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俺を殺した宝箱に俺が転生してどうすんだよ! ~中に入れたものが全部強くなる収納チート~  作者: ぶらっくそーど
第七部 天蓋の渓谷編

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第103話「選び続ける」


 知識の道を進む。


 通路がまた分岐した。今度は三方向。


 天井に文字。



 ──────────────────

  第三の選択


  三つの宝箱がある。

  一つには真実が入っている。

  一つには嘘が入っている。

  一つには何も入っていない。


  おまえは、どれを開ける?

 ──────────────────



 三つの宝箱。


 分岐点の前に——本当に宝箱が三つ並んでた。


 木の宝箱。俺とは違う、普通の宝箱。装飾もない。ただの木箱。


 ガルドが笑った。


「宝箱が宝箱の前に立ってる」


〝笑うな〟


「いや、面白いだろ」


〝面白くない 仲間だぞ宝箱は〟


「仲間って、あれはただの木箱だろ」


〝……まあ、そうだけど〟


 三つの宝箱。真実、嘘、空っぽ。


〝博士、ヒントは〟


『直接の答えは——いや、今は急いでいる。素直にヒントを出そう。おまえは宝箱だ。宝箱の中身が分かるのは——宝箱だけだ』


 宝箱の中身が分かるのは、宝箱だけ。


〝……査定で見るか?〟


 査定を三つの箱に向けた。


 一つ目。反応なし。


 二つ目。反応なし。


 三つ目。反応なし。


〝査定が効かない〟


『この塔では査定が効かない場合がある。だが——おまえには、もう一つの目がある』


 もう一つの目。


蓋裏辞典(リッドライブラリ)〟。


 辞典を使ってみた。三つの箱に。


 一つ目——反応なし。


 二つ目——反応なし。


 三つ目——



 ──────────────────

 〝蓋裏辞典(リッドライブラリ)


  対象:木の宝箱(三番目)


