表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第三部 七つの蓋編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/65

第59話「武で、語ろう」


 螺旋階段を上りきった。


 最終階層——七階。


 扉の前に立つ。これまでの階の扉と違って、紋様が複雑だ。古代の文字が刻まれてる。


 俺の蓋裏が反応した。



 ──────────────────

   第二の塔・最終階層


   * この扉を開けば

    戦の王と相対します

   * 戦の王は対話だけでは

    心を開きません

   * 武で示す必要があります

 ──────────────────



 武で示す。


 パカッ。


〝行くぞ〟


 扉に蓋を押し当てた。紋様が反応する。ゴゴゴゴ……。


 扉が開いた。



 ◇



 中は——広い円形のホールだった。


 他の階よりずっと広い。直径五十メートルくらい。天井が高い。塔の頂点だから、天井に窓があって、空が見える。砂漠の青い空が。


 ホールの中央に——一人、立っていた。


 大きい。三メートルくらいか。砂鬼将(さきしょう)より少し背が低い。でも、骨格が違う。鬼じゃない。人間に近い体型——でも筋肉がでかい。


 全身に赤い鎧。どこか古代の戦士みたいな造形。


 頭は——兜じゃなくて、剥き出し。短く刈り上げた赤い髪。日焼けした褐色の肌。鋭い目つき。年齢は、四十代くらいに見える。


 両手に——剣。


 左手に長剣、右手に短剣。二刀流。


 戦の王。


 ……封じられて八百年経つ魔王が、こんな現役感のある姿で立ってる。


 目を、合わせた。


 戦の王が——わずかに口角を上げた。


「来たか、蓋を開ける者(オープナー)


 重さのある声だ。怒鳴ってるわけじゃないのに、ホール全体に響く。


「我の塔を、この階まで上ってきたか。配下の試練を全て突破して」


〝そうだ〟


 俺の蓋文字を、戦の王が見た。


「ふむ……宝箱が、文字を出すか。面白い」


 戦の王が剣を構えた——わけじゃない。剣を持ったまま、両手をだらりと下ろしてる。


「だが——何の用で来た?」


〝おまえを浄化しに来た〟


 ガルドが横で拳を握った。レグナが蒼い炎を灯した。ガウルが唸った。ナギが下半身の蛇を巻いた。リーリアが後ろで深呼吸した。


 戦の王の目が——細くなった。



「浄化、か。……この我を消すか?」


〝消すんじゃない 送り出す〟


「言葉遊びだな。結果は同じ——我は、もう存在しなくなる」


〝そうだ〟


 戦の王が——目を伏せた。


「……望むところだ」


 え?


「我は、もう疲れた。八百年の眠りの中で、ずっと考えていた。もういい、と」


 戦の王が剣を下ろした。


「だが——」


 目を上げた。


「ただ消えるのは、武人としての作法に反する」


 戦の王が、両手の剣を構え直した。


「我は、強き者と語り合いたかった。それが我の願いだった。八百年前、それを誰も理解しなかった——いや、最後に一人だけ、理解した者がいた」


〝大賢者か〟


 「大賢者は、我の願いを理解した。だが——同時に、我の戦いを止めるべきだとも判断した。だから、封じた。我の願いを尊重しつつ、我を止めるために」


 大賢者は知ってたんだな。戦の王が「戦をやめたい」と思ってたことを。


「我は、八百年眠った。誰とも語らずに。だから——最後に、一度だけ」


 戦の王が、剣を構えた。本気の構え。


「武で、語ろう。我と」


「強き者と語り合いたかった、我の願いを。最後に叶えてくれ」



 ◇



 ……これが、戦の王の願いだったのか。


 戦って、勝つことが目的じゃない。


 武で語ることが、彼なりの対話だった。


 砂鬼将(さきしょう)が言ってた。「あの方を、力で負かしてやれ」。


 亡霊公(ぼうれいこう)が言ってた。「我らは十分に戦った。もう眠っていい」。


 配下たちは——王の願いを知ってたんだ。だから「武で語る」ことを、俺たちに託した。


 パカッ。


 俺は、蓋文字を出した。



〝武で語ろう〟

〝俺たちが、おまえと〟



 戦の王の目が光った。


「よかろう」


 でも、俺は付け加えた。



〝言っておくけど〟

〝俺には、奥の手がある〟

〝固有スキル〟

禁忌の宝箱(パンドラ)

