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悲しみと立ち向かい、強かになれ2

 今まで泣いていたのだろう、姫様は目を真っ赤に晴れさせていて。それでも今は泣くことを堪え、父上が横になっているベッドの近くまで寄ってきた。

 そして姫様は深く頭を下げて、震えたような声で父上に対してこう言った。


「……この度は(わたくし)の弱ったがために、謝罪をしても取り返しのつくことのない怪我を負わせてしまいました。……大変申し訳ありませんでした。

全ては私が弱く、あの場で将来的にたくさんの部下のトップになる者として冷静さを保つことが出来なかったが故に、正しい選択肢を選ぶことが出来なかった私は優秀である貴方がその怪我を一生負わせる事態へとなってしまいました。

シルバー、貴方が負ったその怪我は本来なら私が負うべき怪我でした。それなのに貴方にその怪我を一生負わせることになったことを、もう一度心より深く謝罪させて頂きます。大変申し訳ありませんでした」


 と、姫様は涙を堪えて、父上にそう謝罪した。何度も何度も深く頭を下げているうちに、涙を堪えることが出来なくなったのか、涙を流しながらもそのことなんてお構い無しに頭を下げ、「大変申し訳ありませんでした」と繰り返し謝罪し続けていた。

 そんな姫様に対して、戸惑ったように「……姫様」とそう呟く父上。

 女の子の涙に弱いのねとそう考えながらも、どう対応して良いのかわからず、困ったような表情を浮かべている父上に対して、おじさんの意見が助言になるのかは疑問けど、一応口パクでこう伝えてみた。


『一旦、姫様の謝罪を止めて、父上の意見を姫様に伝えてみたら如何です?』


 と、そう伝えてみれば、口パクで伝えたことを読み取れたのか、納得したような表情を浮かべた後、右手で姫様の肩に触れ、意識を自分の方へと向けさせた父上は、痛みを堪えているのか厳しい表情を浮かべながら、ベッドから上半身を起き上がらせた後、姫様の涙を指ですくうように拭い、深呼吸を数回した。

 そんな様子を見て、おじさんは自分の出番はないと勘づき、静かにただ見守る体勢に入ったと同時に父上は聞いたこともないくらいに厳しく、淡々とした声色で姫様にこう言った。


「私は姫様に謝罪をしてもらいたくて、貴女を庇った訳ではありませんよ。

貴女は何れ、女王となるお方であります。

何れ女王となるお方だと言うことだけでは、私は自分が負傷してまでも貴女を護りきろうとは決意は致しませんことを、貴女は良くご存知ではありませんか。

姫様はじゃじゃ馬でありながらも、人に気を遣うことの出来ることを私は知っています。クラトルと同じ年だと言うのに、時折まとう大人びた貴女を見る度に良い女王となれるお方だと信じていたから、私は貴女を助けたのであります。

こう言う事態になったのは、貴女だけの責任ではありません。蝶よ花よと甘やかしてきた私達部下にも責任があるのです。大切な主君だからこそ、強かな人になれるよう協力すべきだったのかもしれませんとそう言えば、貴女はそんなことはありませんとそう言ってくれるでしょうね。

責任感のある貴女は、部下達は全く責めることはないものの、全ての責任は自分にあると責めてしまうことでしょう。ですが姫様、過去を今さら掘り返したところで今が変わる訳ではありません。

左腕を失ったことで確かに、私の戦闘能力は落ちたかもしれませんが、その分別の分野で落ちた戦闘能力を補えるように、鍛練を重ねれば良いのです。

姫様、この国には貴女が必要なのです。……紫髪の少女のことを乗りきるためには、貴女が女王として存在しなければならないとそう思ったから、私は貴女に左腕を捧げただけのことであります」


 と、父上がそう言葉にした後、叫ぶように泣いていた姫様はその声を飲み込み、涙を流すのを止めた。

 その瞬間だった、息を飲むくらいの早さで姫様の雰囲気は変わり、堂々とした態度へと一変したのだ。

 ――これが貴方が、姫様に感じた可能性と言うことなんですね、父上。

 と、そう考えながらただ見守るように眺めていれば、姫様はこう宣言した。


「私は死にました。蝶よ花よと甘やかされることに満足していた、……今までの私はもういません。

これからの私は国民を思い、国民を愛していたお父様のようになり、尚且つお父様にはなかった傲慢ではない強かな女王として、私は生きて行くことをこの場にいる者達に誓います。

私は女王としての教育だけでなく、国王としての教育も受けてますし、時間の許す限りは無理をしない程度に騎士達からの鍛練も行っていこうと思います」


 そう言った姫様の表情は女王としての顔つきへと変わったと同時に、姫様は父上に背中を向け、そう宣言したことを実行し始めるのか早足でこの部屋の扉まで向かって行った後、部屋から立ち去る前にこう言った。


「私が立派な女王となれるまでは絶対に死んではなりませんよ、シルバー」


 姫様はそう言葉を言った後、そう言われた父上に対しておじさんはにこやかに微笑みながらこう問いかけた。


「だそうですよ、父上」

「……全く世話が焼ける姫様だこと」


 と、そう答えた父上の表情はあながち満更ではなさそうだった。



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