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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第三部 七つの蓋編

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第55話「赤い闘技場」



 翌朝。


 第二の塔の前に立った。


 近くで見ると——でかい。三十メートルくらいあるのか、細長い尖塔だ。白い石でできてる。表面に赤い紋様が刻まれてる。


 ドレイクが見上げた。


「俺はこの塔を三年守ってきたが、中に入るのは初めてだ」


〝開け方は?〟


「わからん。塔守の資格がない俺には、扉は反応しないからな」


 レイスのときと同じだ。塔守の権限が要る——


 でも、今日はレイスはいない。パカラ村にいる。


 扉の前に立つ。白い石の扉。紋様が刻まれてる。


 俺の蓋裏が反応した。



 ──────────────────

   第二の塔の封印術式を検出


   通常解錠:塔守の資格+巫女の魔力

   代替解錠:第一の塔を解放した者


   *代替条件を満たしています

    解錠を実行しますか?

 ──────────────────



 代替条件。第一の塔を解放した者。俺のことだ。


 塔を一つ解いた実績が、次の塔の鍵になる。


 実行。


 ゴゴゴゴゴ……。


 重い音がして、白い石の扉が開いた。


 中から——冷たい風が吹き出してきた。


「……入るか」


 ガルドが拳を鳴らす。レグナが蒼い炎をちろちろさせる。ガウルの耳が立つ。ナギが舌をちろちろさせる。リーリアがフードを深く被る。


 パカッ。


 ズズズで扉を抜けた。



 ◇



 中は——広かった。


 外から見たら尖塔なのに、中に入ると広い。円形のホールだ。直径二十メートルくらい。天井が高い。螺旋階段が壁伝いに上に伸びてる。


 そして——赤い。


 白い石の塔のはずなのに、内部は赤かった。壁が赤い岩に覆われてる。床も赤い岩。


「これは……」


 ナギが呟いた。


「闘技場みたいだ」


 闘技場。まさにそれだ。円形のホール、周囲の壁、岩の質感。どこかの闘技場をそのまま塔の中に再現したみたいな造り。


 ドレイクが外で言ってた通り、第一の塔とは全然構造が違う。


「上がろう」


 ガルドが螺旋階段を指差した。


 上に登らないと先に進めない。


 階段に足をかけた——瞬間、床が光った。


 赤い紋様が床に浮かび上がった。


 そして——空中に文字が浮いた。


 金色の光で書かれた文字。



 ──────────────────

   第一階層の試練


   この階に入った者よ。

   上を目指すなら、この階の戦士を倒せ。

   逃げることは許されない。

 ──────────────────



 試練。


 ガウルが唸った。


「ガウ……来る。何かが出てくる。石の壁の中から」


 壁が——動き出した。


 赤い岩の壁の表面が、ぼこっ、と盛り上がった。


 そこから——岩人形が出てきた。


 身長二メートル。全身が赤い岩でできてる。目はない。でも頭を巡らせて、こっちを見てる。手に岩の剣を握ってる。


 一体じゃない。


 壁のあちこちから、岩人形が現れ始めた。


 二体、三体、五体、十体——


 気がついたら、ホールの中に十体の岩人形が立ってた。


 全員が武器を持ってる。剣、槍、斧、弓、盾。装備がバラバラだ。


 ドレイクが剣を抜いた。


「……試練、か。面白い仕組みだな」


 ガルドが拳を構えた。


「十対六か。いけるな」


〝相手は岩だ 物理で粉砕できる〟


 岩人形の一体が——動いた。


 剣を構えて、突進してきた。


 速い。ただの岩じゃない。Bランク相当の敏捷性。


 ガルドが迎え撃つ。


「スキル――〝覇拳(はけん)〟!」


 闘気を込めた拳が、岩人形の胸を叩いた。


 ゴキンッ!


