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高等科編2

「妹は心が男なのに、身体は女で。戸惑いながら、悩みながら生きてきた」

 瞼を閉じながら、月だけを見つめてこの子はそう話した。

 自分のことように悲しんでいる目をしながら、話すこの子が見つめる月に視線を移して話し出すのを待つ。……まだおじさんに聞いて欲しいことがあるような気がするから。

「それを聞いて、俺は妹の言葉をわかってはあげられなかった。

……それでも、妹は大切な家族で、考えがまとまるまで待っててくれって言う前に妹は俺の前からいなくなってしまった。妹が行方不明になったのは俺のせいだと思った、親にも相談してくれなかったことを話してくれたのに妹のためになることを言えなかったから思い詰めたんだと思った」

 そう言った瞬間、隣からポタンと涙が落ちるような音が聞こえてきて。

 ……思い詰めているのはこの子の方ね、とおじさんはそう思った。


「君のせいじゃないわ。当たり前よ、誰だってそう言われたら戸惑うと思う。

君は責任感が強いのね、君だって思い詰め過ぎよ。それにその話を聞いて思った、妹さんを知る人がいないこの世界なら男装をしてるかもしれないね。

なら、君は選択しなければいけない。……妹さんがどんな選択をして、その選択によっては敵になるか味方になるかの覚悟を君は固めておかないといけない」

 と、雲もない綺麗に儚く、淡く輝く月から彼に視線を移して微笑みかける。

 おじさんはさっきの言葉に続けて、

「だから、今は悩めば良い。悩むことはそのことに逃げている訳じゃない。立ち向かうための準備をしているの。だからね、君はその時まで悩めば良いの。

妹さんが相談した後、行方不明になったのは偶然タイミングがあっただけ。

おじさんはこの世界の神様が何を考えているかはわからないけど……、君の声はここに届いてる。苦しかったら何時でも相談して? 話は何時でも聞くから」

 ただ訳もわからずと言ったような様子で涙を流す彼に対して、おじさんはからそうして欲しいと、言ったこの言葉に願いを込めながら、そう言った。

 長男として、兄として責任を持って彼は今まで生きてきたのだろう。

 おじさんみたいにのほほーんとのらりくらり生きて生ければ楽なのだろうけど、真面目な彼にはそうすることが出来ず、自分を追い詰めてしまったのかも……とそう考えながら、滅多に信頼している人以外には触れることはないが、恐る恐る手を伸ばし、泣いている彼の髪を優しく撫でる。

 不器用だなぁ……とそう考えながら。


「ここの世界に妹さんがいるなら、おじさんは一生懸命探したあげるよ。それから後、君がどう選択しようとおじさんは責めないよ、だからゆっくり後悔しない選択を選べば良い」


 幼い子に言い聞かせるような声でそう言えばすがりつくかのように抱きついてくるこの子を、おじさんは拒否すると言う選択肢すら思いつくことなく、ただただ抱きしめたのだった。


◇◆◇◆◇◆


「クラトルさん、羨ましいですわ。お綺麗な顔をして、男性にしとくのは勿体ないくらいです。どのような肌の手入れをしていらっしゃるの……?」

 男性だと認識されているからいいものの、ジーシェ先輩以外に久しぶりに面と向かって綺麗だの、男性にしておくのは勿体ないなどと言われたわぁ……。

 そんな彼女、東雲陽(しののめあきら)さん。艶やかな黒髪に、和服が似合いそうな美人さんです。

 陽には雰囲気が兄に似ているんだと言われ、兄弟から見られるような目で見られているため、隣に座られるくらいにはこの子は平気みたいなの。ちなみに大人っぽいから高校生くらいかと思ったけど、驚いたことにまだ中学生らしい。

 さて、そんな陽の目の前にいるのは同級生で彼女の親友の秋川絢子(あきかわあやこ)さん。無口だけど、目が真ん丸な可愛い感じの女の子です。


「特に手入れはしてないよ。彩人(あやと)、君は昨日は良く眠れたかな?」

 さて、妹を探している彼の名前、柴崎彩人(しばさきあやと)くんって言うらしいの。地味な感じだけど、服装を変えれば男前になりそうな顔をしている。

 そして最後の異世界転移者はあわあわと真ん丸な目を涙目にしながら、狼狽えている彼、野崎しの(のざきしの)くん。ジーシェ先輩が可憐だと口説くようにな甘ったるい声で語り始めそうなくらい、可愛らしい容姿をしてる。

 まあ、怯えちゃうからしばらくはジーシェ先輩には会わせないとして。

 しのくんと彩人くんは親友らしくて、一緒に帰ろうと帰路を歩いていた時、異世界転移してたらしい。


「まあ、普段よりは。それより、しの! おろおろすんな、しっかりしろ!」

「だってぇー……」


 この二人は十六歳らしく、少しだけ年の離れた彼らを見ていると、おじさんは微笑ましく思えてくる。

 まあ、しのくんと彩人には普通に接しられそうで安心した。この二人の面倒を見るのはおじさんとノーリ、シィの三人だからね、恐らく大丈夫だろう。


「仲良くて何よりだわ」

「そうだな」


 元気が良い彼らを、リースちゃんとアンリちゃん、ナナセくんを連れてきたノーリと共に見守るのだった。



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