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17話 取り憑く影

憑依霊とは、

人に取り憑き、

思考や行動に影響を与えるとされる存在である。


突発的な言動の変化や、

記憶の欠落、異常な執着などとして認識されることが多い。


※本作では、憑依霊という概念を、

観測された現象として再解釈しています。

17話取り憑く影

「修二くん」

パシッ!


「ちょ、いきなり何するんだよ、由美子さん。」


「本当に今回は何もなかったから、良かったけど……

少しは自分を大事にして!」

そう彼女は瞼に涙を溜めながら言った。


「はい、すみません……」


「なぁ修二、ありがとうな。

お前がいなかったら俺はどうなっていたか……」


「なんだよ悠真、お前らしくない。」


「それだけ、怖い思いをしたんでしょ

修二くん、私からもありがとう。」


俺は少し照れくさそうに言った。

「なぁ悠真、一緒に帰らないか?」


「すまん、

俺は行くところあるから、またな!」


「おい!悠真!

……わかりました。」


「歓談中悪いが、事情聴取したい。

良いか?3人とも。」


「はい。」



ーー聴取室


「修二くん、事情聴取はこれで以上だ。

そしてこれは聴取とは関係ないことなんだが、

君は心霊研究家を名乗っているそうだが、こんなことやめなさい。」


「……いきなりなんですか。」


「大学生は大学生らしく、学生生活を楽しんでいれば良い。」


「いきなりそんなこと言われても、僕には僕の目的があります。

あなたにとやかく言われる筋合いはありません。」


「………そうか、君がそう言うなら止めるつもりはない。

だがね、俺は独り身だが、由美子のことは娘みたいに思ってる。

これ以上危険なことに首を突っ込んで、由美子を危険に晒してみろ……

タダじゃ済ませないからな…」


「はい、気をつけます。」


ーー待合室


「あ、修二くん

どうだった?叔父さんに何か言われた?」


「いや、何も言われてませんよ。」


「そうなの?

あの人私のことずっと小さい子供だと思ってるんだから…」


「はは、

まぁ心配なんですよ、きっと…」


「お、2人とも終わったのか?」


「うん、悠真くん、修二くん

今日はどこかで食べない?

こんなことがあった後だしさ、気分転換にもなると思うの。」


「はい、わかりました。」


「修二が良いなら、俺も良いぜ。」


ーー帰りの道中


「いやーラーメン美味かったな。

まさか近所にこんなに美味い店があるとはなぁ

豚骨ベースに魚介の出汁が効いてて、スープに絡みやすいちぢれ麺がもう最高でした。」


「悠真くんは食レポ美味いね。

食べた後なのに、お腹すいてきちゃうよ。

ねぇ、修二くん。」


「はい」

どこか上の空で返事をする。

今日遭遇した口裂け女のことを思い出す。


あの"影"はまるで姉さんみたいに影が人間に纏っていたけど、姉さんと敏明さんの件とは決定的にどこか違う気がする……

それは…都市伝説…


「修二!おーい、

聞いてるか?」


「あ、うん

なんの話だっけ?」


「やっぱり聞いてないじゃないか。

俺と由美子さんは帰るぞ。」


「はい、気をつけて。」


「修二くん、またね」


「修二、今日はありがとうな。」


「おう、2人ともまたな。」


事務所に戻り、きょうの出来事を振り返る……


あれは間違いなく、人に憑いた"影"だった。

けど、姉さんの時とは決定的に違った。

たぶん、それは……人の認識……

姉さんのときと、今回の影は目的が違う…


時守も言っていた。影には認知が必要だと…

なら、認知される内容にも左右されるだろう……


だとすれば、都市伝説の口裂け女の目的は、自分が美しいかどうかの確認。

なら、あの影には自分がない、だから人に自分を問うんだ。

だか、その確証はない。


もう一度口裂け女に会うことができたなら…


考えているとスマホが目に入った。


「まぁ、頼むだけならタダか……

もしもし、由美子さんお願いがあるんですけど、」



ーー翌日


「おい……クソガキ……

昨日の話ちゃんと聞いてたのかよ……」


「はい、聞いていました。

ですが、今回会うのは僕だけです。

由美子さんには危険はありません。」


「お前……何か勘違いしてないか?

由美子に危険が迫るのは、もちろんだが、それはお前が危険な目に遭うこととは違うんだぞ。」


「…」


「まぁいい、由美子頼みだ。

今回は特別に5分だけ時間を取ってやった。

本来ならありえないことだぞ……」


「はい、ありがとうございます。」


ーー面会室


「面会は5分だけです。

何かあれば、すぐにお知らせください。」


「はい、わかりました。」


面会室の椅子に腰掛け、目の前の口裂け女に声をかける。


「昨日ぶりですね。」


「ねぇ、私キレイ?」


「俺は修二と言います。

あなたの名前は?」

"影"に憑かれる前の人の意思があるなら、答えるはずだ……


「ねぇ、私キレイ?」


反応がない……

まるで壊れた人形みたいだ。


「あなたはなぜ、人を襲っていたんですか?」


「私、キレイ?」


それでも続ける……


「あなたは自分自身キレイだと感じていますか?」


ガン!


その言葉に反応したのか、

椅子から立ち上がった瞬間に、椅子が後ろに飛んだ。


「どうしましたか?」


「キレイ…」


ガン!


女は面会室のガラスに頭を打ちつける。


「キレイ…」


ガン!!


「キレイ……」


ガン!!!


ガン!ガン!ガン!


面会室のガラスに血が滲んでいく。


「ちょ、何してるんですか!?」


「すみません、面会はこれで終了です。

今すぐ出ていってください。」


「はい、わかりました。」


ーー


「おい、ガキ

お前なにした?」


「普通に質問を続けただけです。」


「言う気がないなら、いいがよ。

お前はこんなこと続けてたらいつか死ぬぞ。」


「そんなことは……」

それに、あの影は問うことで形を成そうとしていた。

"影"タブーを犯すだけじゃない……

犯させる存在もいる……

人に憑く"影"は人を動かすこともできる、

なら理解することで、姉さんに憑いてる影も消せるかもしれない!


「おい!ガキ!

聞いてるのかってお前……


……なんで笑ってんだ……」


「え……俺、笑ってました?」


「はぁ、なに考えてるかわからないやつだな。

とにかく、こんな危険なことはもうやめろ。」


「まだ、辞めれません

けど、由美子さんの安全は保証します。

今日はありがとうございました。」


「おい、待て!

話はまだ!

って行きやがった……」


走り去る修二を見送った……



ーー修二は事務所に戻り、急ぎノートを開く。



今回の口裂け女でわかったこと。


あれは…問うことで形を成そうとする影だ。


影は認知のために人を取り憑く。

なら姉さんの件も取り憑くタイプになる。


そして、取り憑くことは存在の上塗りに近いのかも知れない…

その証拠に口裂け女との会話は成立しなかった。

なら、姉さんに憑いてる"影"を理解し、紐解くことが出来れば、姉さんは目覚める可能性がある。

これは大きな進歩だ。

以後、人に取り憑く"影"を「憑依型」と名付けよう。


俺はそう書き記し、ノートを閉じた。


ーこれで、姉さんの影に近づけた気がする。

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