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全ては貴方の意志のままに1

 霧が晴れたことにより、魔物狩りは予定より早く終わることになった。

 終わりはあっけなく、各自引率の先生の指示に従って解散して良いと言うことなので、おじさん達はさっさと自宅へと帰り、のんびり過ごせるわぁと考えていれば、魔物狩りをしていた時とは別人のように引っ込み思案で、おどおどしているナナセくんがおじさんの服の袖を掴んだ。


「あの……」

「どうしたのかなぁ、ナナセくん。言いたいことがあるなら遠慮なく言って」


 と、おじさんは穏やかな声で、微笑みを浮かべながらそう聞けば、自分がする話を聞いてもらえることに安堵したのかナナセくんは少しだけ緊張が解れたような表情を浮かべた。

 男装をしているとは言え、幻覚魔法がかけられているとわかっているおじさん達には男装をしている姿と本来の姿が重なって見えてしまう時があるけど、他の人には違和感を感じさせないくらいにナナセくんには幻覚魔法がかけられているんだよねぇ、と考えながらも未だに喋り出さない彼女を気長に待っていた。

 言いたいことがまとまったのか、待たせていたおじさん達に対して申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、慎重に言葉を選びながらナナセくんはこう言う。


「シキが、僕がまた周りから何か言われないように、シキの家でハルスノ学園に入学するまで泊めてくれるって言われて、その時にシキに頼まれごとされて」

 と、そう言った後、ナナセくんは言葉を詰まらせた。そんな様子を少しの間眺めていた後、何を頼まれたのだろう? と、考えながらノリトくんと顔を見合せ、次に言われる言葉を再び気長に待ってみる。

 ナナセくんはその言葉を言う勇気が出ないのか、しばらくズボンの生地を握り締めていた後、決心したかのように勢い良く顔を上げてこう言ってきた。


「是非とも二人も、屋敷に招待したいって言ってきてくれって頼まれたの!」


 ナナセくんは照れからなのか、顔を真っ赤に染め上げてそう言葉にした。

 うんうん、良く頑張って言えたねーとおじさんは考えながら、ノリトくんに視線を向ければ「クラトルのしたいようにすれば良い」と口パクでそう言われたため、折角勇気をしぼって言ってくれたのだから断る訳も出来ず、大人しく招待されておくことにした。

 スノーを一匹作り出した後にこの森の近くの宿で泊まっているであろうアイリスさんにシキくんの家に招待されたと言うことと、それを父上に伝えておいて欲しいと言う内容を書いた後、恐らく泊まりになるだろうから用意して欲しいものを書いていると、おじさんは良いことを思いつき、それを実行するために買うものを更に増やしていく。

 父上は心配性だ。戦闘にはあまり向かないせいかおじさんには特に過保護で、今回魔物狩りに行くにあたって、結構な大金をアイリスさんに持たせていたことを良く覚えている。

 今回ばかりは感謝しないとねぇと考えながら、この作戦をどう実行に移そうかと企んでいた。ノリトくんはノリトくんで、おじさんが何か企んでいることに気づきながらも、危ないことじゃない限りはその企みを止めたりはしない。

 むしろ、今回の企みはノリトくんも大賛成のようで見守るような、穏やかな微笑みを浮かべていた。


 欲しいものを全部書き終わった後、スノーにアイリスさんのいる宿の住所を教え、そこに行くように伝えればスキップをするような足取りで目標の場所まで駆け足で向かって行った。

 そうだ、すっかり返事をするのを忘れてた。そう思い出した後、おじさんはナナセくんにこう言った。


「勿論、喜んで」


 と、おじさんはそう言葉を言いつつも、内心ではナナセくんをどう丸め込んでこの作戦を実行しようかと、企んでいることを微笑むことで隠しながらも、そればかりを考えていた。


◇◆◇◆◇◆


 幻覚魔法で気配を消していたのか、ああ返事をしたと同時にシキくんはナナセくんの背後から現れ、ルノーンの森の近くに馬車が用意されていると言い、ご機嫌良く一人で先に歩き出してしまった。はぐれると大変だとおじさんは、先頭で歩く彼を見失わないような歩調で歩き始める。

 途中からは、シキくんもおじさんらの歩調に合わせて歩いてくれるようになり、両親が少なくても三ヶ月くらいは帰って来ず、嫁入り前の女の子と二人っきりでいる訳にはいかないからと三ヶ月ぐらい屋敷に泊まってくれないかと頼まれ、おじさんも一応見た目は中性的で女の子のように見えるけど、君と同性だけど大丈夫なの? と複雑な心境になっていた。

