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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第八部 最後の蓋編

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115/117

第115話「全部の蓋が、開いた」



 ダンジョンの五層目から、地上に戻った。


 パカラ村の空が——青い。


 いつもの空だ。でも——なんか、違う。


「ガウ。空気が変わった。大陸全体の魔力の流れが、変わってる。今まで滞ってた魔力が、自然に流れてる」


 七つの封印が全て解けたことで、大陸の魔力が元に戻った。八百年間、封印で歪められてた魔力の流れが、正常に戻った。


 グラドルが枝を揺らした。


「宝箱。大地の魔力が増えた。我も——さらに成長できる」


 グラドル、まだ大きくなるのか。三十五メートルからさらに。


「あと十年もすれば、五十メートルに届くかもしれぬ」


 五十メートルの大樹。パカラ村がグラドルの森になるな。


 村の住人たちが広場に集まってた。


 グリンが飛んできた。


「タカラ! 無事だった!? ダンジョンが揺れて、めちゃくちゃ心配した!」


〝無事だ 全部終わった〟


「全部って——七つの塔、全部!?」


〝全部〟


「うおおおおお!」


 グリンが叫んだ。住人たちが歓声を上げた。


 ホブゴブリンが拳を振り上げてる。ウォーウルフが遠吠えしてる。コボルトが旗を振ってる。スライムがぷるぷるしてる。


 五百八十二人の歓声。


 パカッ。パカパカパカパカ。


 俺もパカパカで応えた。



 ◇



 始蓋(しがい)()を、地上に連れてきた。


 白い宝箱と、白い子供。


 村の住人たちが——二人を見た。


「あれ……宝箱が二つ?」


「白い方が、魔王の王?」


「ちっちゃい子供は?」


 ()がチョンの手を握ったまま、きょろきょろしてる。


「ちょん、ここどこ?」


「パカラ村だよ。俺たちの村」


「むら?」


「みんなが住んでる場所」


「みんな……いっぱいいる」


 ()が住人たちを見てる。目が丸い。


 サガが近づいてきた。


「この子が……第七の魔王かの」


「サガおばあちゃん、この子、()っていうんだ。俺が名前つけたの」


「おまえが?」


「うん!」


 チョンが胸を張った。


 サガがしゃがんで、()の顔を見た。


()。よろしくの」


「……よろしく、おばあちゃん」


 サガが目を細めた。


「いい子だの」



 ◇



 始蓋(しがい)の処遇を考える。


 白い宝箱は——パカパカしてる。村の中をゆっくり移動してる。ズズズ。俺と同じ移動方法。


 住人たちが遠巻きに見てる。


「あの白い宝箱、動いてるぞ」


「タカラと同じだ。パカパカしてる」


「二箱になったのか、うちの村」


 二箱。パカラ村に宝箱が二つ。


 始蓋(しがい)が——噴水の前で止まった。噴水の水を見てる。


 パカッ。


 嬉しそうなパカッ。水が珍しいのか。八百年間、地下にいたから。


始蓋(しがい) ここにいるか?〟


 パカッ。一回。「うん」。


〝パカラ村に住むか〟


 パカパカパカパカ。速い。嬉しいの最上級。


〝じゃあ決まりだ〟


 始蓋(しがい)がパカラ村の住人になった。


 宝箱が二つ住んでる村。世界中探しても、ここだけだろう。


 ()は——チョンがくっついてる。離れない。


()、一緒に遊ぼう」


「あそぶ?」


「走ったり、歌ったり、花摘んだり」


「はなつむ!」


 二人で広場を走り回ってる。子供二人。ホブゴブリンと魔王。


 平和だ。



 ◇



 各地に手紙を送った。スミが六通書いた。


『全ての塔を解放しました。魔王の王は安全に解放されました。マリウスは降伏しました。世界は——平和です。——タカラ(スミ代筆)』


 返事が続々と届いた。


 ナギから。


『おめでとう! 全部開けたか! 砂漠で祝杯だ。飲めないけど! 砂鬼将(さきしょう)が「蓋を開ける者(オープナー)に敬礼する」って、朝の素振りの方角をパカラ村の方に向けた。意味分からんけど、あいつなりの敬意らしい。——ナギ』


 砂鬼将(さきしょう)、素振りの方角で敬意。武人だな。


 メブキから。


『タカラさん、おめでとうございます。焦土帯の緑化が加速しています。大陸の魔力が戻ったことで、翠兎たちの力が増しました。焦土帯の半分が草原になりました。いつか全部緑になります。——メブキ』


 焦土帯が半分草原に。灰守(はいもり)が見たかった景色が、少しずつ実現してる。


 潮音(しおね)から。


『タカラ。海が、今までで一番きれいに歌ってる。大陸の魔力が戻ったから、海の響きが変わった。全ての海が歌ってる。チョンにも聞かせたい。また来てね。——潮音(しおね)


 全ての海が歌ってる。きれいだろうな。


 知の王から。


『祝辞。全塔解放を祝う。なお、六百九十七巻目を読了した。千二百巻の完読まで、あと五百三巻。チョンの訪問を待つ。——知の王』


 知の王、まだ読んでるのか。


 灰港の長老から。


蓋を開ける者(オープナー)殿。南方交易路が完全に開通しました。焦土帯を通る商人が増えています。この街は、八百年ぶりに活気を取り戻しています。全ては、あなたのおかげです。——灰港長老』


 交易路の開通。経済が回り始めてる。


 潮見のミナトから。


蓋を開ける者(オープナー)殿。海の交易が急成長しています。潮音(しおね)さんの歌で海が安全になり、船が増えました。漁獲量も倍です。じいちゃんの夢が叶いました。——ミナト』


 みんなの報告が——幸せだ。


 パカッ。


 全部の蓋を開けた結果が、こういう形で返ってくる。


 嬉しいな。



 ◇



 マリウスは、セルディスが王都に連行した。正式な裁判にかけられる。


 去り際に、マリウスが俺を見た。


「宝箱よ。最後に一つだけ」


〝なんだ〟


「おまえの勝ちだ。認める。だが——」


〝だが?〟


「おまえの作った〝共存〟が、本当に続くかどうか。それは——俺の策より難しいぞ」


〝知ってる〟


「ふん。知ってるか」


〝蓋を開けるのは一瞬だ でも中身を守り続けるのは——ずっとだ〟


 マリウスが——最後に、にこにこした。


 本物の——にこにこ。自嘲でもなく、仮面でもなく。


「……いい答えだ」


 マリウスが去った。


 紫のローブが、丘を下りていった。


 もう——にこにこは見えない。


 カシスが残った。


「カシス、おまえはどうする」


「……分かりません。マリウスの弟子、という肩書きは——もう、意味がない」


〝パカラ村にいてもいいぞ〟


「え?」


〝宮廷魔導士の知識は、村の役に立つ Aランク以上の魔導士が一人いると、防衛力も上がる〟


 カシスが——目を瞬いた。


「私を……受け入れるんですか。マリウスの弟子だった私を」


〝おまえはマリウスじゃない おまえはカシスだ〟


「…………」


〝それに、おまえが言ったんだろ 「いい村ですね」って〟


 カシスの目が——潤んだ。


 にこにこが——戻った。


 でも今度のは、仮面じゃない。本物のにこにこ。


「……お言葉に甘えて。しばらく、お世話になります」


〝歓迎する〟


 パカッ。



 ◇



 【次回】最終話。チョンの最後の手紙。そして——パカラ村の朝。

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