おじさん、学園入学する
あれから一年が経ち、おじさんは十歳となる年が来て、ハルスノ学園に無事入学することになった。
この学園では入学式を行わないようで、代わりに称号者の紹介をするためか、パレードのように竜騎士科の教室まで、廊下の端に生徒達が並んでいるところを歩かなければいけないらしいから、愛想振り撒かなければいけないかなぁ?
なんて考えていれば、考えていることを読み取ったように、ノーリとシィは同時にこう言ってきたの。
「「クラ(お前)は、愛想を振り撒かなくて良いからな、わかったな!?」」
と、何故かそう念をおしてそう言ってくる二人の言葉に納得出来なかったものの、根気良く何度も念をおしてくるため、その迫力に負けて思わず頷けば、満足そうな表情を浮かべた。
最近、シィってばノーリの過保護が移っちゃったみたいねぇ、なんて考えていると隣にいたナナセくんは苦笑しつつ、おじさんの頭を撫でながらこう言う。
「しょうがないでしょ、クラトルは見た目は女の子が羨ましがるくらいの美少女なんだもの。だから、勘違いされないか二人は心配しているんだよ?」
と、ナナセくんに言い聞かされるようにそう言われ、おじさんはとても複雑な気持ちになりましたぁ。
確かに何度か誘拐されかけて、ノーリやシィに助けてもらったことはあるしぃ、神経質になっちゃうのはわかるけどねぇ。そこまで過保護になる必要はないと思うよ? 少しぐらいの過保護なら、もう慣れちゃっているから構わないのだけど~……。
最近、そのおかげでノーリやシィも有名になってきて、同年代からの異性から人気が出てきたの。二人とも男前だし、大人っぽいからいつかは人気は出てくるだろうとは思っていたけどぉ、想像以上の人気振りにおじさん吃驚です。
それからだったかなぁ、何度かパーティーに参加すれば何故か、一部の異性から嫉妬の視線を向けられて、それで初めて女顔であることを嫌だと思ったの。
だって、おじさんはノーリやシィは親友だとしか思ってないのに~……、何も聞かないまま一方的な勘違いで嫉妬されても、凄く不愉快なのよねぇ~……。
あの一年間で、やっと身長が十五センチ伸びたのにぃ~……、余計に女の子だと間違えられるハメになったの! それでも十歳児の男子平均身長にはまだ足りず、やっと七歳児の男子平均身長と同じくらいの身長になったと言うのに。
ここまでいくと、一生のほとんどを女性だと間違えられることになるんだろうなぁとそう諦め、女性だと間違えられること自体にはあまり気にしてないのだけどぉ、そんなことよりもおじさんは身長が高くなり、より女の子のように見えるようになってから、その数年前よりも倍近く同性からのお見合い話が来ていることの方が困っているんだけど~……。
何よりも余計に最近、一部の女子からおじさんに向けられる視線が鋭くなっていて困ってるのよね。
何度も何度も、おじさんの性別は男だって言っても、その言葉を嘘だと言って聞き入れてはくれない。
親友とくらい、のんびり過ごさせてよ~……とそう考えながら、出たくもないパーティーに参加必須の時だけのみ、渋々といった様子でその鋭い視線から耐えながらも参加しているのだけど~……。
あまり、その一部の女子達を刺激させないようにおじさんね、最近は女装するのは控えるようにしてるの。
……これ以上、断る手間をかけないようと言うのもあるし、自分の精神状態のことを考えてもね、そうすべきだと思ったから。必要な時以外には女装はしないようにしてる、彼女らはその女装を自分の都合の良いようにしか解釈してくれないから。
本当、一部の“玉の輿を狙っている”女子の皆さんの勘違いには困ってるの。おじさんは同性愛には抵抗ないし、否定するつもりはさらさらないけど~……、自分自身は同性と結婚するつもりはないし、今は友情に依存してばかりいるけど恋愛することに興味がない訳じゃないの。
だから、ロングヘアーだと完全に女の子に見えてしまうかもと、そう思って半年前くらいかなぁ?