 おじさんの心境の変化に気がついたのか、申し訳なさそうな表情をシキくんは浮かべながら、言い聞かせるような優しい声でこう言い訳をしていた。


「別にクラトルが中性的な顔をしてて、女の子扱いをしている訳じゃないんだよ。今の二人だったら、恋愛よりも友情を優先するかなって思って、信頼をして頼んだ訳であってな。そんな複雑な心境にさせるつもりはなかったんだよ、本当にすまない……」


 と、シキくんの言い訳を聞いた後、ちゃんと謝ってくれたから良しとしようと考えつつ、同時に今のおじさん達が恋愛よりも友情を優先するって発言はあながち間違っている訳じゃないしぃ、そう言うことにしておいたあげよう! とそう思うことにした。

 おじさんは男子なのに、女の子扱いをされるのが嫌なだけで、中性的で女の子のような顔つきをしているのが嫌な訳じゃないのよ。変装する際に、女の子の振りだって出来るしねぇ!

 中性的で女の子のような顔つきをしていることを、コンプレックスに感じるのではなくて、そのことをポジティブな方向に考えるのがおじさんだもの〜。

 なんて考えていると、目の前に大荷物を抱えているアイリスさんの姿が見え、慌てて駆け寄ろうとするとノリトくんに制止され、手伝わせてくれなかった。

 おじさん、意外とこう見えて怪力なんだけどなぁと考えた後、そう言えば適合検査結果をノリトくんには見せてあるから、わかっててあえてさせてくれないんだろうか? と、ふとこのことを思い出し、呆然としながら考え込んでいた。


 ノリトくんのおじさんに対する対応の方が女の子扱いのように感じるかもしれないけど、あの方はこれが通常運転なんだよねぇ。友人、恋人と言うよりは婚約者ね、恋愛感情ってよりも今は婚約者には妹のように思っているみたいだけど、信頼している相手に対してはああ言う対応をしてるのを見てたから、あの対応を普通だと思っているみたいなのよね〜。

 だから、ノリトくんってば意外と頑固だから何を言っても聞かないと思ったしぃ、そう言い聞かせるのは諦めたわぁ。その分、訓練メニューをしっかりこなすようにしているけどぉ。


「あれが紳士的対応ってことなんだな」

 と、内心で呟いていたつもりが思わず声に出して言ってしまったんだろうシキくんに、おじさんは、

「ノリトくんのあの対応は信頼している人限定よ。それに、シキくんが誰に対してもあの紳士的対応したら、恋する乙女達が壮絶な争いをし始めるから、止めておいた方が良いよ〜」

 そう言えば、やっぱり内心で呟いていたつもりだったようで、声に出していたのをそう言われたことで気づいたみたいで恥ずかしそうに微笑んでいた。

 これは将来、モテるわぁと考えながらつられるようにおじさんも微笑んだ。


◇◆◇◆◇◆


 半日掛けてシキくんの自宅へと行けば、自分の自宅よりは少し派手さがあるものの、どちらかと言えば落ち着きのあるインテリアで統一されていて、おじさんにとっても過ごしやすい空間となっていて、安堵のあまり思わず深く息を吐き出せば、シキくんは苦笑いを浮かべていた。

 おじさんはシキくんがそんな表情を浮かべた理由がわからず、首を傾げているうちに屋敷の中へと入り、自宅にはあまり居ない使用人がここにはたくさんいることにとても驚いた。

 自宅にいる使用人はシルフくん、アイリスさん、執事二人、メイド二人、庭師三人、料理人三人の計十二人に対して……、シキくんの屋敷にいるのはこの約四倍の数の使用人がいた。

 父上が使用人をあまり雇わないだけで、これでも少ない方なんだろうなぁと呆然と眺めていれば、一人の執事がおじさん達の目の前に現れ、丁寧な対応で客室へと案内してくれた。


 部屋へと案内され、一部屋が広く恐縮していればおじさん達をこの部屋に案内してくれた執事さんは、

「名乗ることを遅れ、申し訳ございません。私、ユウシ テルトと申します。私のような身分で意見を述べることを気分に害されるなら、最初に謝罪しておきます。クラトル様、一人で一部屋使うことに戸惑いを感じるのならノリト様と同室で過ごせば良いのでは、と思うのですが……」

 と、そう言ってくれた。執事さんこと、ユウシさんの発言から考えると、他の貴族は使用人から意見を言われることを嫌うのかなぁ。おじさんは別に構わないけどねぇ、むしろそう提案してくれたことに感謝しているくらいだよぅ。

 そう考えながら、ユウシさんに対して満面の笑みを浮かべた後、企みを実行するためには別々の部屋にしてもらわなければと考えた後、……今回は別々の部屋しておくとそう伝えた。


 さてとアイリスさんには作っておいて欲しいものを頼んであるしぃ、あとはナナセくんをどう説得するかよねぇと考えつつ、別の客室に案内されるノリトくんの姿を見送ったのだった。



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