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SMなおみやげ

「今帰ったわよ!上の階のお方!」

「ハニー。静かにしてあげたらどうだい?」

「それは私がS神だと知って言っているのかしらダーリン」

「すまない。君の優しさだったね、これは皆も喜んでくれるよ」


 ピンポーンとチャイムが鳴ったので玄関まで来てみましたが、何やら不愉快な言葉が聞こえてきましたね。

 何が優しくて夜中の1時に他人の家の呼び鈴鳴らすんですか。半日も間違ってますよ。


 ガチャ(扉を開ける音)


「あ!マティルダちゃーん」

「久しぶりだね。元気だったかい?」

「……チッ」

「「……」」


 ガチャ(扉を閉める音)


 やっぱりあの二人でしたか。三ヶ月前に旅行に行った下の階の住人。S神のサリアさんとM神のマルゴさんですか。

 帰ってこなくていいですよ。

 蝶の形の眼鏡をしたこの二人はもう見たくないです。


「どうしたんだろうねマティルダちゃんは」

「そうねぇ。生理なんじゃない?」

「女性が言うことですかそれ!?」

「あ、でてきた。S神の私に焦らしプレイを挑むなんてやるじゃないの」

「マティルダちゃん。ハニーに挑むのはやめておきたまえ」


 別に挑んでるつもりはないですが。むしろサリアさんが挑発したんでしょ。

 まったく。このカップルは手強すぎますよ。

 S神の発言をM神が援護する。あまりこの二人には関わりたくない。他の神と違って常識が通用しないですから。


「……何のようですか。フリュウさんはもう眠っていますから後日にしてください」

「それはダメよ、私はS神として相手が困る時間帯にしか話しかけることができないのよ!」

「そうさ。ハニーのSを受けて気持ちよくなっただろう?」

「いえ、まったく。はやく帰ってください」

「なかなかマティルダちゃんもSになったわぁ」

「だがまだまだハニーには及ばないね。僕たちは訪問者、つまり攻め!受けであるマティルダちゃんはいずれ受け入れる運命にあるのさ」

「……チッ」


 ガチャ(扉を閉める音)


 この人たち粘着するタイプじゃないですか。

 どうしましょう。フリュウさんを起こしますか?いやいや、安眠を妨げる存在に私はなりたくないです。

 となると……


「力ずくで眠ってもらいます!」


 ガシッ


「あ」

「いくらSになっても暴力はよくないわ」

「2対1の不利な勝負を挑むなんて、Mなんだよマティルダちゃんは」

「こらっ、このっ、離せー!」

「暴れちゃダーメ」

「縄ならあるよハニー。僕の私物だけどね」

「さすがダーリン。さてグルグルグルグル」

「イヤァー!!新品にしてぇ!!」


 マルゴさんの私物の縄で手足を拘束されました。私物で!

 さすがに勝てませんでしたか。

 ピョンピョンピョンピョン跳び跳ねてフリュウさんの部屋に助けを求めに行きます。

 最近私は格闘ゲームをやっているせいか、リスクとリターンで考えることが多くなってます。ここでは位の低い神ということになっているので、情けないことですが私は可愛がられており、暴力的行動をしてもリスクが低いのが原因です。

 リターンとしてフリュウさんの安眠が守れるなら十分すぎる選択肢になりますからね。


「フリュウさん助けてー」

「ん?………………俺に何をさせるつもりだぁ!」

「誤解ですよ!?」


 そりゃ夜中に手足を縛られた女の子が入ってきたらこうなりますか。

 カクカクシカジカ事情説明。


「なるほどね。俺がアイツら殺ればいいんだな」

「違いますよ!」

「許さん。マティルダに男の体液がにじみ出た縄を使うとか、新品を使いやがれ!」

「どこに怒ってるんですか!?」


 破壊神パーンチ

 ふぐぅ!






