表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
28/260

0-2-21 犯人発見

「みんな! 編入生のヤクロ・ヒトトセくんだよ。仲良くしてあげて欲しい」

「ヤクロ・ヒトトセです。得意な魔術は爆破系や雷電系。こんな時期に編入しましたが、特に理由はありません」


 教室の子達は良い子ばかりだ。此方へ向ける感情に悪意がない。いじめアンケートで成果が出ないのも頷ける。

 それだけに、何故禁術――魂系統を使ったのかが全く理解出来ない。これだけ穏やかなのに、何故と思ってしまう。隅っこの暗い奴は若干怯えてるが、明確な敵意の色はしていない。


「それじゃあ先生は戻るから、ヤクロくんに何か質問があれば自由にしてくれ。あまり無茶はさせちゃダメだぞ」


 はーい、と全員が答える。


 比較的クラスは女子が多く、自分含めて男子は片手で数えて足りる数だ。クローディアさんも女性だし、魔術と性別には何か関連があるのかもしれないな。

 なんて思っていたら女子に群がられた。背後にも回り込まれており、逃げ場がない。


「ヤクロさんは編入試験トップって本当?」

「編入試験で一人だけ合格したんでしょー?」

「恋人とかいるの?」

「私も雷電系得意だから今度の放課後一緒に練習しない?」


 出るわ出るわ質問の数々。聞き取れたのはこの四つくらいだ。


「一人一人答えてくから、一人ずつ、ね?」


 聞き分けの良い子達だ。自然と出席番号順に質問する流れになった。

 一番多かったのは恋愛関係の質問だった。恋人はいる事にはいるがもう会えないと言ったら場の空気が重くなったが、ギャルっぽい見た目の子がそんなの関係無いと自分の聞きたい事を聞いてきたからなんとか良い感じの空気になった。


 男子からも質問があったが、魔術はどうやって身に付けたのか、そういうのが多かった。異世界人と言えば楽なのかもしれないが、強い先生にならっているとだけこたえた。

 案の定、隅っこの暗い奴は質問してこなかったが、ギャルっぽい見た目の子が何か無いのか投げかけていた。


「ロイドはなんかないのー?」

「ぼ、僕はいいかな」

「ヤクロ、あれロイド、ロイド・マクスウェル。あんなんだけど魔術の知識は一番なんじゃないかな」

「よろしく、マクスウェルくん」

「ロ、ロイドでいいよ。それに、くんも、いらないから」


 うーむ、本当にこの気の弱そうな奴が犯人なのか? あまりにもあんまりで、信じられないんだがな。


『にゃはは、魂を取り込んで不安定なのさ。きっとここ最近ああだと思うよ』

「ロイドったら最近ああでねぇ。前はもう少し話せたんだけどね。ま、悪い奴じゃないよ」

『にゃはは、ほらね?』


 悪い奴です。ギャルっ子が犠牲になる前に解決しますかね。この子は見た目こそギャルっぽいが、気配りが出来る良い子だ。この子に限らずこのクラスの子はみんな優しい。

 そんなクラスの一人の生徒がアレに食われた。二回目はなんとしてでも防ごう。このクラスの平穏は守られるべきだ。


「さて、答えるだけ答えたし、そろそろ帰りますかね」

「ヤクロくんは寮じゃないんでしょ?」

「あー、近くの建物の部屋を借りてるんだ。門限とかはないけど、早く帰るに越したことはないからね」

「そかそか。それじゃ、また明日!」


 このクラスというか学年はこのギャルっ子が仕切ってるのか? 的新入生代表が仕切ってそうだが、アリス・ウェブスターの姿は此処にない。資料で名前と顔は覚えてきた。だからこのギャルっ子の名前も最初から知っていたが、知らないフリをした。


 そうしなくてはあの臆病者は俺がお前の為にやってきたと思ってしまうだろう? それはいけない。本試験に間に合わなかった編入生という設定が今の俺の立ち位置だ。

 待っていろロイド・マクスウェル。今すぐにとは言わない。お前が二回目を達成する前に、その心の臓腑に銀の弾丸を打ち込んでやろう。


 なんて決意を胸に下校する。

 教室にも一応転移魔術のマーキングをしといたからマメネコからの緊急連絡があればいつでもかけつけられる。

 尤も、同じ場所で犯行が起こるとは限らないし、クローディアさんが対策として魂に関する魔術が発動すれば駆け付けられる様に魔術を組んである。


 俺はともかくクローディアさんがいつでも駆け付けられるのは大きい。この世界にやってきてからかなり時間が経ったが、あの人の底は知れない。30メートルの近接魔術戦闘でもあの人は俺の上を軽々といく。

 その辺は経験だと語るが、経験を積んでもあの人には勝てる未来が見えない。そんな人がこの事件に積極的に関わる。なんと頼もしい事か。


 人気のないところ、というか男子トイレで転移魔術を使用して魔術学園近くの魔術協会ではなくクローディアさんの執務室に飛ぶ。


「一応犯人はわかったよ」

「本当ですか」


 おや、この感じだとクローディアさんはアタリを付けてたと見ていいか? あまり反応が大きくない。

 でも情報の共有は大切だからな。しっかり報告。報連相は大事って何処かで読んだ記憶がある。


「ロイド・マクスウェル。見た目は臆病者ですけど、魂が二つあるとこの猫が言うんでね」

「にゃはは、他の子もみたけど魂が二つあるのはそのロイドくんだけだったね」

「いきなり捕縛しても暴れるだけだから泳がせとく。次の実行で現行犯逮捕だな」


 その言葉は正解だったのだろう。

 恐らくクローディアさんも同じ、というかそれしか方法がないから分かってても泳がせてるんだな。


「そうですね。後手に回るしかないですね。それでも犯人が分かっただけ十分な成果です。やっぱり夜黒さんに頼んで正解でした」

「褒めるならこの猫を褒めてあげてください」

「にゃー、僕はすごいなぁ」

「そうだな」


 転移魔術を発動しようとした時、クローディアさんから一言飛んできた。


「あまり無茶はしないで下さいね」


 その言葉に頷くだけで、俺は今の宿へと転移した。

ブックマーク、感想、評価の方よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