おじさん、初めての魔物狩り2
おじさんは鼻歌を歌いながら、ルノーンの森の中を歩いていた。のん気なように見えるだろうけどぉ、霧を水に変えて少しずつ体内に取り込んではいる。
霧が晴れた後、ルト先生に頼らないと重症の怪我を負うような魔物がルノーンの森には二種類いるの。
今、現在一番戦い慣れているナナセくんが殺気をまとっていてくれているおかげで、霧の中で活動出来る魔物は少ないとは言え、集団で活動している魔物の方が多いため、森の中で活動している魔物の数は少ない訳ではなく、気候に合わせて身体を変化させた魔物は生きるためにそう選択したため、自分よりも強い相手だとわかると、戦わず避けていく。
魔物だって学ぶのだ。例え、動けるくらいの殺気だろうと、殺気をまとうことに慣れている人物くらいは、雰囲気でわかってしまう魔物だっているのよ。
大体の魔物は、生きるために人を襲う。だが……、中には生き抜くために人と共存を選択し、お互いの生活を守っていくと決意した魔物だっている。
強いと判断し、避けて行った魔物をわざわざ追いつめ、倒す必要なんてないのよ。……だから、おじさんは魔法を使って追いつめようとしていたリースちゃんの肩を掴み、それは駄目だと声を出さすに首を横に振るような仕草を見せ、魔法を使うことを止めた。
先ほどまで怯えていた、ナナセくんは幻だったのかと思わずそう思ってしまうくらい、鋭い目付きで容赦なくリースちゃんを睨み付けながら、淡々とした口調でこう言った。
「……アイツらは戦わないことを“選んだ”んだ。わざわざ追いつめ、倒す必要なんてない。襲ってきたら倒せば良い、自分の命に危険性を感じない限りは倒す理由なんてないんだよ」
そう言ったナナセくんはあまりに真剣な表情で、リースちゃんは思わずと言った様子で息を飲んだ。
リースちゃんは確かに強いかもしれない。だけど、圧倒的に経験値が足りさすぎるのね。……おじさんやノリトくん以上に実戦経験が少なすぎるのよ。
だから、今のままではリースちゃんはナナセくんに絶対に勝てない。
どんなに魔法の威力を伸ばすことを努力してもね、実戦を経験している人の対人戦は、予想通りにはいかないものよ。模範通りの行動じゃ、経験で読まれてしまう可能性があるもの。
まあ、こうやって代表者五人で協力して、魔物狩りするのが目的なんだろうし、はっきり言って居づらい殺伐とした雰囲気をしてるから、とりあえずこの雰囲気を何とかしないとね?
「まあまあ、一度教えればわかるだろうし〜? ナナセくんもそれぐらいで止めとこ? 今回は魔物狩りを協力してやるのが恐らく目的なんだろうしぃ、こんな殺伐とした雰囲気でやっても、もしかしたらそのせいで正しい判断が出来ないかもしれないでしょ〜。
リースちゃんも、実戦経験者の意見はちゃんと聞いておいた方が良いよ、経験からくる考えだからねぇ。ほらほら、油断してると魔物が現れるかもしれないし、折角こう言う機会をもらえたんだからさ、二人とももうやめよ? ね?」
と、なるべく殺伐とした雰囲気を消すために、おじさんは穏やかな声でそう言えば、ナナセくんは納得してくれたのか、鋭い視線をリースちゃんに向けるのをやめて再び、何ごともなかったかのように周りを警戒し始めたのだった。
そんなナナセくんの態度に何か気に食わなかったのか、リースちゃんは何かを言おうとしたけど、アンリちゃんが「まあまあ、もうやめておこう?」と、宥めてくれたおかげで殺伐とした雰囲気はなくなったけどぉ、まだ何処か居づらい雰囲気のままなのよねぇ。
と、そう考えていると、ノリトくんはおじさんに抱きつき、撫でてくれた。