本当は坊主にしようかと思ったんだけどぉ、涙目になった父上が必死に、せめてとボブショートまでの長さにして! と止められてしまったので渋々そこまでの髪の長さまでしか、髪を切らなかったのだけど~……、やっぱりあまり効果はなかった。
今では、坊主にするのは行き過ぎてたかなぁとそう思っているから、あの時に必死に止めてくれた父上には感謝しているの。でも、せめてあの時にベリーショートくらいまで髪を切れば良かったかなぁとも、そう思っているけれど。
まあ、一部の女子からの嫉妬は何とかならなそうで悩んではいるのだけど、同性からのお見合い話は最近少しずつ自分の弟、親友達のおかげで減ってきてはいるの。
ボブショートくらいに髪を切った頃と同じ時期くらいだったかなぁ、何故か頭以外は土だらけになった男の子達がね、婚約することを諦めて非公認のファンクラブを作りますって宣言してきたの。その時の表情はあまりに必死すぎて流石のおじさんでも引いたし、ノーリとシィは殺気に満ちた表情してるし……。
まあ、非公認のファンクラブが出来たおかげで、同性からのお見合い話が一番多かった時期の四分の一まで減ってはいるのだけどね? それでも数年前よりも倍近くのお見合い話が来ていると言う事実には変わらないし、それでも対応が追いついていかなくて困ってるのよねぇ。
ああ、そうそう。今のおじさんの非公認ファンクラブに所属する皆さんが、何で婚約することを諦めて非公認のファンクラブを作ると宣言してきたのかと言うと、何度も何度も断れるものだから最終的には屋敷まで押し掛けて来たらしくて、そうしてきた人達が気に食わなかったのか、その時にタイミング悪く不機嫌だったのかはわからないけど~……、とても殺気に満ちた表情をしたトールに地に埋められたらしいの。
で、その人達はそれで迷惑かけていたことに気づいて、今度こそは迷惑をかけないし、婚約することを諦めるからおじさんの非公認ファンクラブを作らせて欲しいと頼み込んだらしくて、その意見にトールが納得したため、その後に直接宣言しに来たと言う訳だったらしいの。
最初はノーリやシィ、この二人だけじゃなくて竜騎士の方々、魔法騎士の方々とかも非公認のファンクラブを潰して回ろうと思ってたみたいだけど、月や星、植物をモチーフにしたアクセサリーやドレスなどを贈ってくるだけなので、特に害はないと判断されたらしく、ほぼ公認に近い非公認ファンクラブになっている状態なの~。
女装用の服だけじゃなく、普段用の服まで贈ってきてくれるから有難いの。
しかも、悔しいことに非公認のファンクラブの皆さんは、揃いも揃ってセンスが良い人が多いから、折角似合う服を選んでくれたり、その服を作ってくれたりしたのだから贈り物くらい断る必要ないかなって。
ただし、贈り物を受け取ることを許可されてるのは非公認ファンクラブの人からも物だけだけどねぇ。
おじさんの非公認ファンクラブの人達のセンスが良いって言う話をして思い出したんだけどねぇ……。
おじさんの非公認ファンクラブの話とは全く関係ないのだけどさぁ、相変わらずこの学園の内装は派手すぎない上品さで、とてもセンスが良いのよねぇ!
しばらく、王城で居候させてもらってだから、この学園の内装にはとても落ち着かせられるよぅ! とそう考えながら、あまり愛想を振り撒かないように気をつけていればノーリに話しかけられた。
「お前のファンクラブの会員の奴ら、何気にハイスペックな奴らが多いから俺がいない時に何かあれば奴らに頼るんだぞ。非公認だとは言え、奴らはトールに与えられた条件を一度も破ることなく活動しているからな。まあまあ信用出来ると思う。ただし、近くにシィやナナセが居ればその二人を頼ること、良いね?」
と、そう言う過保護すぎるノーリの気迫に負けて、おじさんは何度もコクコクと首を縦に振れば、満足したようにいつものように微笑みを浮かべ始めた。
そのことに安堵の表情を浮かべながらも、内心では驚きを感じていた。
――野良猫よりも実は、警戒心の強いあのノーリが非公認のファンクラブの皆さんを“なかなか信用出来る奴ら”だと評価したことにおじさんは驚いた。
非公認だとは言え、過保護なノーリはおじさんのファンクラブじゃないと言うのに、管理をしてくれているみたいで……不快な思い(ファンクラブ限定で)したことは一度もない。
だけど、ノーリやシィ、トールが認めない限りはしばらく、非公認のファンクラブとして活動していくみたいだけどね。まあ、ファンクラブを管理しているのが主にあの三人だから、おじさんは認める判断は三人に任せてるけど〜……。
なんて、考えていると竜騎士科の番が来て、太陽の称号者であるリースちゃんを中心に横に並んで歩き始めれば、耳鳴りがしそうなくらい高い声で女子達は悲鳴をあげる中、非公認のファンクラブの皆さんはと言えば……、ただ無言で静かに何かを祈っている。
その姿を見て、おじさんはどう言う反応をしたかって? それは勿論、ドン引きしちゃいましたぁ。
まあ、それを悟らせないように営業スマイルを浮かべていたけれども……。
あれは何の儀式なんだろうか? とそう思ってしまったおじさんは、一瞬自分の視力を疑ったわぁ。
吃驚したわぁ、おじさんが非公認ファンクラブの前を通った瞬間、祈るような動作を見せるんだもの!
でもね、おじさんの非公認ファンクラブの人達の行動はまだ良い方だった。
称号を与えられた人の中にも、若くして結構強くて容姿が良いと有名な人はいるから、おじさんのようにファンクラブがある人はいない訳でもないみたい。
おじさんの非公認ファンクラブの人達は、周りの人達に迷惑をかけてなかったけど〜…………、他のところはわざとじゃないけど生徒と肩がぶつかって、怪我をさせちゃったりと何かと問題を起こしている。
しかも、ぶつかった子はそのことに気づかず、謝りもせずに自分の好きな人に夢中だったのよ……!
ああ、ちなみに転んじゃった子には水魔法で濡らしたハンカチを渡しておいたよ。……そうしたいんだって頼んでみたら、ノーリから許可が降りたので!
……それはともかく、その出来事を見て学園生活、平和に過ごせるのか今から不安になりました。