  * 中身:なし

  * この箱は空です

 ──────────────────



 三つ目は空。辞典で分かった。


 残りは一つ目と二つ目。真実と嘘のどちらか。


 でも——問いは「どれを開ける?」だ。


 真実、嘘、空っぽ。


 知の王の塔で学んだ。「知ったかぶりが一番の不正解」。「判断を保留する」のも答えになる。


 でも今回は違う。開けないといけない。前に進むために。


 真実か、嘘か。


 ……俺はミミックだ。宝箱を開けさせるのが、本来の仕事だ。


 開けた者が何を得るか——それは、開ける者次第。


 真実を開けたら、真実を得る。重いかもしれないけど。


 嘘を開けたら——嘘に惑わされる。


 空っぽを開けたら——何も得ない。


 俺は——


〝一つ目を開ける〟


 理由は——勘だ。ミミックの勘。宝箱を見続けてきた宝箱の勘。


 一つ目の蓋を、俺の蓋で持ち上げた。パカッ。


 中に——光の球がある。


 光が——文字になった。



 ──────────────────

  正解


  真実を恐れない者は、

  先に進む資格がある。

 ──────────────────



 当たり。


 ガルドが拳を振った。


「よし! おまえの宝箱の勘、当たったな!」


〝ミミックだからな 同業者の中身は分かる〟


「同業者って」


 一つ目の宝箱の下に、隠し通路が開いた。先に進める。



 ◇



 隠し通路を進むと、また部屋。


 今度は——壁に十枚の絵が飾られてる。


 天井に文字。



 ──────────────────

  第四の選択


  十枚の絵のうち、

  一枚だけが本物。

  残りは偽物。


  本物を選べ。

 ──────────────────



 十枚の絵。全部似たような風景画。山と川と空。微妙に違うけど、どれが本物か分からない。


 俺は——査定も辞典も使えない。絵画の鑑定は専門外だ。


「タカラ、これ分かるか」


〝分からない〟


「俺もだ。絵とか全然分からん」


「ガウ。匂いで分かるかも——いや、全部同じ匂いだ。石と絵の具の匂い」


 レグナが十枚を順番に見てる。


「……我にも分からぬ。絵画の知識がない」


 リーリアが首を傾げてる。


「どれも同じに見えます……」


 チョンが——一枚の絵の前で止まった。


 三枚目の絵。


「タカラ。これ」


〝何か分かるのか〟


「分かるっていうか……この絵だけ、なんか違う」


〝何が違う〟


「他の絵は、きれいに描いてある。でもこの絵だけ——ここ、この山の端っこが、ちょっとはみ出してる」


 言われてみれば——三枚目の絵の右下、山の輪郭線が微かにはみ出してる。他の九枚にはない。


「完璧に描かれてる絵は、たぶん偽物だよ。本物の絵って、ちょっとだけ粗がある。人間が描くから」


〝……なんでそれを知ってる〟


「知の王の先生が教えてくれた。〝完璧すぎるものは疑え〟って」


 知の王の教え。チョンが知の王の塔で学んだことが、ここで活きてる。


〝三番だ〟


 三枚目の絵に蓋を当てた。


 絵が——光った。



 ──────────────────

  正解


  完璧を疑える者は、

  真実に近い。

 ──────────────────



 また当たり。チョンの観察力。


「チョン、やるな」


 ガルドが感心した。


「えへへ」


 絵の裏に、次の通路が開いた。



 ◇



 次の部屋。次の選択。次の部屋。次の選択。


 連続する選択の試練を、俺たちは一つずつ解いていった。


 五番目の選択:「二人の旅人の証言のうち、どちらを信じるか」→チョンが「どっちも信じない。自分の目で確かめる」と答えて正解。


 六番目の選択:「三つの鍵のうち、どれでこの扉を開けるか」→俺が〝空間収納〟で鍵穴の構造を見て、正しい鍵を選んで正解。宝箱スキルの応用。


 七番目の選択:「この部屋から出る方法は?」→ガウルが匂いで隠し通路を見つけて正解。「壁の裏に、空気の匂いがする」。


 八番目の選択:「この文章の矛盾を指摘せよ」→博士が三秒で解析して正解。「第四文と第七文の時制が一致しない」。


 どんどん進む。


 背後から——マリウスの部隊の足音が、近づいたり遠ざかったりしてる。左の道は力の試練だから、戦闘をしながら進んでるんだろう。


「ガウ。左の道から、戦闘の音が聞こえる。爆発音、金属音、叫び声。派手にやってるな」


 マリウス派は力で突破してる。俺たちは知識で突破してる。


 どっちが先に着くか。



 ◇



 九番目の選択。


 部屋に入った瞬間——声がした。


 今までの石板の文字じゃない。声。


 穏やかな老人の声。


『……ようやく、ここまで来たか』


 全員が足を止めた。


〝誰だ〟


『私は——この塔の住人だ』


 第六の魔王。


『大賢者の……古い友人だった者だ』


 大賢者の友人。


『おまえたちの足音を、ずっと聞いていた。知識の道を選んだのだな。賢明だ』


〝あんたが、第六の魔王か〟


『魔王と呼ばれることには抵抗がある。私は——ただの学者だった。大賢者と一緒に、世界の仕組みを研究していた。魔王と呼ばれるようになったのは、力が強すぎたからに過ぎない』


 学者の魔王。知の王に似てるけど——知の王は知識を蓄える者。この魔王は、知識を「研究する」者。


『九番目の選択だ。ここで問う』


 天井に文字が浮かんだ。



 ──────────────────

  第九の選択


  大賢者の遺産を手に入れたとき、

  おまえはそれをどう使う?


  A:魔王の王の封印を維持する。

    永遠に、封印し続ける。


  B:魔王の王の封印を解き、

    対話を試みる。


  C:魔王の王の封印を解き、

    倒す。

 ──────────────────



 三つの選択肢。


 A:封印維持。安全策。でも——魔王の王を永遠に閉じ込める。七人の魔王と同じことを、もう一人にもする。


 B:封印を解いて対話。リスクが高い。魔王の王が対話に応じるかどうか分からない。


 C:封印を解いて倒す。力ずくの解決。でも——魔王の王がどれだけ強いか、誰にも分からない。


 ガルドが唸った。


「Aが安全だろ。封印しとけば問題ない」


「ガウ。でもそれだと、七人の魔王を封印してた大賢者と同じことになるぞ」


 ガウル、いいことを言う。


 レグナが蒼い炎を揺らした。


「Cは危険すぎる。相手の力が未知数だ」


 チョンが——口を開いた。


「タカラ。Bだよね」


〝…………〟


「だって、タカラはずっとそうしてきたじゃん。対話の王とも、(いくさ)(おう)とも、知の王とも、灰守(はいもり)さんとも、潮音(しおね)さんとも——全員と、対話してきた。蓋を開けて、中を見て、話をして。それがタカラのやり方でしょ」


 …………。


 チョン、おまえ——


「魔王の王だって、蓋を開けて話してみないと分からない。中に何があるかは、開けるまでわからない。タカラが言ったことだよ」


 俺が言った言葉を、チョンが返してきた。


 パカッ。


〝B〟


 俺は蓋文字を出した。でかく。


〝魔王の王の封印を解き、対話を試みる〟


 老人の声が——笑った。


『ふふ。やはりそう答えるか。大賢者と同じことを言う』


〝大賢者が?〟


『大賢者も——同じ問いに、同じ答えを出した。〝対話を試みる〟と。だが——大賢者には、力が足りなかった。対話する前に、魔王の王の力に圧倒されて、封印するしかなくなった』


『おまえなら——できるか?』


〝やってみないと分からない でも、やる〟


『……いい答えだ』


 天井の文字が変わった。



 ──────────────────

  正解


  対話を恐れない者は、

  大賢者の意志を継ぐ者だ。


  先に進め。

  最深部で、待っている。

 ──────────────────



 通路が開いた。最深部への道。


〝行くぞ〟


 パカッ。



 ◇



 通路を走る。ズズズで全速力。


 背後から——足音が加速してる。マリウスの部隊も、最深部に近づいてる。


「ガウ。あいつら、めちゃくちゃ近い。左の道の終わりに着いたっぽい」


 合流が近い。


 通路が広くなった。天井が高くなった。


 そして——大きなホールに出た。


 ホールの中央に——巨大な装置がある。


 金属と水晶でできた、複雑な機械。高さ五メートル。八つの水晶柱が円形に並んでて、中央に一つ、大きな水晶がある。


 七つの水晶柱は、七つの塔に対応してるんだろう。中央の大きな水晶は——魔王の王の封印。


 大賢者の遺産。


 そして——装置の前に、老人が立ってた。


 半透明。知の王と同じ、魂だけの存在。白い髭。穏やかな目。杖を持ってる。


 第六の魔王。大賢者の友人。


「来たか。蓋を開ける者(オープナー)


〝来た〟


 老人が微笑んだ。


「大賢者に似ているな、おまえ。蓋を開けることに、迷いがない」


 ——そのとき。


 ホールの反対側の壁が——砕けた。


 力の道の出口。


 煙の中から——人影が現れた。


 紫のローブ。金の飾り紐。


 にこにこ。


「やあ。お会いできて光栄です、蓋を開ける者(オープナー)殿」


 マリウス。


 本人が来てる。


〝…………〟


「遺産は——私がいただきます」



 ◇



 【次回】マリウスとの直接対決。大賢者の遺産を巡る、最後の戦い。第六の魔王が選ぶ側は——どちらか。

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