 岩人形が砕けた。胸の中央から亀裂が走って、砂のように崩れていく。


「一体」


 ガルドが拳を振り抜く。


 ドレイクが別の岩人形を斬った。


「スキル〝聖剣閃(ホーリーフラッシュ)〟!」


 光の連撃で首、胴、足を連続で斬る。岩人形が三つに割れた。


「二体」


 ガウルが〝銀牙疾走(シルバーファング)〟で三体目を突き倒す。


「ガウ! 三体!」


 ナギが砂を——砂? 塔の中には砂がない。ナギが少し困った顔をした。


「……俺、ここじゃスキル使えないな」


 砂のない場所で、砂蛇族は戦いにくい。


「いや、待てよ」


 ナギが岩人形を見た。


「岩も、細かく砕けば砂だ」


 ナギが手をかざした。岩人形の一体の表面の岩が——崩れて、砂になった。砂塵舞踏(サンドワルツ)の応用。岩を砕いて砂に変えて、それを操る。


 砂の渦ができて、岩人形が巻き込まれた。


「スキル〝砂塵舞踏(サンドワルツ)〟!」


 砂の渦が岩人形を削っていく。岩人形の体が薄くなっていく。最後には砂そのものになって、ぱらぱらと床に落ちた。


「よし、四体!」


 器用だなナギ。塔の中でもやれるじゃないか。


 レグナが〝蒼き炎の剣ロア・フレイムブレード〟で二体を同時に斬った。蒼い炎の斬撃が岩を焼き切る。


「六体」


 残り四体。


 俺が動いた。


 万蓋——全開。


 五枚の蓋が、全方位に開く。


 残り四体の岩人形が、俺を囲むように四方に立ってる。


 なら——四方に同時。


〝スキル 五連星(ファイブスター)〟!


 五枚の蓋から、五種類のスキルが同時に撃ち出された。


 上面の外蓋:〝ファイアランス〟

 上面の内蓋:〝フロストエッジ〟

 左の蓋:蔦射出

 右の蓋:〝尾撃砲(テイルキャノン)〟(砂帝蠍からコピーしたやつ)

 背面の蓋:白い光弾


 五種類の攻撃が五方向に同時発射された。


 ドォォォンッ! バシィッ! ビュンッ! ドォンッ! パンッ!


 四体の岩人形と、ついでに壁の一部が——吹き飛んだ。


 五発中、四発が岩人形に命中。一発は壁に刺さった。


 全員、砕け散った。


 十体。


 ホールが——静かになった。


 天井から——また金色の文字が降ってきた。



 ──────────────────

   第一階層の試練——達成


   戦士たちよ。よくぞ勝ち抜いた。

   次の階層へ進むがよい。

 ──────────────────



 試練達成。


 螺旋階段の先が——光り始めた。二階への道が開いた。


 ……これ、七階くらいまであるんじゃないよな、と思いつつ、上を見上げた。


 高い。上が見えない。



 ◇



 上がる前に、一息ついた。


 ナギが感心した顔でタカラを見てる。


五連星(ファイブスター)——って、今の何? 初めて見たぞ」


〝さっき思いついた〟


「思いついた!?」


〝万蓋で五種類のスキルを同時に撃てるなら、同じスキルを五発じゃなくて、五種類違うスキルを撃てるだろ〟


「言われてみれば……。でも普通、咄嗟にそんなこと思いつくか?」


 冒険者時代の戦術眼が活きた。敵が四体、四方を囲んでる。同じスキル五発じゃもったいない。性質の違う攻撃を同時に放てば、耐性や防御を崩せる。


 理屈通りに撃ってみたら——ちゃんと全員当たった。


 ガルドが笑った。


「おまえの戦い方、どんどん器用になってくな」


〝宝箱だから 器用さが取り柄だ〟


「宝箱が器用さで勝負とか、聞いたことねえよ」



 ◇



 二階に上がった。


 階段を登りきると——ホールが広がってた。


 一階とそっくり同じ円形のホール。でも、中央に——でかい岩があった。


 岩じゃない。


 岩の巨人だ。


 五メートル。赤い岩の全身。金色の目。でかい棍棒を持ってる。


 一体だけ。でも、でかい。前の砂漠のゴーレムを思い出す。でもこっちの方がでかい。


 空中に文字が浮いた。



 ──────────────────

   第二階層の試練


   この階の守護者は〝岩王(がんおう)〟。

   力で挑め。策略では通じぬ。

 ──────────────────



 力で挑め、策略では通じぬ。


 つまり小細工が効かないってことか。面倒な試練だな。


 岩王(がんおう)が——棍棒を振り上げた。


 ドゴォォォンッ!


