悲しみと立ち向かい、強かになれ3
体調が安定していない父上を放っておくことは出来ず、おじさん達は王城にしばらくの間滞在することにした。
と、言ってもほとんどはセンリ先生が対処してくれるので何もしないに等しい。回復魔法を使うことが出来る関係上、最低限な医学の知識があるノリトくんならともかく、医学の知識がないおじさんが手伝うことは限られてくる。
何もしないのは、何か申し訳ないので竜騎士の方々の身の回りのサポートをしているのだけど、ノリトくんだけではなく竜騎士の方々でさえ、小柄で見た目だけはか弱く見えるおじさんに重たい物を持たせるのは、見ている方がハラハラと感じるのか、持たせてはくれなかった。
竜騎士の皆さんは何故か、独身貴族な方々が多く、面倒見が良い方々多いのか竜騎士の身の回りのサポートはさせてくれるものの、おじさんのことを自分の息子、孫のように思っているのか良く面倒を見てくれるし、可愛がってくれる。
それはとても有難いのよ、でもこう見えて怪力だからおじさんの気持ちとしては、複雑なのよねぇ。
竜騎士の仕事は力仕事が多い。そのため、竜騎士の方々にとっての一人分が一般の人にとっては十人前のカロリーがある。でも、栄養バランスが良く作られているので、一人前を運ぶのは女性では一苦労するらしく、料理もするのも運ぶのも、料理の授業が成績の良かった竜騎士が日替わりで担当するらしい。
大量に料理を作るため、担当するその日は、その竜騎士だけ訓練に参加しないことを許されているらしいの。
おじさんはその竜騎士達が見ていないうちに、盛り付けが終わったものから食に飢えた竜騎士の方々に運ぶため、普段なら一皿ずつしか運ばせてくれないところ、二皿軽々と手に持ち、竜騎士の方々の元へと運んで行けば……。
「見た目詐欺だろ……」
と、揃いも揃って、竜騎士の方々はそう呟いていたけれど、おじさんは見た目詐欺とはなんだろう? とそう考えながら、ニッコリと微笑んで運んで行けば、一番古株なライト サークルさんことお祖父様(何故かそう呼んでくれと頼まれている)に渡せば、孫に見せるようなでれっとした表情で受け取ってくれた。
「怪力なクラちゃんも、キュートじゃよ〜」
と、二番目に古株なのはお祖父様の弟であるユサ サークルさんことユサじぃに渡した後、二人に抱きしめられ、頭を撫でられながらそう言われた。
ちなみに竜騎士の方々にはクラ、クラちゃんとそう呼ばれている。
「確かにキュートじゃが、筋肉がついてしまえば一大事じゃぞ、兄よ」
「それについては安心しろ、弟よ。クラちゃんは筋肉がついても、マッチョにはならんはずだ。ワシの長年の勘がそう言っているから、間違えないのぅ」
と、二人は嬉々として話しているが、お祖父様がそう言うと本当にそうなりそうで怖いから、そう言う話をするのはやめて欲しいわぁとそう考えながら、大人しく抱きしめられていれば内心でそう考えていることを知ってか知らずか、二人はこう話していた。
「クラちゃん、八歳男児にしては随分小柄じゃのぅ。兄よ、あの竜騎士科の訓練メニューに耐えられるかのぅ。体調を崩さなければ良いのじゃが……」
「そうじゃのぅ、弟よ。
恐らくクラちゃんなら大丈夫じゃよ。ノーリがついてるからのぅ、確実に大丈夫じゃと長年竜騎士を続けていたワシの勘はそう言っているわい、弟よ!」
と、そう会話に夢中になっている隙に、おじさんは二人の腕からスルリと抜け出しても怒られないと知っているので遠慮なしに抜け出した後、厨房へと戻ろうと歩き出せばそのことに気づいたのか、再び二人はでれっとした笑みを浮かべつつ、送り出してくれる。
ちなみに二人にノーリと呼ばれているのは、ノリトくんだよぅ。
今日は訓練で怪我人が出たから、治療を手伝うために今はいないだけで、普段ならおじさんと一緒に竜騎士の仕事を手伝っているんだけどねぇ。
本当にたまにだけ、魔法騎士の方々のサポートもする時もあるよぉ。
竜騎士の方々が飛行訓練、実戦訓練をしている時だけだけどねぇ。
だから、常に通っているはずの魔法医師の知り合いは数人しかおらず、竜騎士や魔法騎士の方々で顔見知りは多く、性格が良くて子供が好きな男性の方が多いからねぇ、魔法騎士の方々にはクラトって呼ばれてるよぅ。
でも、女性の魔法騎士達の皆さんはおじさん達を遠目で見てるだけで、話しかけられたことはない。あら、子供が苦手なのかしらともそう考え、あえて話しかけることはしないけど。
と、そう考えながら盛り付けされ終わったものから早足で運んだ後、にこやかに微笑みながら竜騎士専用の食堂を後にし、父上と食事を摂るために早足であの部屋へと向かう途中、魔法騎士の方々(男性限定に限る)とすれ違う度にクラトと呼ばれる度に、おじさんは微笑みながら手を振ってから早足でまた歩き始めるそれを繰り返していた。
魔法騎士も、竜騎士の人もおじさん達に良く声をかけてくれるのは三十代から上の人が多くて、ちょうど反抗期のか子供に相手にされないお父さんポジションの人が多いのよ。
そのせいか、自分の息子のようにおじさん達を可愛がってくれているの。
有難いことだわぁ、とそう考えていると偶然なことにセンリ先生と出会い、これまた偶然なことにちょうど父上がいるあの部屋に行くと言うので、一緒に行くことにしたおじさんは変わらず声を掛けられれば、にこやかに微笑んで手を振って歩き始めるその様子を見た、隣にいる彼は苦笑したように笑っていた。
そしてセンリ先生は、おじさんを微笑ましそうに見つめながらこう言った。
「随分と人気者なんだね、クラトル」
「皆さん、優しい人達なんですよぉ」
と、センリ先生に言われたことに対して、おじさんはそう言えばまた微笑ましそうに見つめられた。
ん? と思わずそう呟いて首を傾げれば、センリ先生はまた再びにっこりと微笑んでこう言うのよ。
「そんなことないよ〜……、クラトル。
クラトルもノリトも、認められてるから皆優しくしてくれているんだよ〜……。それはクラトルの実力だし、もっと自信を持って良いと思うよ〜……」
センリ先生にそう言われ、そんなに自信がなさそうに見えるかなぁとおじさんは考え込むのだった。




