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悲しみと立ち向かい、強かになれ1

 王城へと向かい、魔法医者科に所属する人の専用事務室へと案内役の騎士達へと連れて行かれ、眠そうな雰囲気を残しながらも真剣な表情をしているセンリ先生に出迎えられた。


 真っ青と言うより最早、真っ白な顔色をしながらも王城へと着いて来ようとしていたナナセくんに、そんな顔色では連れて行けないと説得し、そんな顔色をしつつも着いて来ようとするほどおじさんらは酷い表情をしていたんだろうかと考えた後、その後直ぐに渋々と言った様子で着いて来る諦めてくれたため、王城にはシキくんとユウシさんを含めて四人で王城に来ていたのだけど……、彼らが着いて来てくれて助かったわ、もう感情は隠せるくらいに精神状態は落ち着いてはいるものの……、最愛の父が亡くなってしまった姫様に対して、アドバイスと言うよりも責めるような口調で話しかけてしまうかもしれなかったから。

 父上は生きているんだとそう言い聞かせ、いつも通りに振る舞って見せる。冷静になれ、自分とそう言い聞かせた後に床を見ていた視線を、扉の方まで上げればセンリ先生はそれと同時に病室の扉を開けた。


 ……恐らく、センリ先生はおじさん達の心の準備が出来るまで、父上の病室の扉を開けるのを待っていてくれたんだろうと思う。精神状態が不安定になりつつあることに気がついて。

 おじさんは恐る恐る病室の中へと入って行けば、どれだけの出血をしたんだろうと不安になるくらいに、ほぼ全身に包帯を巻かれている父上。まるで何ごともなかったように、眠っていいた。そんな姿を見て脚の力がなくなったように、腰が抜けてしまった。

 それは父上が“生きている”と感じられた喜びからでもあり……、その姿を見たことで嘘だと思いたかったことが真実だとわかってしまったことへの恐怖。

 ――今までの父上とは唯一違うこと、スキンシップが多い父上は息子であるおじさんを良く抱きしめていたし、手を繋ぐことだってあった。その時に感じることが今までは出来ていた左腕の温もりが、もう二度と感じることが出来ないと言うことだった。


 声を出して泣いた。

 ――身内がこんな目にあって、感情を抑えられるはずがなかった。

 悔しい、悲しい、憎いと複雑に感情が絡み合っていることに気がつきながらもおじさんは、声を殺すことなくただただ泣き続けることしか出来なかった。

 そんなおじさんを、ノリトくんは抱きしめる。不安定な精神状態を安定させるためか頭を撫で、まるで大丈夫だよと語りかけてくるように壊れ物を扱うように優しく、背中を撫でながらもそうしてくれている彼も泣いていた。声を殺して、自分が泣いていると気づいていないんじゃないかと思うくらいに、静かに涙を流していたことに自分の衣服が濡れて初めて気づく。


 その涙で冷静さを取り戻したおじさんは、抱きしめてくれていたノリトくんの腕から逃れ、身長差があるため膝立ちをして頭を抱えるように抱きしめた。

 ――もう大丈夫だからと気持ちを伝えるように、ノリトくんのさらさらとした髪を優しく撫でていれば、掠れていて、絞り出すような声で誰かがこう言う。


「……クラトル、……ノリト。泣かせてすまない、すまなかった。

もう無茶はしないから……、頼むから泣かないでくれ。そんな表情をしないでくれ。……お前らを悲しませた俺が悪かったから、お願いだから泣かないで」


 と、そう言う声が聞こえた。勿論、その声の持ち主を聞き間違えるはずもなくおじさんは目覚めてくれたことに、嬉し涙を流しながらノリトくんに支えられつつ、父上の近くへと向かえば嬉しそうに微笑んだ。

 その瞬間、センリ先生は眠そうな声でボソリとこう呟いていた。


「一週間くらい眠ると診断されていたのに……、タイミング良く目が覚めたのは人一倍体力があったことにより、たまたま来た“タイミング”に目覚めたただの偶然なのか〜、それとも息子らへの強い愛情がそうさせたのかは……、全ては天の気まぐれ。人間である僕にはわからないことであり〜、知ることが出来ない永遠の謎と言うこと」


 センリ先生のそんな発言を聞き、ますます不思議な人だとそう思った。


◇◆◇◆◇◆


「今の時代、左腕と肩を繋ぐ関節部分から酷く怪我をしてしまうと……、古代魔法によって骨は再生することは可能でも、本来の腕としての昨日は元に戻ることは……奇跡に近い。余程神に愛されているかしないと、現代魔法での再生治療には期待しない方が良い」


