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おじさん、初めての魔物狩り4

 明らかに不自然なのよ。ノリトくんの二刀流は、俊足を生かすためのものであり、攻撃面では弱いの。

 そうだったはずなのに、ここの魔物をおじさんが少しだけ魔法でサポートしてしまえば、ノリトくんの二刀流で魔物が倒されていくこの現実。

 そして、“誰か”と勘違いをしながらも、何処か違和感を拭えないのかはわからないが、攻撃してくる瞬間にまるで“戦うべきか、戦わないべきか”と迷っているように思えた。

 だから、今まで戦ってきた魔物がもし、迷いを抱かない状態でノリトくんと戦っていたのであれば、俊足を活かすために訓練していた二刀流だけでは勝てなかったはずで。……なら、魔物は何に怯え、何から逃げようとしているのかを推測するなら、おじさんが予想できる推測は一つ。

 ――ルノーンの森の霧が直に晴れる可能性があり、そしてここら辺には、この森の中で一二を争うくらいの強力な力を持つ、魔物が巣にしている可能性があると言う推測なのだけど。

 ノリトくんは信じてくれるかもしれないけどぉ、証拠もないただの推測に過ぎないこの考えを、……他の人が信じてくれるかどうかがわからない。


 リースちゃんやアンリちゃんは、戦い慣れていないのね。魔法ばかり使って戦っていたら、どんなに魔力量の多い子でもいつかはなくなるし、魔力は短時間で回復する訳じゃない。

 ノリトくんは、魔力だって回復出来る。でもね、魔力を回復させるには結構な魔力量を消費するの。それにね、一度に多くの魔力量を使えば、体力だって消耗していまうのよぉ。

 そう言う面を考えると、リースちゃんやアンリちゃんは自分の師匠が相手でも、対人戦の経験があまり多い方ではないのかなぁってそう思った訳よ。

 そう言う二人が本当に強力な“殺気”を向けてきた時、彼女らが冷静に対処出来るかどうかと聞かれると、おじさんだったら五分五分とそう答えるわぁ。

 おじさんが怖いのは、強い力を持っている魔物に出会うことよりも、逃げると判断した時に仲間の誰かがパニック状態になる方が怖い。もし、冷静に対処出来ない状況に陥った場合、何をしでかすのか予想することは難しいからねぇ。


 おじさんはね、確かに戦闘面では強いとは言えないよ? でもね、前世での情報屋だったと言う経験とか、師匠の実戦に限りなく近い状況で受けていたから、どんなに自分より強い相手でも……、逃げるのか戦うのかを判断出来るくらいの冷静さを保てるわ。

 でもね、おじさんはそういう風にいられるかもしれないけど、強い殺気を浴びせされて誰だってそういう状態でいられる訳じゃない。冷静さを保てず、緊張状態にある時、人は何をするのかわからないの。

 おじさんはね、ナナセくんのようにとても強い訳じゃないからねぇ、パニック状態の子達を庇いつつ、戦うことは出来ないわぁ。一年間、師匠の厳しい指導により魔法の発現時間を出来るだけ短縮出来たものの、その間の防御面はノリトくんに任せっきりになってしまうし、さっきも言った通り魔力は回復が遅いし、魔力は無限大にある訳じゃないから人それぞれ、魔力量に限界がある。


 そう考えると、霧が晴れる可能性が低くともここで、魔物狩りを中断する方向も考えることも必要かもしれない。

 ルノーンの森に住んでいるのだから、霧の中を活動出来る魔物達が、霧が晴れることを事前に察知することが出来ても、何らおかしいことはないはず。

 と、長い間考え続けた後、にこやかに微笑んだまま無言で待っていてくれたノリトくんに対して、おじさんは考えていたことを簡単にまとめてこう言う。

「……もしかしたら、ルノーンの森の霧が晴れるのかも前兆なのかも。注意深く、周りの音を聞いておくけど……、魔物狩りを中断させる可能性も考えておいた方が良いかもしれない」

 と、そう言葉にすればルト先生は無言のまま、考え始めてしまう。


「そうなるって証拠があるの? もし、そうならなければどうするのよ」

 と、リースちゃんはそう言った。確かにそうなのだけど……、勘と言うものは案外侮ることは出来ない。証拠があったとしても、最後にどう選択するのかはある意味勘とも言える。

 でも、今回ばかりは口論が長くなりそうだわ。リースちゃんは自分が正しいと納得出来れば素直みたいだけど、この子は気が強い性格をしてるもの。さっき考えていたことを言って、素直にそうですかと納得してくれるかと言えば、恐らくそうではないと思う。

 どう説明したら、怒らせなくて良いのかと悩んでいるのに、リースちゃんは自分の言い分に対して言い返せないんだと勘違いしているのか、してやったりと言ったような顔をしてる。

 怒らせても事実を言うべきなのかなぁ、と考えているとさっきまで無言で考え込んでいたルト先生が、おじさんの考えに対して助け船を出してくれた。


「リース? クラトルが言ったことはもしもの可能性の話だ。証拠も根拠もないけれど、もしそうなった時、そう言う可能性があったとわかっていないよりは冷静でいられると思うぞ」

 と、そうフォローをしてくれたことに、おじさんは安堵の表情を浮かべた。

 おじさんはまだ、異性に話しかけることがあまり得意ではないからねぇ。

 このフォローがなかったら、このまま無言で過ごしてたと思うわぁ。

 そう考えていると何故か、リースちゃんにおじさんは睨み付けられてしまった。



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