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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第七部 天蓋の渓谷編

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第109話「王の目」


 王がパカラ村に入った。


 歴史上初めてだろう。王が魔物の村を訪れるのは。


 王は——馬車から降りた。護衛のセルディスが横に立った。


 マリウスが後ろにいる。にこにこ。


 村の住人が広場に集まってる。五百八十二人の魔物。ホブゴブリン、ウォーウルフ、コボルト、スライム、その他いろいろ。


 王が——村を見回した。


「……ほう」


 それだけ。


 でも、その「ほう」は、良い意味の「ほう」に聞こえた。


 噴水が光ってる。花が飾られてる。道が綺麗。チョンが磨いた俺がピカピカ。


 王が俺の前に来た。


蓋を開ける者(オープナー)


〝陛下〟


「前に会った時は、王城の広間だった。今日は——おまえの家か」


〝家というか、村ですが〟


「良い村だ」


 王が短く言った。


「案内してもらおうか」



 ◇



 村を案内した。


 畑。水路。集会所。コボルトの工房。ウォーウルフの見回り小屋。スライムの浄水施設。


 王が一つ一つ見てる。マリウスも横について見てる。にこにこ。


 サガが茶を出した。前回の査察の時と同じ。翠兎の焼き菓子付き。


「陛下、よろしければ」


 王が茶を飲んだ。


「……うまいな」


芽吹(めぶき)の里から届いた品でございます」


「芽吹の里。焦土帯の自治集落か」


「はい。タカラが第四の塔を解放した後に生まれた集落です」


 王が茶碗を置いた。


蓋を開ける者(オープナー)。おまえが解放した塔の周辺は——全て、こうした集落ができているのか」


〝砂漠にナギの集落 焦土帯に芽吹(めぶき)の里 海に潮音(しおね)の海 それぞれリーダーがいて、自治で運営してます〟


「ふむ。王国の統治から独立した自治集落、か」


 マリウスが口を開いた。


「陛下。これが——問題なのです。王国の統治から独立した勢力が、大陸各地に広がっている。これは、将来的に——」


「マリウス」


 王が手を上げた。マリウスが口を閉じた。


「おまえの意見は後で聞く。まず——見せてもらう」



 ◇



 グラドルを見せた。


 三十五メートルの大樹海(エルダーフォレスト)。王が見上げた。


「……でかいな」


「グラドルです。パカラ村の守護者です」


 グラドルが枝を揺らした。


「ようこそ、人間の王よ」


 王が——少し驚いた顔をした。木が喋った。


「我は大樹海。この村を守っている。宝箱が我を解封してくれた」


「解封?」


〝封印されてた魔物を解放すると、本来の姿に戻ります グラドルも元は小さな木でした〟


「小さな木が、ここまで育ったのか」


〝封印が解けて、成長しました〟


 王がしばらくグラドルを見上げてた。


「見事だ」



 ◇



 最後に——ダンジョンの入り口を見せた。


 パカラ村の地下に続く洞窟。


「ここが——問題のダンジョンか」


〝はい この最深部に、第七の塔があります〟


「そして、そこに——魔王の王の封印がある」


〝あります 大賢者の遺産で制御しながら、安全に解放するつもりです〟


 マリウスが——ここで口を開いた。


「陛下。申し上げます」


 にこにこ。でも声に力がこもってる。


蓋を開ける者(オープナー)は〝安全に解放する〟と言いますが、安全の保証はどこにもありません。魔王の王が目覚めて暴走したら——大陸が滅びます。大賢者すら対話に失敗した存在です」


