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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第八部 最後の蓋編

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113/117

第113話「パカパカ」


 パカパカが続いてる。


 俺と白い宝箱——魔王の王が、蓋を鳴らし合ってる。


 パカッ、パカッ。パカパカ。パカッ。


 言葉はない。意味もない——と思ってた。


 でも、パカパカしてるうちに——なんとなく、分かってきた。


 白い宝箱のパカパカのリズムに、感情が乗ってる。


 速いパカパカは——嬉しい。


 遅いパカパカは——寂しい。


 一回だけのパカッは——「うん」。


 二回連続は——「もっと」。


 宝箱の言語。蓋の開閉だけで構成された、原始的な対話。


 俺はこのリズムを——体で知ってた。ミミックとして目覚めた最初の日から。パカパカは俺の生命線だった。それが——こいつから来てたのか。


〝……おまえの名前は〟


 蓋文字は消えるけど、パカパカのリズムに意味を乗せて聞いてみた。


 白い宝箱が——ゆっくりパカパカした。


 パカッ……パカッ……パカッ……。


 名前がない。


 七人の魔王に名前を分けた。対話、戦、知——全部、魔王の王の中にあった性質が分かれていった。名前も一緒に。


 残った魔王の王には——何も残らなかった。


〝俺と同じだな 空っぽの箱〟


 パカッ。


〝じゃあ——名前をつけてやる〟


 パカパカ!パカパカ!


 白い宝箱が速いパカパカをした。嬉しい、の意味。


〝おまえの名前は——〟


 考える。


 白い宝箱。七人の魔王の親。全てを分けて、自分は空っぽになった。


 空っぽだけど——蓋がある。


 蓋がある限り、中身は入れられる。


 俺がやってきたことと同じだ。蓋を開けて、大事なものを入れる。


〝——始蓋(しがい)


