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呉越同舟サポート

「魔王が日本に?」

「恐らくね。フリュウさんに戦う準備をしておけと言われたから、それしかないかな」

「テイルも着いてくるといい」

「了解です」


 今、この家の空気はピリピリしています。

 原因は数分前の電話でした。

 電話に出たフリュウさんが顔を強張らせた理由はこれだったようです。


「あのー、もしかしてこの町に神が集まってるのって……」

「あれ、テイルに言ってなかったっけ?この町が魔王対策局としての最後の砦だって」

「聞いてませんでしたが……だからバケモノみたいな神ばっかなんですか……」

「まったく、霊峰とこの局員がしくじったせいで俺たちが出ることになる」

「ほんとだよー」


 ムラマサさんはともかく、ゲーム三昧のミコトさんにだけは言われたくないと思いますが。

 最後の砦として頑張らなければ。


「準備はできたか」

「私は常に出来てます!」


 嘘つけミコトさん。あなたは部屋でダラダラしてるだけでしょう。


「俺もいつでも」

「マティルダも着いてくる感じかな?」

「是非行きたいです!」

「俺の後ろに隠れててね」

「はい!全力でくっついてます!」


 魔王襲来ってなかなかいいイベントじゃないですか。






「……どうしてここに?」

「見晴らしがいいからさ」


 四人でやってきたのはマンションの最上階のさらに上、屋上は初めて来ましたけど、プールがあるんですね……。

 ちなみに雨が降っても不思議な力で打ち消すとかいう機能もあるそうです。さすが神用。


「プールがあるなら私も使いたかったですよ」

「一応レイティアが管理してるから、許可もらうのめんどうだろ」

「確かに……」


 フリュウさんが盗撮されそうですからね。

 すると後ろから声が聞こえてきました。


「別に許可くらいすぐあげるのに」

「……レイティア、とクロードか」

「魔王を討つための助っ人がきましたよー」

「……どうも」


 レイティアさんの後ろから見慣れない白髪の男性が来ましたね。誰でしょうか。

 なんとなく不機嫌で無愛想な気がするんですけど。


「ミコトさん、あの人は誰です?」

「時神クロード、レイティアさんの従者神だね」

「従者神いたんですね」

「ほとんど天大陸にいるらしいからね、知らないのも無理ないよ。でもちょっと問題があってね」

「問題ですか?」


 レイティアさんの従者が大変すぎるとかですかね。でもそれ私たちには関係ないですし。

 ミコトさん本気で困ってるみたいなのでよっぽどなんですね。


「ま、すぐにわかるよ」

「そうですか」


 本当にすぐでした。


「プールの許可ほしいの?なら私も一緒に入っていいかな?一緒に入れてくれないと許可あげないよ?」

「別に俺は……」

「お嬢様!ダメですよこんな貧乏人と遊ぶなど!関わりを持つことすらやめていただきたいのですから!」

「そんなこと言われても……」

「いいえダメです!貴女のような高貴で神秘的な神が!あんな野蛮な破壊の神と一緒にいてはいけないのです!」


 うわぁ……。

 なるほど、こういうことですか。と思ったらムラマサさんが前に出ました。


「野蛮とは言ってくれるな、時神」

「なんだ幻神。まさかお前、自分に高貴さがあると思っているのか?お嬢様を前にして?」

「創世神の従者程度のやつが、俺の主を侮辱するとは許せん。殺す」

「いいぜ、殺ってみろよ。お前とはいつか勝負をつけないといけないからな」


 ムラマサさんとクロードさんの間に電撃が走っているようです。バチバチ言ってます。