〝大賢者には力が足りなかった 俺には仲間がいる〟


「仲間? ホブゴブリンとウォーウルフと骸骨ですか? 失礼ですが——」


「マリウス」


 セルディスが一歩前に出た。


蓋を開ける者(オープナー)の仲間は、六基の塔を解放してきた実績がある。おまえの弟子は——何をした? 子供を攫い、魔王の意識を引き抜き、鎖で海の王を縛った」


 マリウスのにこにこが——薄くなった。


「セルディス団長、それは弟子が独断で——」


「弟子の管理責任は、師匠にある。おまえの言葉だ、マリウス」


 マリウスが——口を閉じた。


 王が、二人を見てた。


「マリウス」


「はい、陛下」


「渓谷で——おまえは何をした」


「…………」


蓋を開ける者(オープナー)が遺産を確保した際、おまえは——〝遺産は私がいただく〟と言ったそうだな」


 マリウスの目が——動いた。


「誰が——」


「博士」


 俺の蓋裏から、博士の声が響いた。


『私は知の王の断片です。渓谷のホールでの出来事を、すべて記録しています。マリウスが〝遺産は私がいただく〟と宣言し、部隊に攻撃を命じ、蓋を開ける者(オープナー)たちと戦闘になりました。第六の魔王が介入し、遺産を蓋を開ける者(オープナー)に託しました。以上が事実です』


 博士の証言。知の王の断片による、客観的な記録。


 マリウスのにこにこが——


 消えた。


 完全に。


 冷たい顔。怒りの顔。渓谷で見たのと同じ。


「……陛下。私は——王国のために——」


「マリウス」


 王の声が、静かだけど重い。


「余は、おまえを信じてきた。宮廷魔導士の筆頭として、二十年近く仕えてきた。だが——」


 王がマリウスを見た。


「おまえの目的は、王国のためではなかったようだな」


「……」


「宮廷魔導士筆頭の職を——停止する。今度は、一時ではない」


 マリウスの目が見開かれた。


「陛下——」


「セルディス。マリウスを連行しろ。王都に戻し、正式な調査を行う」


 セルディスが頷いた。聖騎士団の護衛がマリウスを囲んだ。


 マリウスが俺を見た。


 にこにこは消えてる。仮面が剥がれた、素の顔。


「……蓋を開ける者(オープナー)


〝……〟


「これで終わりだと思うな。私にはまだ——」


「連行しろ」


 セルディスが命じた。聖騎士団がマリウスの両腕を掴んだ。


 マリウスが引きずられていく。


 紫のローブが——広場の石畳の上を引きずられていく。


 にこにこが、もう戻らない。


 パカラ村の広場から、マリウスが消えた。



 ◇



 王が俺を見た。


蓋を開ける者(オープナー)


〝はい〟


「ダンジョンの封鎖は行わない。おまえに任せる」


〝ありがとうございます〟


「ただし——条件がある」


〝何でしょう〟


「魔王の王と対話する際、セルディスを立ち会わせろ。王国の安全保障の責任者として」


〝了解しました〟


 セルディスが口元を引き締めた。微かに笑ってる。


「余は——おまえを信じる。六基の塔を解放し、平和に共存する道を作ったおまえを」


 王がパカラ村を見回した。


「良い村だ。余の治める国の中に、こういう場所があることを——誇りに思う」


 パカッ。


 パカパカパカパカ。


 王の前で全力パカパカ。二回目。


 チョンが横で笑った。ガルドが苦笑した。グラドルが枝を揺らした。


 王が笑った。


「その蓋の音は——前も聞いたな。喜びの音か」


〝喜びの音です〟


「ふふ。面白い英雄だ」


 王が——馬車に戻った。


 セルディスが敬礼して、マリウスを連行した聖騎士団と共に去った。


 行列が丘を下りていく。


 パカラ村に——静けさが戻った。


 ガルドが大きく息を吐いた。


「終わった……。マリウス、終わったか?」


〝筆頭は停止された でも——〟


「でも?」


〝あいつの最後の言葉 「まだ」って言ってた〟


「……」


〝油断はできない でも——今は、先に進める〟


 パカッ。


 ダンジョン封鎖は撤回。王の承認を得た。セルディスが立ち会ってくれる。


 第七の塔への道が——開いた。



 ◇



 【次回】第七の塔の準備。ダンジョンの調査。チョンの手紙、五通目。

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