〝始まりの蓋 全ての宝箱の、最初の蓋〟


 白い宝箱——始蓋(しがい)が、パカパカパカパカした。


 速い。めちゃくちゃ速い。嬉しいの最上級。


「タカラ、あいつ喜んでるぞ」


 ガルドが苦笑した。


「パカパカで会話してるの、傍から見るとすげえシュールだけど」


〝シュールとか言うな 宝箱語だ〟


「宝箱語て」



 ◇



 大賢者の遺産——封印解除、続行。



 ──────────────────

  進行率:50% → 80%

 ──────────────────



 始蓋(しがい)の蓋が、もっと開いた。


 中から——七色の光が漏れた。


 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。七つの色。七人の魔王の色。


 対話の王の緑。(いくさ)(おう)の赤。知の王の青。灰守(はいもり)の灰色。潮音(しおね)の銀。第六の魔王の金。


 そして——第七の色。まだ見たことのない色。淡い白。


 第七の魔王。まだ封印されてる。


『第七の魔王の封印も、この中にある。始蓋(しがい)の中に、最後の一人が眠っている』


 博士が言った。


〝第七の魔王は——始蓋(しがい)の中にいたのか〟


『そうだ。第七の塔は始蓋(しがい)そのもの。塔と魔王の王は、一体だった』


 第七の塔=始蓋(しがい)。最後の魔王は、始蓋(しがい)の中に。


〝解放する〟



 ──────────────────

  進行率:80% → 95%

 ──────────────────



 始蓋(しがい)の中から——白い光の球体が浮かび上がった。


 小さな光。手のひらサイズ。


 第七の魔王の魂。


 光が——形を変えた。


 人型。小さい。子供くらいの大きさ。


 白い髪。白い目。白い服。


 子供だ。


 五歳くらいの子供。男の子か女の子か分からない。中性的。


 目を閉じてる。眠ってる。


「子供……?」


 チョンが目を見開いた。


「第七の魔王って、子供なの?」


始蓋(しがい)から最後に分かれた存在。まだ成長していない。眠ったまま封印された。名前もない、性質もない——〝これから〟の存在だ』


 これから。


 対話の王は「対話」、(いくさ)(おう)は「戦」、知の王は「知」、灰守(はいもり)は「後悔」、潮音(しおね)は「歌」、第六の魔王は「研究」——


 第七の魔王は「これから」。


 まだ何者でもない。何にでもなれる。


 子供の魔王が——目を開けた。


 白い目が、俺を見た。


「…………」


 何も言わない。


 ただ——手を伸ばした。俺の方に。


 俺は蓋を開けた。


 子供の手が、蓋に触れた。


 温かい。


 子供が——くすっと笑った。


「パカ」


 …………。


 パカ。


 この子も——パカパカが分かるのか。


「パカパカ」


 小さな声で、パカパカと言ってる。


 チョンが近づいた。


「こんにちは。俺、チョン」


 子供がチョンを見た。


「……ちょん」


「うん、チョン。よろしくね」


 子供が——チョンの手を握った。


「ちょん、あったかい」


「えへへ。タカラもあったかいよ」


「たから?」


〝俺だ〟


「たから……パカパカ」


〝パカパカ〟


 パカパカで笑ってる。子供の魔王が、パカパカで笑ってる。


 ガルドが頭を抱えた。


「魔王が全員個性的すぎるだろ……」



 ◇



 第七の魔王の名前。


 子供。「これから」の存在。


〝おまえの名前は——〟


 チョンが言った。


「タカラ、俺がつけていい?」


〝え?〟


「俺、ずっとタカラに名前つけてもらう側だった。今度は——俺がつけたい」


 ……チョンが。名前を。


〝いいよ〟


「じゃあ——」


 チョンが子供の魔王の前にしゃがんだ。


「おまえの名前は——()


「め?」


()。芽が出る、の芽。まだ何も咲いてないけど、これから咲く。何にでもなれる。だから——()


 子供の魔王——()が、にこっと笑った。


「め。めめめ」


「そう、()。よろしくね」


「よろしく、ちょん」


 チョンが名前をつけた。


 俺じゃなく、チョンが。


 宝箱の仕事を——チョンが引き継いだ。


 パカッ。



 ◇



 封印解除——最終段階。



 ──────────────────

  進行率:95% → 100%


  * 全封印解除完了

  * 魔王の王(始蓋(しがい))解放

  * 第七の魔王(())解放


  * 七つの鍵、全て解除

  * 大賢者の遺産により

    安全に制御中

 ──────────────────



 全封印解除。


 七つの蓋が——全て開いた。


 始蓋(しがい)の蓋が完全に開いた。白い宝箱の中が——空っぽになった。中にいた七人の魔王が、全員解放された。


 始蓋(しがい)が——ゆっくりと、蓋を閉じた。


 パタン。


 そして——光り始めた。


 白い宝箱が、穏やかな光を放ってる。


 パカッ。


 一回だけ。静かなパカッ。


 「ありがとう」の意味だと、俺には分かった。


「タカラ、始蓋(しがい)は——」


〝大丈夫だ 暴走してない 安全に解放できた〟


 大賢者の遺産のおかげだ。制御しながら解放したから、暴走しなかった。


 大賢者がやりたくてもできなかったこと——七つの鍵を全て外しつつ、魔王の王を安全に解放する。それが、遺産によって実現した。


 パカッ。


 ——その時。


 地面が揺れた。


 ドォンッ、と衝撃。上から。


 ガウルが叫んだ。


「ガウ! 上だ! ダンジョンの上層から——爆発の匂い! それと——マリウスの匂い!」


 マリウス。


 牢にいるはずの。


「脱走したのか!?」


 セルディスが剣を抜いた。


 また爆発。ドォン。天井から石が落ちてきた。


「ダンジョンの入り口を——壊してる!」


 マリウスがダンジョンの入り口を破壊してる。力ずくで。


 最後の言葉。「まだ」。「これで終わりだと思うな」。


 マリウスが——来た。


 パカッ。



 ◇



 【次回】マリウス、最後の介入。ダンジョンの中での最終決戦。全員で迎え撃つ。

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