表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第八部 最後の蓋編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
112/117

第112話「声がない者同士」


 魔王の王。


 金色の光と影が混ざった存在。形が定まらない。人型でもない。ただ——大きい。


 塔の内部空間全体を満たすような存在感。


 声がない。


 俺も声がない。


 蓋文字を出した。でかく。



〝俺はタカラ 蓋を開ける者(オープナー)



 反応——ない。


 蓋文字が見えてないのか。読めないのか。


〝博士〟


『魔王の王は、言語を持たない。文字も理解しない可能性がある。言語以前の存在——原初の魔力体だ。七人の魔王が分かれる前の、混沌とした魔力の塊』


〝言語が通じないなら、どうやって対話するんだ〟


『……分からない。大賢者も〝声が届かなかった〟と記録している。言葉が消される、と』


 言葉が消される。


 俺の蓋文字が——確かに、金色の光に触れた瞬間に薄くなってる。光が文字を飲み込んでる。


 言葉では届かない。


 ガルドが横で言った。


「タカラ、こいつ——敵意はあるのか」


〝ない 怒ってもない ただ——いるだけだ〟


「いるだけ?」


〝動かない 何もしない ただの光と影〟


 セルディスが剣の柄から手を離した。


「戦闘にはならないのか」


〝戦闘じゃ解決しない 大賢者も武力で封じただけだ 対話しないと〟


「対話の方法が——ないのか」


〝言葉が通じない 文字も消される〟


 全員が黙った。


 チョンが——後方から歩いてきた。


「チョン、圧が——」


「大丈夫。ちょっと重いけど、歩ける」


 チョンがゆっくり、塔の中に入ってきた。


「タカラ、言葉が通じないなら——歌はどうかな」


〝歌?〟


潮音(しおね)さんの時、歌で通じたでしょ。歌は言葉じゃないけど、心が伝わった」


 歌。


 でも——俺には声がない。歌えない。


「俺が歌うよ」


 チョンが前に出た。


「子守唄。パカラ村の」


〝チョン、待て この圧の中で——〟


「大丈夫」


 チョンが——歌い始めた。


 パカラ村の子守唄。一番。


 チョンの声が、金色の光の中に響いた。


 声が——消えない。


 蓋文字は消えた。言葉は消えた。でも——歌は消えない。


 歌が金色の光の中を漂ってる。光に溶けずに、浮かんでる。


 魔王の王の光が——揺れた。


 大きく。


「ガウ。反応してる。あの光、歌に反応してる」


 ガウルが言った。


 チョンの歌が届いてる。言葉じゃなく、歌で。


 子守唄の二番。


 魔王の王の光が——形を変え始めた。


 混沌とした光と影が——少しだけ、整い始めた。人型に近づいてる。


 チョンの歌が、魔王の王に形を与えてる。


 三番。


 人型——ではない。でも、何かの形。


 丸い。大きな丸い形。


 宝箱——に似てる。


〝……〟


 魔王の王の形が——箱に似てる。


 蓋がある。大きな蓋。


 魔王の王は——箱だった。


 七人の魔王を中に入れていた、大きな箱。


 蓋が閉じている。中に何が入っているか分からない。


 チョンの歌が終わった。


 魔王の王が——箱の形のまま、静かに光ってる。


〝……俺と同じだ〟


「タカラ?」


〝こいつは——箱だ 蓋が閉まった箱〟


〝中に何が入ってるか、自分でも分からなくて、ずっと閉じたままだった〟


〝八百年も〟


 俺も——ミミックとして目覚めた時、何が自分の中にあるか分からなかった。


 蓋を開けてみるまで、自分が何者か分からなかった。


 魔王の王も同じなのか。


〝蓋を開けてやる〟


 俺は——大賢者の遺産を使った。


 封印の制御。ゆっくり、安全に、封印を解いていく。


 蓋裏に表示。



 ──────────────────

  魔王の王の封印解除


  制御モード:漸進的解除

  進行率:0% → 10%


  * ゆっくり解除しています

  * 暴走の兆候があれば

    即座に停止できます

 ──────────────────



 10%。


 魔王の王の箱の形が——わずかに、蓋が動いた。


 ほんの少し。隙間ができた。


 隙間から——何かが漏れた。


 音じゃない。光じゃない。


 感情だ。


 寂しい。


 ……ものすごく、寂しい。


 八百年、一人で箱の中にいた。七人の魔王が分かれて出ていった後、一人で残った。


 声がないから、呼べなかった。


 蓋が閉じてるから、出られなかった。


 ずっと、一人で。


 チョンが——泣いた。


「タカラ……この子、寂しいんだ……。すごく……」


 チョンの「心の素質」が、魔王の王の感情を受け取ってる。


「ずっと一人だったんだ……。中に閉じ込められて……。誰にも気づいてもらえなくて……」


 大賢者は「対話を試みた」と言ってた。でも——声が届かなかった。


 当たり前だ。


 こいつは箱なんだ。蓋が閉まってるんだ。外から声をかけても、中には届かない。


 蓋を開けないと。


 中から出てきてもらわないと。


〝大賢者の遺産——封印解除、続行〟



 ──────────────────

  進行率:10% → 30%

 ──────────────────



 蓋がもう少し開いた。隙間が広がった。


 感情が——もっと流れてくる。


 寂しさ。不安。恐怖。


 怒りはない。敵意もない。


 ただただ——寂しい。


「チョン、無理するな」


 ガルドがチョンの肩に手を置いた。


「大丈夫……。俺、受け止める。この子の気持ち」


 チョンが涙を流しながら、魔王の王を見てる。


〝続行〟



 ──────────────────

  進行率:30% → 50%

 ──────────────────



 蓋が半分開いた。


 光が溢れ始めた。金色の光。


 光の中に——姿が見え始めた。


 小さい。


 俺より——小さい。


 五十センチくらいの——宝箱。


 黒と金じゃない。白と銀の宝箱。


 蓋がある。紋様がある。鍵穴がある。


 でも——鍵がかかってない。蓋が、半分開いてる。


 白い宝箱が、金色の光の中に浮かんでる。


 魔王の王は——宝箱だった。


「宝箱……?」


 ガルドが目を見開いた。


「魔王の王が——宝箱……?」


〝…………〟


 俺と——同じだ。


 いや、俺がこいつの一部なのか。七人の魔王がこいつから分かれた。ミミックという種族も——もしかしたら、この存在から生まれた。


 宝箱の王。蓋を持つ者の始まり。


〝……お前も、宝箱だったのか〟


 白い宝箱が——パカッと、蓋を動かした。


 パカッ。


 俺も返した。


 パカッ。


 パカパカ。


 パカパカパカパカ。


 白い宝箱がパカパカした。俺もパカパカした。


 二つの宝箱が——パカパカで対話してる。


「……何が起きてるんだ」


 セルディスが困惑した顔で見てる。


「宝箱が二つ、蓋を鳴らし合ってる……」


「ガウ。匂いが——柔らかくなった。さっきの寂しい匂いが、薄くなってる」


 パカパカが通じてる。


 言葉じゃない。歌でもない。


 パカパカ。


 宝箱同士の——対話。



 ◇



 【次回】魔王の王の封印が完全に解ける。白い宝箱の中身。そして——マリウスが来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