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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第八部 最後の蓋編

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111/117

第111話「帰ってきた場所」


 パカラ村のダンジョン。入り口。


 洞窟の口が、暗く口を開けてる。


 ここから入る。最後の塔へ。


 メンバーは十三人と一箱と二匹と一羽。


 俺。ガルド。レグナ。ガウル。リーリア。アイ。チョン。セルディス。聖騎士団五人。収納に博士、スミ。蓋の上にシロ。


 村の住人が見送りに来てた。


 グリンが叫んだ。


「タカラ! 絶対帰ってこいよ!」


〝帰る〟


 サガが杖を突いた。


「チョン。しっかりな」


「うん、おばあちゃん」


 グラドルが枝を揺らした。


「宝箱。ダンジョンの中は、我の根が届く。何かあれば、振動を送れ」


〝ありがとう〟


 パカッ。


 俺は——洞窟に入った。


 全員が続いた。



 ◇



 一層目。


 見慣れた通路。パカラ村の住人が毎日使ってる場所。壁にランプが並んでて明るい。食料の貯蔵室や鍛錬場がある。


 セルディスが周囲を見回した。


「整備されてるな。ダンジョンとは思えない」


〝住人が管理してる〟


「ふむ。立派だ」


 二層目。鍛錬場が広がってる。ホブゴブリンたちが普段から使ってる場所。


 三層目。


 ここで——足が止まった。


 三層目の奥に、小さな部屋がある。


 石の壁に囲まれた、狭い部屋。


 ここだ。


 俺がミミックとして目覚めた場所。


 部屋の中央に——何もない。空っぽ。前はここに宝箱が置いてあった。俺が。冒険者に開けられるのを待ってた宝箱が。


 今はもう何もない。俺が目覚めて動き出したから。


〝…………〟


「タカラ?」


 ガルドが声をかけた。


〝ここが、俺が目覚めた場所だ〟


「……ここか」


〝ミミックとして目覚めて、最初にパカパカした場所〟


 パカッ。


 感慨がある——けど、何の感慨か分からない。人間だった頃の記憶を差し出したから。ここに来たときの記憶も、もう曖昧だ。


 ただ——体が覚えてる。ミミックの体が。ここで目覚めた、っていう感覚だけが。


「タカラ」


 チョンが俺の蓋に触れた。


「ここがタカラの始まりの場所だね」


〝ああ〟


「じゃあ、ここが——旅の終わりの場所でもあるんだね」


〝……そうだな〟


 チョンが笑った。


「行こう。最後の蓋、開けに」


〝ああ〟



 ◇



 四層目に入った。


 ここから先は未探索——いや、先日の調査で一通り歩いた。


 暗い。壁のランプがない。レグナの蒼炎で照らす。完全体の蒼炎は、二十メートル先まで青白く照らせる。


 通路が狭くなった。大人二人が並んで歩けるくらい。


 セルディスの聖騎士団が、前衛と後衛に分かれた。


「前衛二名、後衛三名。タカラたちは中央で」


 さすが軍人。隊列の判断が速い。


 ガウルが匂いを嗅いだ。


「ガウ。魔物の匂いはない。でも——魔力の匂いが濃くなってきてる。下に行くほど」


 下に行くほど魔力が濃い。第七の塔が近い証拠。


 四層目を進む。石の通路。天然の洞窟と、人工的に掘られた部分が混在してる。大賢者の時代に拡張されたんだろう。


 通路の壁に——文字があった。


 大賢者の文字。第六の塔で見たのと同じ字体。



 ──────────────────

  ここより先に、最後の封印がある。


  七つの鍵を持つ者だけが進める。


  ——大賢者

 ──────────────────



 七つの鍵を持つ者。六基の塔を解放した俺。


 俺の蓋裏が反応した。



 ──────────────────

  大賢者の遺産が反応しています


  第七の塔への通行権:

   六基の塔を解放済み ✓

   大賢者の遺産を所持 ✓


  * 通行を許可します

 ──────────────────



 通行許可。


 壁の文字が光って、通路の奥にあった石の扉が——開いた。


 五層目への入り口。


「ここから先が最深部か」


 セルディスが剣の柄に手を置いた。


「何があるか分からん。全員、警戒を怠るな」


 全員が頷いた。


 俺は——扉をくぐった。



 ◇



 五層目。


 広い。


 四層目までの狭い通路とは全然違う。天井が十メートル以上ある。壁が遠い。


 巨大な地下空間。


 そして——中央に、塔があった。


 白い石の塔。高さは——五メートルくらい。小さい。今までの塔と比べると、ずっと小さい。


 でも——存在感がある。


 塔の表面から、微かな光が漏れてる。金色の光。封印の光。


「あれが……第七の塔か」


 ガルドが息を呑んだ。


「小さいな。でも——圧が、やばい」


 圧。


 塔の周囲に、見えない力が渦巻いてる。近づくだけで体が重くなる。


 チョンが足を止めた。


「タカラ……重い。体が」


 チョンにはきつい。Dランクの体では、この圧に耐えるのが精一杯だ。


〝チョン ここで待ってろ〟


「え、でも——」


〝無理するな 後で呼ぶから〟


「……わかった」


 チョンがリーリアの横に退いた。リーリアがチョンの肩に手を置いた。


「大丈夫。タカラが呼んだら行こうね」


「うん」


 聖騎士団も、圧で動きが鈍ってる。Bランクの騎士では、この領域はきつい。


 セルディスだけが平然としてる。


「俺は大丈夫だ。行けるところまで行く」


 俺、ガルド、レグナ、ガウル、セルディス。五人で塔に近づく。


 塔の表面に——扉がある。


 最後の扉。


 俺は蓋を当てた。


 蓋裏が反応。



 ──────────────────

  第七の塔の封印術式を検出


  通常解錠:全塔の解放+大賢者の遺産

 

  * 条件を満たしています

  * 解錠を実行しますか?


  ** 警告 **

  この封印を解くと、

  魔王の王の封印解除が開始されます。

  大賢者の遺産で制御できますが、

  完全な安全は保証できません。

 ──────────────────



 完全な安全は保証できない。


 ……当たり前だ。完全な安全なんて、最初からない。


 どの塔を開ける時も、何が起きるか分からなかった。


 対話の王の時も。(いくさ)(おう)の時も。知の王の時も。灰守(はいもり)の時も。潮音(しおね)の時も。


 毎回——蓋を開けてみるまで、中身は分からなかった。


 でも——開けてきた。全部。


 パカッ。


〝実行〟



 ◇



 扉が——開いた。


 金色の光が溢れた。


 塔の中から——風が吹いた。


 暖かい風。懐かしい風。


 何の匂いだ。分からないけど——懐かしい。


 塔の中に——光がある。


 金色の光の中に——影がある。


 大きな影。


 人の形じゃない。もっと大きい。もっと曖昧。形が定まらない。


 光と影が混ざった存在。


 魔王の王。


 声はない。動かない。


 ただ——そこにいる。


 八百年間。ずっと。


 知の王が言ってた。「魔王の王は意志を持つ。だが言葉を持たない。声がない」。


 俺と同じだ。


 声がない者同士。


 パカッ。


〝……会いに来たよ〟


 蓋文字が、金色の光の中に浮かんだ。


 魔王の王は——動かない。


 でも——光が、ほんの少しだけ、揺れた気がした。



 ◇



 【次回】魔王の王と対面する。声がない者同士の対話。七人の魔王の物語を、親に伝える。

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