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おじさん、初めての魔物狩り5

 えっ……。なんで、リースちゃんに睨まれてしまっているんだろう?

 おじさん、何か悪いことしちゃったかなとそう考えていると、ノリトくんがにこやかに微笑みながら、「気にする必要はないよ」とそう言われてしまった。

 うーん、何かとおじさんにつっかかってこられると気になるんだけどねぇ、と考えながらも気にする必要ないと言ってくれるノリトくんに微笑みかけた。

 おじさんは“一つの結末”に向けて、……この人生を生きている。

 周りにどう思われていたって構わない。

 もう一度おじさんを“指導してくれていた”ジークさんに会えるなら、周りからどんなに厳しい視線を向けられても、厳しい言葉を言われても耐えられる。

 ……この気持ちを理解されなくても良い、人数が少なくても理解してくれた人がいるから。自分のことなら、どんなに辛いことを言われても耐えられる。

 でも、流石に堪えるなぁ。前世のおじさんは誰かに縛られることがあまり好きじゃなかったから……、嫉妬を含まれる視線を向けられるとどうしても少しだけ戸惑うし、傷つくわぁ。

 ……なんて考えていると、ノリトくんは再び、にこやかに微笑みを浮かべた後に優しくて穏やかな声で、おじさんを励ますようにこう言ってくれたの。


「大丈夫だよ、嫉妬の視線に一人で怯えないで? 俺クラトルのことを親友で、むしろ家族同然のように思ってる。だから、苦しいことがあったり、傷ついたことがあったなら遠慮なく言えば良い。……親友が一人、苦しむ姿なんて見たくないからな」


 と、そんな言葉に、言われたはずのおじさんの方が照れくさくなってくる。

 だから、思わず、

「……もう。そう言うのは婚約者さんに言ったあげなよ、喜ぶよ?」

 そう言えば、珍しく素直じゃない態度をしているのは、照れを隠しているだけだと気づいているノリトくんは更に、穏やかで優しい微笑みを浮かべた。

 ノリトくんの方が大人で、悔しくなったおじさんは拗ねているんだってアピールするために、まるで向日葵の種を頬に溜め込むハムスターのように、頬に空気を入れ膨らませた。

 それでも、八歳児とは思えないくらいの包容力をノリトくんは発揮して、本当はクスクスと笑いたいのだろうけど、おじさんの機嫌を悪くしないように我慢しながら頭を撫でてきた。


◇◆◇◆◇◆


 おじさんはルノーンの森の周辺を、注意深く音を探っていると……、背後から何かが倒れたような音が聞こえてきたため、瞬時に後ろへと振り返った。

 ……そこには、傷だらけの霧猫族がいて。思わず、おじさんは駆け寄った。

 あの時のスノーの母親と似たような状況で、おじさんは動揺を隠せない。

 ひくりっと引きつったような呼吸をした瞬間、ノリトくんが直ぐにこちらに駆け寄ってきて、目の前にいる傷だらけの霧猫族の傷を魔法で癒してくれた。


 これくらいの傷だったら、野生の霧猫族だったらしばらく安静にしていれば、致命傷じゃない傷だけど、スノーの出来事があってから、怪我をしたと聞いた時、時折過剰に反応しすぎてしまい、少しの間だけ隙だらけになってしまう。

 それを知っているノリトくんは、この後の魔物狩りに影響しないように霧猫族を治療してくれたんだと思うと、申し訳なさでいっぱいになってくる。


「クラトル、気にすんな。俺は回復力が人より高いんだ。……まだ続くであろう魔物狩りを考えると、動揺したまま戦わせることは出来ないからね。大丈夫、切り傷自体は浅いから……回復魔法を使ってもそこまでは魔力は使わないし、このくらいの消費した魔力だったら、三十分したら直ぐに回復するし」

 と、おじさんが考えていたことを読み取ったのか、ノリトくんは穏やかな声で励ますようにこう言ってくれたことで、精神的に少しだけ落ち着いてきた。

 ノリトくんが治療している間、霧猫を撫でていると、地理の情報を集めていたスノー達が、おじさんの脚にすり寄るような動作をした後、順番に影へと戻っていった。……と同時に、次々とスノー達が見た光景が頭に情報として流れてきたのだった。

 ルノーンの森全体がどうなっているのか、予想はついたし、後でこの森の地図を作成しておこうと考えながら、治療が終わるまで霧猫の頭を撫で続ける。


 ちなみに霧猫とは、唯一別種族との結婚を認めている元猫族なのよ。

 他の猫族と考え方が合わず、別行動していたから、だいぶ前から猫族とは呼ばれなくなり、“霧猫族”と呼ばれるようになったってとある書物には記されていたけれど……、ルノーンの森に住んでいたのね。

 じゃあ、ルノーンの森に霧が続いているのは、霧猫族も何か関係しているのかなって考えていると、霧猫は意識を取り戻したと同時に飛び起きて、おじさん達を威嚇した。その様子を見て直ぐにわかったわ、この子のこの怪我は人に負わされたんだって。

 だから、なるべく穏やかな声で、まるで言い聞かせるようにこう言った。


「ごめんなさい、その傷は人のせいで負おってしまったのね。痛かったでしょう、怖かったでしょう? 人に傷つけられたその記憶は簡単に取り除けないわ、だから威嚇してても構わない。おじさんはもう、君が傷つく姿を見たくないの。……お願いだから、他の生徒に見つかる前に自分の巣へと帰りなさい」


 と、そう言えば霧猫は、先程まで威嚇していたのが嘘だったかのように、威嚇するのをやめたけど、それでもしっぽをお腹に隠して、低姿勢で警戒したままだったけど、おじさんとノリトくんの指先を舐めた後、物凄い速さで何処かへと消え去って行った。

 魔物狩りと言っても、何でもかんでも魔物を倒して行く訳じゃない。中には人と共存することを選んだ魔物もいるし、襲いかかってくる魔物だけを倒して行かなければならない。

 折角、人と共存することを選んでくれたのに、魔物達の大切な仲間を傷つけて、余計に争いことを増やし、たくさんの人が怪我をする姿なんて見たくない。

 霧猫だって、自分の意志で人と共存することを選んでくれたのに……、その思いを踏みいじるなんて許せない。



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