破壊神と魔王の悩み③
「実はですね……フリュウさんに伝えたいことがありまして、場所を選ぶ話なのでいろいろ試してみたんですよ」
「ははーん。恋愛相談だなー?」
「はい…………あんま聞かないでください」
「なるほどなるほどー(恋愛となるとあの破壊神に告白、魔王と恋に落ちたなんて話が出回ったら立場を悪くするだけだというのに。今の段階ですらタブーってわかっているのかしら)」
うわぁ、嫌な顔してるぅ。
合法ロリな顔して辛口なんですから。
「具体的に言うとですね。お風呂に誘ったり夜中部屋に誘ったりしたわけなんですよ」
「けっこう攻めたね」
「人間、本当になりたいことやしたいことに対しては凄まじい行動力を発揮しますから」
「ちょっと常識がないかなー」
常識ですか?家族とお風呂入って寝て何が悪いのでしょうか。
「実際の年齢はバカみたいに離れてるけどね、容姿だけなら年頃の男女なわけよ」
「そうなりますね」
「……父親目線から見るとね、娘に悪影響を出さないように1歩引いただけなんじゃないかな」
「………………確かに」
「でしょ」
私のことを大切に思っているからこそ大切にしなかったわけですか。
私としてはもっと踏み込んで大切にしてほしいのに。
「もしくは、その大胆さに引いたか」
「酷い!?」
「別に酷くないでしょ。アンタがグイグイくる男にナンパされたらどう思う?」
「引きますね」
「要するにアンタはナンパと同じわけよ」
「うう……」
確かに今思えば私は踏み込みすぎた気がします。家族というのを盾にして好き放題アタックしていたわけですか。
これは逃げられても仕方なかったですね。
「どうすればいいのでしょうか」
「そこまで踏み込みすぎたことしなくても、二人きりの時にさらっと伝えればいいのよ」
「……それじゃダメなんですよ」
「もう、そんな重く考えることじゃないから」
「ダメです!私にとってはすっごく重いんです!」
ついつい大声を出してしまいました。フォルテさんすいません。
「(いや、だって従者になりたいって伝えるんですよ?ムラマサさんやミコトさんは何百年も一緒にいるわけですし、その例を考えると、もはやプロポーズと言ってもいいでしょう)」
「(これ絶対告白初めてのパターンね。確かに初めては緊張するかもしれないけど、意外と軽いものよ。今だとSNSで告白するくらいだし、言葉にして伝えた時点で勝ったも同然よ。フラれても意識させて次に繋がるから)」
後々思うとこの段階で二人の認識は違っていたようです。
「一応何個かそれなりにムードを出せる案があるわ」
「ほんとですか!」
「アンタは押して押して押しまくったわけでしょ?」
「そうなりますね」
「押してダメなら引いてみろ、よ」
「反抗期な娘っぽい反応をして、普段と違う私に疑問をもったフリュウさんが心配になって話しかけてくる。そこで悩みを打ち明けて逃げられない状況を作る。完璧じゃないですか」
私はフォルテさんから手渡された作戦案を何度も読み返していました。
誘ったのではなく、フリュウさんのほうから来させることで逃がさないわけです。
父親として私のことを娘認識している場合、悩みを解決するには受け入れるしか道がない。勝ったも同然ですね。
唯一嫌なことは……フリュウさんに反抗的な態度をとることですね。
「マティルダ。ご飯の時間だよ」
フリュウさんが呼びに来ました。
今は反抗期。反抗期。反抗期。
「フリュウさんとは食べません。後で食べます」
「……っ!?そ、そうか」
「はい。はやく出ていってください」
「……熱でもあるのか?」
「はやく出ていってください!」
フリュウさんは不思議そうな顔をして出ていきました。
「……」
言ってしまったぁ!
違うんです!本当は一緒に食べたいんです!
それにもっと私の部屋にいて欲しいんです!
心配してくださって嬉しかったです!
「これも全て作戦のためです」
夜。
「マティルダ。お風呂入っていいよ?」
「あ、はい!」
はっ、ダメダメ。今の私は反抗期。
「お湯を変えてください」
「え?」
「男の人の体液が混ざったお湯は嫌です」
「え、えー」
「じゃなきゃ入りません!」
「……っ!?家計的に毎日お湯を変えるので精一杯だ。あまり無理を言うのは……」
「じゃあ破壊神の能力で体液の成分全て消してください」
「……わかった」
またフリュウさんは不思議そうな顔をして出ていきました。
違うんです!ほんとはフリュウさんの後にお風呂に入りたいんです!同じお湯を使いたいんです!
嫌いにならないでくださいフリュウさん。
嫌われたら、私マンションから飛び降りますからね!
今の私とんでもなく天の邪鬼ですね。
あの後浄化されたお湯でお風呂にしました。
そしてリビング前。
「実はな……ミコト……お前に相談がある」
「どうしましたフリュウさん。相談相手ならムラマサのほうが圧倒的におすすめですよ」
「いや、女性に相談があるんだ」
「……」
リビングでフリュウさんがミコトさんに助けを求めました。これはそうとう心配してくださってますね。
心が痛いです。
「どうやら、マティルダがあの時期に入ってしまったらしい」
「あの時期ってなんでしょうか」
「反抗期だ」
「反抗……!?あの従順なテイルがですか!?」
「ああ、今日初めてマティルダにNOと言われた」
「それ全然反抗期じゃないです」
確かに私は基本的にイエスマンですからね……。
「俺の体液が嫌だから風呂の湯を変えろと言われた……」
「かなり重度な反抗期ですね。一般的な反抗期でもそこまでいくのは珍しいですよ」
「だろ?」
まぁ、ちょっとやりすぎたと思ってますね。
「俺はどうするべきか……」
「フリュウさんはどうしたいんですか」
「俺?」
「はい。フリュウさんがテイルの反抗期を不快に思っているのであれば、従者神として私とムラマサが全力でしつけ直します。最高神に無礼を働くやつは家族でも容赦しません」
「やる気満々じゃないか。俺はそこまで求めてないよ」
「あれ?ちょっと!?私けっこうカッコよく決めちゃったんですよ!?恥ずかしいじゃないですか!」
「どうせそんなんだと思ったよ」
怖かったぁ……。
ミコトさんに洗脳されるところでした。
ほんと信者って怖い。
「反抗期は子供にとって大切な時期だ。ほかっておくよ」
「ですが……さすがに立場というものをわからせなければ……神は階級社会ですよ?」
「いいっていいって……反抗するマティルダを見たくないからしばらく別の部屋をレイティアに借りてくる」
なんですと!?
その言葉を聞いて、私はリビングの扉をバーン!ってしていました。
「いぃぃぃやぁぁぁぁぁでぇぇぇぇすぅぅぅぅ!行かないでくださぁぁい!」
「こんな感じで反抗期作戦は失敗しました」
「ほんと破壊神の動きは読めないから嫌いよ」
「けっきょく伝えれませんでしたけど、満足してますね」
まだまだ時間は永遠にありますから。
「そういえばさ、アンタ告白文決めてんの?」
「告白文?」
「そ。それがダサいと台無しでしょ。いつか来るその時のためにアタシがアドバイスしてやるわ」
告白文ですか。伝えたい気持ちってことですよね。
「もちろん決まってますよ!事前準備が大切なのはゲームで学びましたから!」
「もっとましなとこで学びなさい。それで、なんて伝えるの」
「私を従者神に雇ってください!です」
「……」
あれ?変なこといいました?
「アンタ……それアルバイトの面接感覚でいけるから……」
まっさかカーニバル。




