おじさんの修行な日常〜森編〜3
誰にやられたのか傷だらけで、真っ白であっただろう毛が赤く染まっている、柴犬くらいの大きさの猫の姿があった。おじさんは真っ先に駆け寄ろうとした瞬間、脳に直接誰かの声が聞こえてきたのよ。
――この子だけは、死なせる訳にはいかないの。私はどうなったって良い。この子だけは守り抜くって、私を庇ったあの人に誓ったの、だからこの子だけは……命を奪わないで……。お願い、この子を頼みます。と、そう必死に訴える声が言う言葉を聞き終えたと同時におじさんは、その猫の元へと駆け寄って服が汚れることも構わずに抱え込み、ジークさんの元へと向かうのだった。
慌てて家のドアをノックすれば、相変わらずの無表情でおじさんの目の前にこの家の家主であるジークさんが現れた。
ジークさんは傷だらけの猫を抱えるおじさんを見て、何も言わずに家の中に入れたと同時にこう言う。
「……その親猫は助けられないかも知れない。良いか、クラトル。どんなに回復魔法を研究しようと、全てを完全に回復出来る魔法なんて……存在しないんだ。だが、出来る限りのことはすると約束しよう。もし、親猫を助けられなかったらコイツの願いを叶えてやってくれ」
と、ジークさんは無表情ながらも、悲痛そうな声でおじさんにそう言葉を残し、猫だけをを抱えて何処かへと消えて行ってしまった。
おじさんの手元に残ったのは、あの猫が自分の命よりも優先していたこの卵だけ。何となくわかった、この卵の中に居る猫は……ただの猫ではないことを。
おじさんはこの時知らなかった、この卵の親猫の声を聞いた時から……この卵の中にいる猫と契約をしていたことに……。
◇◆◇◆◇◆
親猫は静かに眠るように息を引き取った。それはおじさんがここに連れて来てから、三時間後の出来事だった。もう少し早くに見つけていれば助かったのかも知れない、とそう思ったものの……そう後悔したってこの親猫が生き返る訳ではない。
……それと同時に聞かされた、おじさんがこの卵の中にいる猫と契約が成立されていると言う事実。
卵の状態のままの魔物、もしくは神獣との契約の際には、その卵の親に「任される」ことで契約が成立してしまうらしい。この契約の場合、親である魔物もしくは神獣と波長が合わなければ成立することのない契約なため、滅多に例のない契約方法なのだそうだ。
おじさんが契約した、魔物もしくは神獣はハーフなんだそうだ。
流石は賢者様であるジークさんだ、この卵の特徴などを見つけながら推察した結果、竜と猫のハーフである可能性が高いとそう言われた。人型になれるほど強い力を持つ、魔物もしくは神獣である場合は違う種族同士で結婚し、ハーフとして産まれることは少ない訳ではないらしい。
ただし、今回の場合は違う。竜族は種族が違う同士での結婚は認めているらしいのだけど〜、猫族は良い風には思っていない考えを持つ方がいない訳じゃないらしく、逃げ出した時に被った傷なのではないか? と、ジークさんはそう言っていた。
もし、ジークさんが言ったことが事実なのあればおじさんはちゃんと強くならなきゃいけないな、とおじさんはそう考えていたのだった。