「まぁ、こういうことなんだよ」

「仲が悪いんですね、二人」

「ごめんねフリュウくん。うちの従者が」

「気にしてないよ。そんなの言わせておけばいいさ。どうせクロードくんなんて、俺がその気になれば一瞬で分子レベルにまで粉々に破壊できる」


 めっちゃ気にしてるじゃないですか。


「ムラマサ、状況を考えろよ」

「え、あ……すいません」

「殺るのは構わないが、今は魔王を討つことが先だろう。てなわけでな、お前ら二人で魔王先討ち勝負をしてこい」

「何を勝手なことを言う!俺には破壊神の命令を聞く理由はないぞ!」

「じゃあクロード、それ参加してきてー」


 でましたよ、上の人はわりと理不尽な命令をするんですから……。

 ムラマサさんはやる気、クロードさんは渋々ですが対決することになりました。

 ですが、魔王の質も数もわかっていないのに、二人だけで行かせるのは危険なのでは……。


「フリュウさん、大丈夫ですか?」

「魔王討伐は感知能力と戦闘能力を問われるからな、勝負にはうってつけだぞ」

「そういう質問じゃないですよー!」

「これで俺の仕事も減るし、ゆっくり休日を満喫できるな。何も問題はないぞ」


 いやいやいやいや、ムラマサさんの命が大丈夫なんですかって話ですよ。


「それで勝負しといてくれ。事実、俺たちがここにいるのは魔王を世に放たないためだ。勝った方が仕事ができる男って意味だからな」

「それじゃよろしくねー」

「……なんて無責任な」


 二人はやる気満々なので止めませんが……。






 クロードさんの車にて。

 オープンカーなんですね。金持ちめ。


「というわけでついてきました」

「女性が来てあげたんだよー、喜ぶべきでしょー」

「同居人が来て喜ぶはずないだろう」

「感知だけ頼む。戦闘は邪魔にならないように待機しててくれ」

「二人の邪魔はしないってば」

「私も頑張って隠れてます」


 フリュウさんには内緒で二人の男の真剣勝負についてきちゃいました。

 ミコトさんが言うには、二人とも感知能力はまったくないようで、魔王討伐以前に見つけられるか心配らしいです。

 パッと見てムラマサさんはサポートできるような感じはしませんからね。


「だがテイルはどうしてついてきたんだ」

「心配だったので」

「むしろ不安要素が増えたぞ」

「それはムラマサさんが皆殺しにしてくれればいいだけの話でしょう。出来ませんか?」

「……できるに決まってるだろ」

「ふんっ。そこの赤髪の娘の安全は俺が保証してやる。幻神は引っ込んでいていいぞ」


 はぁ。まぁた始まった。

 しばらくして湾に接した工場地帯に車が入りました。コンビナートが並んで、夕暮れには不気味な雰囲気すら感じる無機質な場所です。


「この中だね。魔王の数は正確にはわからないけど10はいるよ」

「霊峰を抜けて消耗した体を休めているってとこか」

「数日たって活動を開始したら何人喰われるかわからんな。ここで始末する」


 ムラマサさんとクロードさんが工場内に入っていきました。私もミコトさんに守ってもらいながら入りましょうか。

 内部には異形の人形生命体が複数。翼を持っていたり目が赤く光っていたり。とりあえず気持ち悪いです。

 あんまりシリアスにしたくないんですよね。


「こんばんは……と言うより……殺しに来ました」

「魔王対策局だ。お前らを駆逐する」

「あっはっは。アニメ見すぎだねムラマサ」

「のんきなこと言ってないで守ってくださいよ!魔王ですよ!?」


 怖い怖い。ガクブルルですよ。


「ま、大丈夫だって二人に任せとけば」


 ブシャー。

 んっ!?

 血液ブシャー!?