「で?何しに来たんだ。こんな夜中に来たんだから大切な用事なんだよな」

「もちろん。急がないと賞味期限がきれちゃうからねぇ」

「はぁ……破壊神様はご褒美をやるのが上手なんだねっ!」

「うるせえ。野郎のMは気持ち悪いんだよ」


 リビングにて寝ぼけ眼のミコトさんとムラマサさん、怒りぎみのフリュウさん、縛られたままの私が訪問者であるサリアさんとマルゴさんに不満の心を向けます。

 なんか縄をほどいてもらうタイミングを逃しました。


「賞味期限ですか?」

「そうさ。優しい僕達が!」

「優しくないお土産を買ってきたのよ!」

「お土産でなんで賞味期限ギリギリになるんですか!?」

「国を転々としてる間にお土産を買っていたら、最初の方に行った国のお土産が腐っちゃって」


 もう腐ってるんですか。


「というわけではい。腐りかけのマーライオン」

「マーライオンに謝りなさい」


 渡されたのはマーライオン型のお菓子の詰め合わせ。

 真面目にカビ生えてるじゃないですか。シンガポールは日本より湿気が高い国ですから冷蔵庫に入れとかないとダメですよ。あとこんなお土産いりませんからね。


「お前ら、腐ってないお土産をくれよ」

「そうねぇ。途中で腐らないものを買うようにしたのよ、そしたら国がよくわからなくなっちゃったのだけど」

「嫌がらせだけして帰るなんて許さんぞ」


 今のところゴミを渡されただけですからね。


「じゃあこれアメリカのお土産ね。一人ずつ買ってきたわ」

「アメリカの思いでと言えばハニー、あれだね」

「そうねぇ。ラスベガスのホテルでダーリンの悲鳴を聞いたことかしら」


 ナニやってたんですかホテルで。

 その内容はお土産で何となく理解させられました。


「はい、マティルダちゃんにはこれね」

「…………なんで縄なんですか」

「僕とお揃いだよ」


 この私物なわと同じやつですか!

 てことはこの縄アメリカ産なんですね。どうでもいいですよ。


「はいムラマサくんには……執事服!」

「これで主に仕える犬(M)になりたまえ」

「……は?」

「ミコトちゃんにはこれ!縄!」

「すぐ亀甲縛りができる縄なんだよ。僕のイチオシさ」

「は、はぁ……」


 どこ観光に行ってきたらこんなもの買えるんですか!?

 確かに海外はHにオープンとか言いますけど、観光地でこんなもの買えませんよ普通!

 ほらミコトさんもムラマサさんも反応に困ってますよ。


「そして破壊神様にはムチよ!」

「これで三人を調教するのさ!」

「調教って…………すでに従順なんだよな……」

「調教済みっ!?」

「さすが破壊神様だね」


 従順って……ムラマサさんのミコトさんは従者ですし、私もそれに近いような存在ですからね。私はいつでもフリュウさんの犬になれますよ!

 でもそのピンクのムチで叩かれるのは嫌です。


「さらに…………ローマにも行ってきたわよ!」

「ローマってどこの国かわからないけど、とりあえずローマなのだよ!ローマァアアアア!」

「夜中に叫ぶな」

「おっふ」

「どこぞのバーサーカーみたいにならないでくださいマルゴさん」


 フリュウさんの腹パン受けたのに嬉しそうなマルゴさん気持ち悪いです。私では受け入れられませんね。

 また袋の中から不愉快なシルエットが見えましたよ。

 賞味期限がないもの=玩具なんですかこの二人は。


「これは……ミコトちゃんのね!はい、これ手錠!」

「亀甲縛りとあわせて使ってくれ」

「絶対使わないから」


 ミコトさんの不機嫌アピールをスルーして図太いSM神たちは袋をあさります。


「ムラマサくんには……紳士服!」

「これを着てプレイを楽しんでくれ」

「俺はまた服なのか」

「ぶっちゃけ……男物のM商品って少ないのよね」

「女性二人に買ってしまってネタ切れなのさ。男に似合うM商品を増やしてほしいものだね」

「ミコト、テイル、お疲れ」


 うげー。

 ムラマサさんからの哀れみの言葉と同時にフリュウさんに肩をポンと叩かれました。

 私とミコトさんのお土産は酷いものらしいです。

 せめて私も服がよかったですよ。


「それでー……マティルダちゃんにはこれ!口の中にボールをいれるやつ!」

「正式名称とか知らないからね、口封じとでも呼んでおこうか」

「……これだけ酷すぎませんか?」


 よくわからない人のために補足をしましょう。口の中にボールを入れてベルトで固定し喋れなくする道具です。


「そして……この家の主様には……ムチです!」

「またムチだよ」

「なんで俺はムチで固定なの」

「従える者にはやっぱムチでしょ?」

「俺に聞くな」

「安心してくれ破壊神様。これは乗馬用だ!」

「同じだよ!俺からしたら!?」


 本当だ、少し違います。乗馬用は先が平になってますね。

 どちらにしろ使い道は皆無ですが。


「えー、じゃこっち?」

「乗馬用が気に入らなかった時のために予備のお土産を買っておいたのさ」

「何一つ気に入ってないから全部予備と取り替えろ」

「じゃあこの電流ムチ!」

「三角木馬もあるよ!」


 ピキッ


 あ、なんかフリュウさんがキレる音が聞こえました。


「お前らいい加減にしろよ?」

「へ?」

「あれ?」

「神威…………オールデリート!!」

「ひゃあぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁ!」


 サリアさんとマルゴさんが吹っ飛んでいきました。部屋ごと。


「誰かレイティア呼んできてくれ」

「了解です」


 あ、その前に私の縄ほどいてください。






 数時間後


「マティルダちゃん、僕の縄返してくれないかい?」

「んなもんいりません!」

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