全ては貴方の意志のままに6
ここの屋敷にある植物はとても美しく、尚且つとても繊細なものだった。
その植物が全て枯れると言うことは、そうさせる強大な力がこの屋敷まで近づいて来ていたと言う可能性しか考えられず、昨日から抱いていた“嫌な予感”が深まっていく一方で。
綺麗に咲いて人を癒し、魅せていた植物が枯れると言うことは、魔力が強すぎて尚且つ憎しみが強すぎるその人間を、拒絶する反応を見せたと言うこと。
ここの植物は人の気持ちに敏感なのよ、それくらい同じくらいに繊細で。
だから、憎しみの感情を感じすぎてしまったことにより、枯れてしまった。
――ああ、可哀想にあそこまで綺麗に花を咲かせてくれていたと言うのに。
――せめて再び、この植物が違う形で咲き誇ってくれますように……。
『もう一度、私に魅せて。貴方達の繊細な美しさを、繊細な色彩を。
繊細すぎる貴方の美しさ、それと比例するくらいの貴方の心は繊細で。
私は待っている、貴方がまた咲き誇る時を
私は信じている、貴方がまた咲き誇る時を
だから誰かを拒まないで。貴方がまた咲きたいと願えるまで待っているから。
時間が許されるまで、貴方の心が癒えるまで私は待っているから。
また再び逢いましょう。
私はその時が来ることを、――ただただ祈り続けることと致しましょう』
おじさんは歌う。
――祈るように、加護で護られているこの声で植物のことを思って。
語りかけるように、誰かを拒むように枯れている植物におじさんは歌った。
――敵はもういないよと、言い聞かせるように優しく穏やかな声で歌う。
植物魔法の効力の弱いものを、この屋敷にかけながら繰り返し歌った。
繰り返し歌う度に、おじさんの中には不安が大きくなっていくばかりで。
「クラトル……。
お前の父上が……」
やめて、言わないで。
この嫌な予感が、ただの予感ではないことに確実になってしまう!
「ノリトくん、お願い! それ以上、言わないで! お願いだからッ……」
歌うのを止めて、おじさんはそう叫ぶ。
そんなおじさんに対して、ノリトくんは戸惑ったような表情を見せた。
が、直ぐに真剣な表情へと一変し……、決意したような視線を向けた。
「負傷された。紫髪の少女が現れて、父上は姫を庇って左腕を……」
そう言い終わった後、その先を言うことを躊躇うように言葉を詰まらせる。
滅多に表情を変えないノリトくんが微笑むことで表情を隠すことを忘れて、辛そうな表情を見せていることで、おじさんは父上がどんな状態であることが察することが出来てしまう。
……父上は、これからずっと片腕で人生を過ごすと言うことなんだろう。
「姫様は生きてるの?」
「ああ、父上が片腕を負傷しながらも最後には護りきったらしい。
……父上は今、気が抜けたのか気絶するように眠っているってさ。
命には別状はないって。側にセンリ先生が居たのが運が良かった、何日かは眠り続けるとは言ってたらしいけど」
「そう……。じゃあ、“僕”が姫様に対面することを許されるよね?」
「……何するつもり?」
流石、ノリトくん。
おじさんの感情の変化に気がついたんだね。今ね、いつもなら冷静でいられるはずなのに、今怒りって感情が内心に閉じ込めておくことが出来ないんだ。
――家族を傷つけられたんだよ、冷静でいられる訳がある訳ないでしょう?
「……アドバイスをするだけだよ。蝶よ花よと可愛がられている“お姫様”のままじゃ、大切なものの全てを失うことになるよってね、教えてあげるのよ」
おじさんは優しめの言葉に変えたものの、言っていることは忠告や警告をすると言うことを伝えた。
ノリトくんはその意図を読み取ったのか、少しだけ辛そうな表情を浮かべながらも苦笑をしていた。
――こういう状態になったおじさんは、どんな言葉を言おうと止められないとノリトくんはわかっているから。
「それをクラトルが望むなら、俺は反対しない。でも不敬罪になりそうになるのであれば……、例えお前の望みであろうと止める。この国の姫よりも、俺の中での優先順位が高いのはクラトルが“生きていてくれる”ことだから、姫様が選択肢を間違えてもそれは運命なのだから……、それは良く覚えていて」
そう、条件付きで認めざる負えないの。
……おじさんは頑固だから、一度やると決めたことはとことんやるし、追求する。でも、絶対に約束したことはちゃんと守る。
だから、ノリトくんは止めない。……おじさんの命の危険がない限りは。
「わかってるよ。ただ、試したいだけ。師匠を捕らえて、長い時間の間師匠を任せられるのか、見極めたいだけなのよ。その子は女王様になるんだよね、だからその使命を全う出来るのかこの目で確かめたいの。強かで、国民を思えて、国民も慕っている女王様になれるのかを……、ね?」
妖しい雰囲気で笑ってみれば……、ノリトくんにため息をつかれてしまう。
……何で、ノリトくんにため息をつかれちゃったんだろう?