「疲労した魔王なんて相手にならんな」

「幻神、お前何体やった?俺は5だ」

「俺も5だ」

「ちっ」「ちっ」


 一瞬で魔王さん方が切断されてました。怖い。

 ここまでくると魔王さんが無念でしょうね。

 あれ?天井に張り付いてるの魔王なんじゃ……。


「ムラマサさん!クロードさん!上です!」

「んっ!あれ殺ったほうが勝ちでいいな!」

「引き分けで済ます気なんてないわ!」


 ジャキィーン。


「あ……」

「やっべ……」


 天井斬っちゃった……。


「崩れてきたぁぁぁぁ!何やってるんですかムラマサさん!」

「テイル!早く逃げて!」

「時神!お前のせいだぞ!」

「んだと!斬ったのお前だろうが!」


 どうでもいいから助けてぇぇぇ!

 

 私は目をつぶっていました。

 魔王とはいえまだ未熟な私です。大量の瓦礫に押し潰される未来が見えていました。

 ですか、目を開けたら周りに瓦礫はなく、夕暮れの空が広がっていました。






「…………命中ね…………ほんとフリュウくんチート」

「ゲームならともかく、現実世界での性能にチートも不正もないだろう。俺はどっちもしない主義だ、言葉を変えろ」

「じゃあバケモノかな」

「……」


「だってねぇ。私は視界を飛ばして見てるんだけどね、だいたい10キロは離れてる位置で崩れた瓦礫と飛び回る魔王を、指から放った破壊の弾丸で正確に撃ち落とすなんて…………バケモノとしか言えないでしょ」


 しかも肉眼で、と思い出したように追加してレイティアは不満そうに俺を見る。

 俺としては視界を飛ばすのもバケモノだろうと言ってやりたいが。


「戦争系のゲームは全てスナイパーをやっているからな。狙撃は得意だ」

「こんなスナイパーとマッチングしたら私切断すると思うわ」

「レイティアもスナ担げばいいじゃないか」

「私は歩兵じゃなきゃ攻撃当たる気がしないからね」


 ※ここでの歩兵=中距離以下の武器使い

 それはただ単にエイム下手なだけだろう。


「歩兵なんて近づくまでに殺ればいいだけの話」

「そんな上手くいったら苦労しないわよ」

「じゃあ練習しろよ。歩兵なんてすぐ死ぬだろう」

「上手い歩兵はほんとに無敵なんだからねっ」

「ゲームのシステム的に無敵なんてあり得ないだろ」


 どうして理解できないのか、こちらが理解に苦しむ。

 たとえ近づかれても当たれば一撃死。どう考えてもスナ最強だろう。


「アニメだと戦いは剣で描かれているが、それは派手さを演出するため、言ってしまえば現代人の理想のようなものだ。日本の戦はもともと弓で行われている。歩兵ももちろん存在したが、死者の数で見ると一番死んでいるのが歩兵だ。数で押さなければ勝てない、効率の悪い戦法だ」

「これだから効率厨は」

「さっきの戦いも、距離をとって一方的に削っていけば余裕で殲滅出来ていただろう。下手に突入するからピンチになって……結局俺が助けることになるじゃないか」

「ふふふ、この発言を二人が聞いたら全力で否定するよ?別に助けなんかいらなかったって」

「……」

「過保護なんだから」

「うるさい。ムラマサもミコトもマティルダも大切な…………」


 何をバカなことを言っているのか俺は……。

 レイティアがニヤニヤしているからとりあえず縛っておくか。

 レイティアぐるぐる巻き。


「だいたいマティルダがいるから過保護になってんだよ。あんな半人前を連れてくせいで俺が見守ってなきゃならなくなる」

「それは仕方ないでしょ。誰でも半人前の期間はあるんだから、守ってあげないと。で、なんで縛るの」


 顔がうるさいからだ。


「はぁ。アイツらが帰ってきたら思いっきり説教してやる」

「えー。なんでなんでー」

「俺たちに迷惑をかけないとか言って出ていったのに……あんだけ派手に建物壊しやがって……」

「あー……あはは」

「記憶消去の後始末するの俺なんだからな。ふざけやがって」

「私も……壊れたもの全部修復かぁ。だからとりあえず解放してよ」


 この後、むちゃくちゃ説教した。

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