表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/24

22話 人を呪わば穴二つ

ーー留置場


「おい!なんでこっちに来るんだよ!

く、来るな!あっちいけ!やめろー!!」

そう言った瞬間男は項垂れる。


「何を叫んでいるんだ!?

おい!聞いてるのか!?」

男の叫びを聞きつけた看守が留置場の檻を開け、男へ駆け寄る。


「おい…まさか…

救急車を呼べ!息をしていない!」

看守の声を聞き、近くまで来ていた警官に呼びかける。


「わ、わかった!」

救急車を呼ぶため警官が走り去っていく様子が監視カメラに写っていた。


ーー翌日

捕らえた犯人が死亡したとの連絡を聞き、真鍋は監視カメラを確認していた。

「おい、これはどうなってんだ?

急に叫び出したと思ったら死んだだと?全く意味わからん…」

真鍋は腕を組み、天井を見上げて目を瞑る。

あの日、明るい森の木々に打ち付けられていた大量の藁人形が脳裏によぎる。

同時にその場にいた修二とのやり取りを思い出していた。


「…はぁあいつに聞いてみるか。」

真鍋はスマホを手に取り、修二へ電話をかける。


ーー事務所


修二のスマホのバイブ音が部屋中に響く。


「修二くん電話きてるよ。」


「はい、わかりました。」

修二が電話を手に取ると連絡の主は真鍋のようだ。

電話に出てスマホを耳に当てる。

「はい、どうしましたか?」


「おー修二か、急に悪いな

ちょっと頼みたいことがあってな。」


「わかりました。

要件は何ですか?」


「昨日捕まえた犯人覚えてるな?」


「はい、それはもちろん。」


「そいつが昨晩、留置場で死んだ。

あの森を知ってるお前に見て欲しいものがある。

あとで時間取れるか?」


「わかりました。

お見舞いは由美子さんに任せてすぐに行きます。」

犯人が死んだことに不思議と驚きはなかった。心のどこかこうなってもおかしくないとあの光景を見た時から感じていたのかもしれない。


「すまんな、だが頼む

着いたら連絡してくれ。」

電話が切れ、由美子へ声を掛ける。


「由美子さん、真鍋さんからお願いがあって、俺は今から警察署へ向かうので、

悠真のお見舞いは一人でお願いしてもいいですか?」


「うん、わかった。

じゃあ私は病院に行ってるから用事が済んだらきてね。」


「はい、お願いします。」


ーー警察署


修二は警察署へ着くと、目の前にいた事務員へ声をかけた。

「すみません、真鍋警部補を呼んでいただけませんか?」


「あの、急に言われても困りますよ。

所属部署などはわかりますか?」


「あー、」

真鍋から何も聞いていなかったことを思い出し、返答に困っていると警察署の通路から聞き覚えのある声がした。


「おい、着いたら連絡しろって言ったろ。」

ノートパソコンを左手に持ち、右手で後頭部を掻きながら歩いてきた。


「修二、早速で悪いが見て欲しいものがある。

お前なら多分なにかわかるだろうしな。」

修二は真鍋の後をついていき、視聴覚室へと足を運び、机にノートパソコンを置いて開く。


「これだ。」

画面には影がゆっくりと壁を通り抜け、確実に犯人へ迫っていた。

「おい!なんでこっちに来るんだよ!

く、来るな!あっちいけ!やめろー!!」

影が犯人と重なった瞬間、犯人は一瞬硬直し、項垂れた。

だが、影は依然として犯人に纏わりついていた。


男の叫びを聞きつけた看守が留置場の檻を開け、男へ駆け寄り

救急車を呼ぶためもう一人の警官が留置場から走り去る所で映像は終わっていた。


「どうだ?何かわかったか?」

真鍋は映像が終わるや否や修二の顔を覗き込みながら聞いた。


「…」

(あれは影だ。でも伝えていいのか?)

そう考えていると、修二は由美子と真鍋が行っていた言葉を思い出した。


(一人だとどうしようもない時もみんなでならどうにかなるかもでしょ。)


(おい、お前の言う“全部”ってのは、

心霊研究家を続けてる理由も含むのか?)


修二は少し息を整え、真鍋の方に顔を向け言った。

「真鍋警部補、これからする話は、信じられないかもしれないですけど、全部本当の話です。」

修二は横に座る真鍋の方を向き、今まで経験してきた全てのことを話した。

姉のことから、それからずっと影の正体を追っていること、俺には影が見えること。


「影…か…

とても信じられんが、あんなもんを見てしまったからにはなぁ…

とりあえず信じてやる。他に説明のしようもないしな。」

真鍋は右手で自分の後頭部を掻きながら、言った。

急に言われても信じられるはずがない。あまりにも荒唐無稽な話としか思えないからだ。


「あと真鍋さんに調べて貰いたくて、持ってきたものがあるんですけど、」

修二は胸元から森の中、大量の藁人形が打ち付けられていた写真を取り出し真鍋に差し出した。


「この中に映っている人たちの身元を確認して欲しいんです。

例えば、病歴や死亡歴などがあるのかどうかを」


「お前、あれの写真撮ってたのかよ。

まぁいい時間はかかるが調べてやるよ。」

そう言って立ち上がり、修二の頭に手を置いて言った。


「影の話もひとまず信じてやるし、他のやつにも話さん。

まぁ話したところで信じてもらえねぇだろうがな。

その、なんだ。正直まだ半信半疑だが、お前が嘘をついているようには見えねぇ。

だが、あまり1人で突っ走るな。まずは俺を頼れ。良いな?」


「…はい」

それ以上の言葉が出てこなかった。

またあの日みたいに否定されるのではないか、そう思っていたから、

真鍋の言葉を聞き、修二の心を縛っていた何かがそっと解けたようなそんな気がした。


「今から少し調べてくるから、ちょっと待ってろ。」

そう言って真鍋は部屋を後にした。


ーー


「おい、佐野ちょっと良いか?」


「はい、真鍋さんどうしましたか?

