとも長期間声を出せなかった反動か。


 リーリアがしゃがんで、一人の女の子に手を伸ばした。


「もう大丈夫だよ。怖いことは終わったから」


 女の子の目から、涙がこぼれた。


 声を出さずに、声を上げずに、ただ涙だけ。


 四人とも、無事だ。怪我はしてない。でも、心がだいぶ削られてる。


 ……マリウス派、何のためにこんなことを?


 チョンを収納から出した。すぽん。


「タカラ、終わった?」


〝終わった でも、この子たちが怖がってる〟


 チョンが四人の子供を見た。同じくらいの年齢。


 チョンが、女の子の前にしゃがんだ。


「俺、チョン。よろしく」


 女の子がチョンを見た。


「タカラが助けてくれたんだよ。タカラ、宝箱だけど、強いんだ。だからもう大丈夫」


 チョンが笑った。


 女の子が、ちょっとだけ、笑った。


 ……チョン、子供同士の方が話しやすいか。


 子供の言葉は、子供にしか通じない時もある。


 パカッ。



 ◇



 操られてた男たちを、ロープで縛った。リーリアの浄化で正気に戻ってるけど、念のためだ。


 男のリーダー格に話しかけた。


〝おまえら、誰の指示で動いてた〟


「分からない……。気がついたら、〝子供を集めろ〟って指示が頭に響いて、街で子供を攫って、ここに運んで……」


「俺たち、本来は街の住人だ。仕事は——」


 男たちが顔を見合わせた。


「俺、街の鍛冶屋だ」


「俺、雑貨屋の店主」


「俺、ギルドの受付の親父」


 ……街の人間か。


 マリウス派が、街の住人を精神魔法で操って、子供を攫ってた。


 犯人探しをしても、辿り着くのは「操られた住人」だ。本当の犯人——マリウス派は、別の場所にいる。


〝指示は誰から来てた?〟


「分からん……。声だけが頭に響いて、そのまま体が動いてた」


 精神魔法の指示。誰からかは分からない。


 でも——魔法の発信源を辿れば、犯人にたどり着けるかもしれない。


 俺はガウルを見た。


〝ガウル この男たちから、マリウス系の魔法の匂いがするか〟


「ガウ。する。さっきの静寂獣(サイレンス)と同じ匂いだ。それと、街に漂ってる微弱な匂いとも同じ」


 匂いで魔法を辿れる。


〝じゃあ、街全体の魔法の発信源を探そう 犯人の居場所が分かるはずだ〟


「ガウ。任せろ。雪山の犬の鼻、なめんなよ」


 ガウル、頼もしくなったな。


 砂漠で鼻が効かなかった鬱憤を晴らすチャンスだ。



 ◇



 倉庫の外に出た。


 操られてた男たちは、リーリアの浄化と治療を受けながら、子供たちと一緒に街のギルドに連れて行くことにした。


 ギルド支部長に事情を説明する。


「マリウス派が、街の住人を操って、子供を攫ってた」


 支部長が眉を寄せた。


「子供を、攫って——何の目的だ?」


〝それがまだ分からない 調べる必要がある〟


 支部長が、子供たちを見た。


 四人の子供たちは、ギルドの受付の女性に毛布を巻かれて、暖炉のそばに座ってる。


「とにかく、助けてくれてありがとう。両親に連絡を取る。家族が泣いて喜ぶだろう」


〝俺たちは犯人を探す 街の中に潜伏してる〟


「分かった。俺もできる限り協力する」


 ギルドが味方になった。


 支部長は、最初から街の住人をマリウス派から守りたかったんだろう。ようやく動ける機会が来た。


〝あと、操られてた住人三人の保護も頼む 被害者でもある〟


「分かった。預かる」


 ギルドを出た。



 ◇



 雪の街の通り。


 チョンが俺の隣を歩いてる。


「タカラ、あの女の子、最初すごく怖そうだったけど、笑ってくれた」


〝おまえが頑張ったからだ〟


「俺、ちょっとだけ役に立った?」


〝役に立った〟


「やった!」


 チョンが嬉しそうにする。


 ……この子、ちゃんと旅で成長してる。


 パカラ村の中だけじゃ得られない経験を、今、積んでる。


 ガウルが鼻をひくひくさせてる。


「ガウ。タカラ、街の魔法の匂い、辿れそうだ」


〝場所は〟


「街の北の外れ。教会の方角だ」


 教会。


 ……宗教施設に、マリウス派が潜伏してる?


 それとも、教会そのものが何かの工作の対象になってる?


〝行くか〟


 ガルドが拳を握った。


「いいぜ」


 レグナが蒼い炎をちろっと灯した。


「決着をつけよう」


 雪の街の北へ。


 マリウス派の本拠地が、待ってる。


 パカッ。



 ◇



 【次回】教会の中に隠された、マリウス派の本当の目的。雪山の知の王に繋がる、ある計画。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