 床に叩きつけた。衝撃波でホール全体が揺れる。


「でけえ……」


 ガルドが拳を構えた。


「タカラ、こいつは俺がやる」


〝一人で?〟


「力で挑めって書いてあるだろ。拳は俺の専門だ」


 ガルドが前に出た。


 岩王(がんおう)が棍棒を横薙ぎに振った。ガルドが地面に伏せて回避。風圧で髪が揺れる。


 そのまま突進。岩王(がんおう)の膝まで走って、跳んだ。


「〝覇拳(はけん)〟——連打!」


 ガルドの拳が岩王(がんおう)の腹に六連打。


 ドゴゴゴゴゴゴッ!


 岩王(がんおう)の腹に亀裂が入った。でも——倒れない。五メートルの巨体は、六連打じゃ止まらない。


 岩王(がんおう)が棍棒をガルドに振り下ろした。


 ガルドが躱すのは間に合わない——


〝ガルド!〟


 俺が蔦を射出した。ガルドの体に蔦を巻きつけて、引っ張った。


 ガルドが横に飛んだ。棍棒が床を砕いた。


「……助かった、タカラ」


〝一人でって言ったのに、手伝ってるじゃないか〟


「策略じゃなく援護だ。策略は禁止だが、連携は許されてるはず」


 屁理屈だそれ。でもまあ——


〝わかった 俺は援護だけする 決めるのはおまえだ〟


「任せろ」


 ガルドが再び岩王(がんおう)に向かう。


 今度は——走らない。ゆっくり歩いた。


 拳に闘気を溜めてる。今までで一番濃い闘気。全身の気を拳一つに集中してる。


 岩王(がんおう)が棍棒を振り上げた。ガルドに叩きつけようと。


 ガルドは避けない。


 真正面から——拳を突き出した。


「全力——〝覇拳(はけん)〟ッッ!!」


 闘気が拳から爆発的に放出された。黄金色の光の奔流。


 岩王(がんおう)の腹に直撃。


 ドォォォォォンッッッ!!!


 岩王(がんおう)の巨体に——腹を中心に、蜘蛛の巣状の亀裂が広がった。


 胸、肩、頭、足——全身に亀裂が走っていく。


 岩王(がんおう)が——崩れた。


 砂漠のゴーレムみたいに、全身の岩が砕けて、粉になって、床に積もった。


 五メートルの岩の巨人が、ガルドの一撃で粉々になった。



 ◇



 ガルドが——膝をついた。


「はあ……はあ……」


 闘気を使い切った。でも——倒した。


 ドレイクが駆け寄った。


「……おまえ、今の一撃。前の〝覇拳(はけん)〟の連打より格段に強かったな」


「気を全部込めた。一発に」


「名前はあるのか、今の技」


 ガルドが汗を拭った。


「今……思いついた。〝真覇拳(しんはけん)〟でいいか」


 真覇拳(しんはけん)。シンプルだけど、いい名前だ。


 空中に金色の文字が降りてきた。



 ──────────────────

   第二階層の試練——達成


   戦士の力を認める。

   次の階層へ進むがよい。

 ──────────────────



 達成。次へ。



 ◇



 三階へ。


 階段を登る前に、リーリアがガルドに魔力を注いだ。


「無理しすぎないでね、ガルドさん」


「わりぃ、リーリア。助かる」


 アイがガルドにぷるんとくっついて、傷も治してくれる。


 回復の連鎖。俺の中のチーム。


 レグナが静かに言った。


「……この塔、おそらく階層ごとに試練の方向性が違う」


〝どういうことだ〟


「第一階層は数の戦い。第二階層は力の戦い。次は……速度か、魔力か、あるいは知略か。戦の王は武人だが、愚かではない。武には様々な形があると心得ていた」


 各階層で違う試練。武の多様性を示してる。


 戦の王がこの塔を設計したってことか。自分の死後に挑んでくる者を、様々な形の「戦い」で試す。


 面白い仕組みだ。


「三階、行くぞ」


 ガルドが立ち上がった。


 まだ戦える。



 ◇



 【次回】第三階層。今度は速度の試練。ガウルとナギの見せ場。そして——塔の中で、タカラたちの新たな連携が生まれる。

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