今ちょうどこの前の事件の報告書ができた所です。」


「そうか、ちょうど良い

その事件で少し調べたいことがあってな、手伝え。」


「わかりました。

それで調べたいこととは?」


「これなんだがよ。」

真鍋は先ほど修二から受け取った写真を取り出し佐野を手渡した。


「ちょっと、なんなんですか!」

一瞬本物なのかを疑いたくなるような、不気味な光景が映し出された写真に佐野は思わず声を荒げる。


「お前知らないのか?

藁人形、呪いとか呪術とか使うやつだよ。」


「それは知ってますよ。

これとあの事件になんの関係があるんですか。」


「あいつの友達悠真だっけか、そいつが刺されただろう。

修二は夜にそれを目撃して、悠真と一緒にギリギリで逃げたらしいんだ。

写真の中に写っている証明写真から、今回の犯人の動機が探れるかもしれない。」


「なるほど、一昨日はそれで修二くんと出かけてたわけですね。」


「そうだ、あのゴタゴタで言うのが遅くなっちまったがな。」

2人とも各々のパソコンに向かい、事件の資料をしばらく探していると、佐野が真鍋の元へ駆け寄り、口を開いた。


「真鍋さん、この写真に写ってる人たちはほぼ全員心不全での死亡記録が残っています。

それに、無事な人達も事故などで負傷歴が確認されてます。

それに、この写真の釘が打ち付けてある場所とほぼ一致してますし、どういうことですか?」

佐野は鋭い視線で真鍋の言葉を待った。


「そうか、俺もわからんわ。

佐野は幽霊とか呪いとか信じるか?」


佐野は親指の爪を唇に当て少し考えた後、口を開いた。

「まぁこんなもの見せつけられると、信じたくもなりますよね。」


「そうだな、俺は信じたくねぇよ。

こんなわけのわからん方法で殺人する事が出来るなら、俺ら警察はお手上げだ。」

真鍋は腕を組み、天井を見上げる。


「まぁわかった。

忙しい所悪かったな。」

佐野に言い、椅子から立ち上がる。


「いえ、いつものことですので、」


「そうかよ、じゃあまた頼むわ。」

そう言って真鍋は修二のいる視聴覚室に戻って行った。


ーー視聴覚室


「待たせたな。

調査終わったぞ。お前の予想通りだったよ。」

そういうと真鍋は修二の隣の席に座った。


「そうですか。」

修二は一瞬目を丸くし、またいつもの表情に戻った。

(正直あまり合って欲しくはなかったが、これで確定した。

物を媒介する影で、人を呪い殺せる可能性があることを)

今まで確証は持てなかった。真鍋の情報で欠けていたパズルのピースがはまったような気持ち良さが心を支配した。


「修二お前、何また笑ってんだよ。」

ここ最近の修二と違い、引き攣ったような口角がどことなく不気味さを感じた。


「俺今、笑ってました?」

修二はキョトンした顔をした後、まだ少し不自由な左手で自分の口を触る。

それと同時に時守の言葉を思い出す。

(君と僕は協力者になれる。)


(俺が?あいつと?じゃあなんで俺は笑ってるんだ?

俺は本当に…)


「修二おい、話を聞いてるのか?」

真鍋は固まる修二の肩を揺すりながら声をかけた。


「あ、はい

なんでしたっけ?」


「話をしっかり聞けよ。

まぁいい何かわかりそうか?」


「影が関係してるのは確かです。

それに先ほども話しましたが、影は基本的に、生前の人の強い思いや周辺の噂によって形作られます。

口裂け女の時は影が憑依してる形でした。

今回は物から人へ影響を与えています。媒介していると言った方がいいかもしれません。」


「おい待て、あれは精神異常者が人を襲ってたってこと話はついたはずだが、あれも影が関わってたのかよ…」


「はい、ですから真鍋警部補が思っているより、影は僕らの生活の側にあります。」


「まぁそれはいい、とりあえずなんでもいいから名前をつけろよ。

このまま影だと何が何だかさっぱりだ。」


「真鍋警部補が決めれば良いのでは?刑事ですし。」


「何言ってんだ?

お前は心霊研究家だろう?なら、さっさとその現象に名前をつけろ!」


「わかりました。」

(口裂け女の時は憑依型と名付けた。なら…)


「媒介型…

分類するとしたら媒介型の影ですかね。」


「なら媒介型だが、同じ事件を起こさないようにするにはどうすればいいと思う?」


「そうですね、その媒介元を潰すしかないんじゃないでしょうか。」


「まぁそうするのが手っ取り早いな。

今日はもういい、さっさと由美子の所に行ってやれ。」

真鍋は席から立ち上がりパソコンを閉じる。


「そうですか。

なら、俺はここで失礼します。」


「おう、出入り口まで送ってやるよ。」


ーー警察署の出入り口


「今日は助かった。

また何かあれば相談するかもしれん。」


「いえ、こちらこそ

何かあれば、相談するかもしれません。」

修二は真鍋に会釈をし、由美子と悠真のいる病院へ向かった。


ーー時守の事務所


暗い部屋で机に向き合い続け、どれだけ調べたのか床に地図や部屋の写真や間取りが写った資料が床一面に広がっていた。


「はぁ、参ったな時間が足りない。

修二くんを頼るか。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