〝相手を空間ごと飲み込む技だ〟



 戦の王が眉を上げた。


「そのような技があるか」


〝でも、おまえには使わない〟


〝おまえとは、武で語る〟

〝おまえの願いを、踏みにじりたくない〟


 戦の王が——一瞬、呆けた顔をした。


 それから笑った。


 大声で。豪快に。


「ハハハハハハハハハハハハハハハッ!」


 ホール全体に笑い声が響く。


「面白い! これは面白い宝箱だ!」


 戦の王が——剣を握り直した。


「奥の手を持ちながら、それを使わぬと宣言する。武人の流儀だな。それも、最高の流儀だ」


 戦の王が地面を蹴った。


「ならば——応えよう」


 戦の王の体から、赤い闘気が立ち昇った。


 ガルドの覇拳(はけん)の闘気とは比べ物にならない量。比べ物にならない密度。


 ホール全体の空気が——重くなった。



 ──────────────────

 〝戦の王のスキル:無双闘気(ウォーロードオーラ)

   闘気を全身に纏う。

   周囲の弱者は気圧されて

   動けなくなる。

 ──────────────────



 ガルドが——足を踏ん張った。


「ぐっ……重ぇ……」


 ガウルが床に伏せかけた。


「ガウ……体が……!」


 ナギが下半身の蛇を強く巻いた。


「これが……魔王の闘気か……!」


 Aランク以下が、闘気だけで動けなくなる。


 でも——


 レグナが前に出た。


「〝蒼き炎の鎧ロア・フレイムアーマー〟」


 蒼い炎がレグナの全身を包む。鎧になる。


 蒼い炎の鎧が——赤い闘気を弾いた。レグナの周囲だけ、闘気の影響が薄い。


 レグナが他の仲間たちを、蒼い炎で包んだ。


「我の鎧の領域に、皆を入れる」


 ガルドが体を起こせるようになった。


「お……動ける」


 ガウルもナギも、立ち上がった。


 戦の王が——感心した顔をした。


「蒼の炎を纏う骸骨か。我が知っておる炎ではないな……対話の王の側にいた、四将軍の一人か」


 レグナが頭を下げた。


「死霊将軍レグナ。お初にお目にかかる、戦の王よ」


「そうか。対話の王の将軍が、蓋を開ける者(オープナー)の側にいるのか。世は変わったな」


 戦の王が両手の剣を構えた。


「では——始めよう」



 ◇



 最初に動いたのは——ガルドだった。


「いっくぜぇ!」


 ガルドが正面から突進。〝覇拳(はけん)〟で殴りかかる。


 戦の王が——左手の長剣で、ガルドの拳を受けた。


 ガキィッ!


 拳と剣がぶつかる音。普通なら拳が斬られる——でも、ガルドの拳は闘気に包まれてる。剣で斬れない。


 戦の王が片手で受け止めて、笑った。


「拳に闘気か。我の流儀に近いな」


 戦の王が右手の短剣を下から振り上げた。ガルドが咄嗟に飛び退く。短剣が頬を掠めて、血が一筋流れた。


 ガルドが舌打ちした。


「速えな……一撃で持っていかれかけた」


 戦の王が二刀流のまま、ゆったりと構えた。


「これは小手調べだ。本気の一撃を受けてみよ」


 戦の王が地面を蹴った——


 いや、消えた。


 ガルドの正面から、戦の王が消えた。


 ガルドが反応する前に——背後に現れていた。


「な——」


 長剣がガルドの背中に振り下ろされる。


 ガルドが間に合わない——


〝ガルド!〟


 俺が万蓋から〝空間収納〟を発動。戦の王の長剣を、蓋で吸い込もうとした。


 でも——剣は吸い込まれなかった。


 戦の王が剣を引いた。一瞬で。


「ほう……空間収納か。これも面白い」


 戦の王が俺を見た。


「だがその技、我に向けて使ったな?」


〝おまえじゃなく、おまえの剣だけ吸い込もうとした〟


「同じことだ。武人の武器を奪うのは、武人本人を倒すのと同じだ」


 戦の王が舌打ちした。


「これは——もう少し、我の流儀を理解してから挑むべきだったな」


 戦の王が両手の剣を、地面に置いた。


「武器を取り上げられるのなら——我から放棄しよう」


 戦の王が素手で構え直した。


「素手でも、おまえたちには負けん。受けてみよ」


 ……戦の王、武器を捨てた。


 武器を持たない武人。


 でも——構えが、さっきまでより危険だ。剣を持ってるときより、隙がない。


 戦の王の素手の方が、二刀流より強い気がする。


 ガルドが息を呑んだ。


「……とんでもねえな、こいつ」


〝同感だ〟


 でも——戦うしかない。


 武で語る。それが、戦の王の願いだ。


 パカッ。


〝全員、行くぞ〟


 ガルドが拳を構え直した。


 レグナが蒼炎剣を握り直した。


 ガウルが体勢を低くした。


 ナギが砂——いや、ホールの岩を砂に変え始めた。


 リーリアが後方で巫女の祈りを準備した。


 六対一。


 戦の王が、笑った。


「来い」



 ◇



 【次回】戦の王との武の語らい。タカラの全スキルが試される。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