 と、センリ先生は眠たそうな声をしながらも、何処か真剣そうにそう話す。

 そう話した内容の中に気になったことがあり、おじさんは質問をする。


「……今の時代、と言うことは古代では完全に再生治療を行う方法があったと言うことなんですか?」


 と、そう聞いてみれば、センリ先生は明らかに動揺したような素振りを見せながらも、普段通りを装っているように見せながら、こう質問に答えてくれた。


「ああ、そうだ。

ただし、完全に再生治療を魔法で行うためには願いに見合った何らかの代償を、術者が払う必要がある。

そう言う回復魔法を、契約回復魔法と言うらしいよ〜……。禁忌魔法とは指定されてないけど、完全に禁忌魔法ではないと断言出来ない位置にある魔法かな」


 出来れば、その回復魔法の名前は教えて頂きたくはなかったかなぁ。

 回復魔法の才能がレベル五なノリトくんが、今は止めることが出来るとは言え、回復魔法では完全には治せない状態になったら、何をやらかすか怖いのよ。

 優しくて、真面目で包容力が高い分、……おじさんはとても不安です。

 そんなおじさんの内心を読み取ってか、センリ先生は続けてこう言う。


「……禁忌魔法だとは断言出来ない位置にあるとは言え、契約回復魔法について綴られている魔導書は古本屋でさえも販売は禁止されているし、手に入れることは極めて難しいし〜……、それに金庫に厳重に管理すること、王族に契約回復魔法について綴られている書物を所持していることを報告するのが義務付けられているよ〜……。それを破ると、それも罪だから罰金取られちゃうの」


 と、そんなセンリ先生の言葉に安心し、ノリトくんの方へと視線を向ければ、明らかに落胆していた。

 そんなノリトくんの表情を見て、驚きのあまり声を失っていると……、センリ先生は何かを思い出したのか、辛そうな表情を浮かべながら更にこう言った。



「ノリトくん。クラトルくんは君の何かを犠牲にしてまでも、完全に再生治療をして欲しいとは望んでいないよ。

忠告しておくよ、大切な友人を悲しませたくないのなら、安易に契約回復魔法や禁忌魔法と指定された回復魔法に手を出してはいけないよ~……」



 ノリトくんはその言葉を聞いて、唇を噛みしめているその仕草から、回復魔法の先輩の言葉を受け入れようと葛藤しているように見えた。

 センリ先生はわかっているのだ、……ノリトくんが友人想いの優しい子だと言うことを。だけど、その優しさがあまりに深すぎて、大切なひとが微笑んでいてくれれば、自分がどんな犠牲を払ってでも守ろうとする子だと言うことを。

 この信念に関しては、おじさんがどう言おうと変えようとはしないと思う。


 だから、おじさんではない“誰か”にそれを指摘されなくてはいけないの。

 その優しさは武器であり、……ノリトくんの身を削る凶器でもあるから。

 ノリトくんが怪我をして欲しくないと望んでくれるように、おじさんもまた大切な親友である彼に怪我で苦しみ、痛がる姿なんて見たくないのだから。

 魔法は完全ではない。

 回復魔法は使用する際に特に魔力量を消費し、連続で使えば戦闘魔法よりも身体への負担が大きい。

 おじさんもかなり無茶しているけど、ノリトくんもなかなか無茶しているのよ。


 ――本当はね、無茶しないでと言いたいところなんだけど……、おじさんもかなり無茶しているから人のことを言えない部分があって言えていないだけで、ノリトくんがいつか体調を崩しちゃうんじゃないかって本当はすごく心配しているんだよ?

 言ったところで、あの微笑みでその話題から流されてしまうと思うしぃ。

 それに、「クラトルも無茶しなければ、俺も無茶をしないよ」と言われて話題を反らされちゃう可能性もあるからねぇ、そう言う理由からもああ言うことが出来なかった訳なのよ。

 ……なんて、考えていると勢い良く扉を開かれ、聞いたこともない女の子が涙声でこう言っていた。


「シルバーが目覚めたって本当ッ……?」


 おじさんはこの部屋の扉に視線を向ければ、そこにはさらさらとした金髪で姫カットをし、サファイアのような綺麗な青色の瞳をした、まつげが長く目がぱっちりとした将来確実に美人になるだろう女の子が立っていた。

 その女の子を見て、おじさんは直ぐにわかった。……この子は父上に助けられたあの姫様だと言うことを。


 さてさて、しばらくは様子を見ようとするかな? ……一方的な決めつけでは、おじさんでは直ぐに反論されてしまうからね。的確に意見を言っていくために、これからこの姫様がどう行動をするのか観察してみることとしますかねぇ。



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